はい。私は日本人です。
「Yes, I am Japanese.」
中学生になり、初めの頃に習った英語。
習ったものの使わないランキングで上位に入るフレーズだ。
日本人である私は、日本において自分が日本人であると表明することなどほとんどない。
「私は日本人です。」という日本語など習った記憶すらない。
しかし、台湾に住み始めておよそ4か月。
覚えたての中国語で最も多く発したフレーズは
「我是日本人(わたしは日本人です)」だ。
彼らにとって、私が日本人であることは重要なのかもしれない。
見た目にはそれほど明確な差を感じないからだろうか。
時に、取引先から。
時に、街頭のアンケートで。
時に、カフェやお店の店員さんから。
中国語が話せない私を見て、彼らは「日本人ですか?」と聞く。
「注文の発音が良かったから外国人だと思わなかったよ」なんて言葉をかけてくれる人もいる。
もちろん、彼らの多くに悪意はないだろう。
だが、それでも私は「我是日本人」という言葉が嫌いだ。
自分が外国人であること、マイノリティであることを痛感するから。
そんな折、コロナウイルスの感染が拡大し始めた。
お店に入る時も、ただ街を歩いているだけでもなんだか気まずい。
特に、タクシーではその空気に耐えかねて、雑談のふりをして「台湾に住み始めたけど、まだ中国語が苦手なんだ。ごめんね。」なんて伝えてみたりもした。
8割は被害妄想。それでもそうしなきゃと思った。
「日本人であることを怖い」と思う。
「なんて新鮮な感情だろう」と冷静に分析している自分にホッとする。
幸い、ひどい言葉を浴びせられたりすることもなかった。
今は旅行客もいないため「こいつは台湾に住んでるんだな」と勝手に思ってくれている気がする。いくらか気持ちは楽になった。
しかし、マイノリティだと突きつけられてそれと向き合うような感覚は、
貶される、仲間はずれにされる、いじめられる、殴られる。
そんなことよりももっと深く、ずしっと重い。
コロナの前から感じていたことが、コロナによってさらに強くなった感じだ。
ただ、この「嫌だ」という感情は大事にした方がいい。
なんとなくそう思って、この記事を書いている。
まだ住んで間もないが、台湾のことは好きだ。
台湾の文化や台湾人の気持ちを理解したいと本当に思っている。
でも台湾人になりたいわけではない。
「我是日本人」だからこそできることを探しにきたつもり。
私がこの言葉を好きになった時、ようやくこの場所に馴染んできたと思えるのかもしれない。
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