廃止されたマジックのフォーマット達

Defunct Magic: The Gathering Formats, Ranked
廃止されたマジックのフォーマット達
(原題 Defunct Magic: The Gathering Formats, Ranked by Josh Nelson)

https://infinite.tcgplayer.com/article/Defunct-Magic-The-Gathering-Formats-Ranked/646e6404-a791-4179-9979-166d5a0d9b39

マジックの最大の強みは、その柔軟性にある。ヘッドデザイナーMark Rosewaterが言うように、マジックというのは単一のゲームではなく、「ルールを共有した、様々なゲームの集合体」である。我々はそうした様々なゲームを「フォーマット」と呼んでいる。マジックの長い歴史を通じて数多くのゲームが生まれたが、その多くは今でも成長を続けているだろう。スタンダードは常にマジック最大の部門であり、またWotCが公式にサポートする前から、統率者戦はファン主導のフォーマットとして最大の成功例だったのだ。

しかしながらスタンダードや統率者戦に起きたことが必ずしもすべてのフォーマットに起こるわけではなく、またすべてのフォーマットがヒットするわけでもない。今日は、3つの廃止されたフォーマットに順位付けして、またその消滅した理由について語っていこうと思う。

第3位: タイニー・リーダーズ (2013-2018)

タイニー・リーダーズは、統率者戦のバリエーションとしてファンによって2013年に考案された。ルールは基本的に同じだったが、いくつかの大きな違いもあった。開始ライフは40ではなく25で、また統率者戦の100枚ではなく50枚のデッキを使い、そして点数で見たマナ・コストが3以下のカードしか使えないというフォーマットだ。

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しかしながら、このフォーマットは2018年、《トレストの使者、レオヴォルド/Leovold, Emissary of Trest》がフォーマットを支配したことでバランスの調整が極めて困難だということが発覚した。公式FAQは2014年以降更新されておらず、また2018年6月に《刃を咲かせる者、ナジーラ/Najeela, the Blade-Blossom》が禁止されて以降禁止リストも更新されていない。

実際のところ、タイニー・リーダーズは統率者戦のゲームが決着するまでの間にプレイするにはとても楽しいフォーマットであった。統率者戦は多くの人が知るようにとても長い時間がかかるため(訳注:誰もcEDHの話はしていない)、敗退したプレイヤーが暇つぶしをするにはタイニー・リーダーズがちょうど良かったのだ。

第2位: ブロック構築 (1996-2018)

実は、2018年に死んだフォーマットはタイニー・リーダーズに留まらない。スタンダードではプレイされないような良いカードを活用する優れた場であったブロック構築もまた、同じ年に廃止されたのだ。

このフォーマットは1996年のアイスエイジ・ブロック構築でスタートして以来WotCによってかなりサポートされてきた。スタンダードに似たルールではあったものの、ブロック単位で成立するが故にローテーションはなく(というよりローテーションは不可能で)、各ブロックごとに独立したフォーマットとなっていた。このフォーマットは、次第に失われていくまで長年に渡って、グランプリやプロツアーなどの主要なイベントでもプレイされ、注目を集めていたのだ。

では、なぜブロック構築は廃止されたのだろうか?端的に言えば、WotCは年間のセット発売を3:1という構成から、『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』以降のより緩い構成へと改めて、我々のよく知った「ブロック」という概念が終わりを迎えたからである。その後、最終的には『ドミナリア』の発売によって、正式に取り除かれたのだった。

ブロック構築は非常に人気のあったフォーマットではあったが、多くの禁止カードがあるという欠点もあった。各ブロックごとに禁止リストが独立していたため、全体ではかなりのカードが禁止されることとなったのだ。最終的にはブロック構築全体で、そのプレイの質を維持するために27枚のカードが禁止されるに至ったのだ。これは、スタンダードのようにローテーションのあるフォーマットではそうある話ではないだろう。


番外編: オースブレイカー

このフォーマットはまだ生きてはいる。が、危機に瀕しているかもしれない。

オースブレイカーもまたファン主導のフォーマットである。ミネソタ州に本拠を置く、チャリティ目的のイベント主催者であるWeirdCardsによって制定されたものだ。タイニー・リーダーズ同様にデッキの固有色を決定するカードが通常のデッキ外にあるという点では統率者戦に似ているが、共通点はその点のみである。統率者となる伝説のクリーチャーの代わりに、統率領域にプレインズウォーカー・カード1枚とインスタントまたはソーサリーであるカード1枚を置くのだ。デッキはその2枚を抜いて58枚となる。統率者ダメージのルールも存在しないためライフゲインも戦略として成立しうるが、初期ライフが少ないためバーンもまた有効である。総じてオースブレイカーのゲームは非常に楽しく、適切な集まりであればとても良い競争ができるだろう。

当初から人気が広まっていた結果として、その僅かな類似点から、タイニー・リーダーズのような「解明された」フォーマット同様にフォーマットを「壊そう」という動きはあったものの、結局オースブレイカーは未だに安定しいる。フォーマットの管理者は未だにフォーマットを監視しており、単に禁止リストの追加/解禁のみならず、プレイヤーたちと積極的に交流を続けている。

しかしながら、オースブレイカーの最大の問題はその到達性にある。統率者戦と異なりマジック・オンラインではサポートされていない(訳注:とはいえMO自体もうアリーナのせいで相当に人気が落ちているが…)。オフラインのプレイヤー人口はモダンなどよりも圧倒的に少ないため、プレイヤーはオースブレイカーのデッキへの投資を渋り、結果として更にプレイ人口が抑制されている。このフォーマットのファンとして言うなら、十分な数のプレイヤーが集まりプレイできるようになれば、オースブレイカーはきっとメジャーになれるだろうと信じている。一方、そこが満たされない限り、タイニー・リーダーズと同じ轍を踏む結果となるだろう。

第1位: エクステンデッド (1993-2013)

エクステンデッドは、古いプレイヤーからはタイプ1.xとしても知られていたフォーマットである。それはスタンダードのようなスピードでカードが使えなくなることを嫌うプレイヤーにとって、クールなローテーションのあるフォーマットだった。最終期のエクステンデッドのローテーションは、スタンダードの短期間と異なり、ブロックと基本セットが4年間使えるものとなっていた。エクステンデッドはプレイ自体も楽しく、またエクステンデッド廃止時点での他のローテーションしない(レガシーやヴィンテージ、統率者戦などの)フォーマットや、何よりスタンダードと比べても経済的な負担が比較的軽いものだった。

Goblin PiledriverDragonstorm

Arcbound Ravager

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ドラゴンストームコンボを倒した黒赤ゴブリンが、同じトーナメントで親和に負けていく、などという光景はそう見られるものではなかっただろう。

では、何が起きたのだろうか?

一言で言えば、モダンだ。

モダンは2011年にWotCが制定したフォーマットで、再録禁止カードを含まない、ローテーションのないフォーマットとしてプレイヤーに提供された。第8版と(初代の)ミラディン・ブロック以降のカードが使えるフォーマットで、2013年7月にエクステンデッドが廃止される時点では、エクステンデッドで使えるすべてのカードがモダンで使用可能となっていた。つまり、エクステンデッドの独自性は失われたのだ。

現在、モダンは昨年のパイオニアの登場によって、同様に人気喪失の危機に直面している。因果応報という話になりかねないが、今こそエクステンデッドを復活させる機会かも知れない。マジックの人気は年を経るごとに高まっており、(特に現状の世界的パンデミックが収まらない限りは)狭いプレイ集団でのメタゲームにとどまるプレイヤーが増えているのだ。プレイヤーたちはその大量のカード資産をどうするか悩んでいるわけで、今その手段としてエクステンデッドを取り戻すのは良い選択ではないだろうか。

WotCは、最近のスタンダードにおける《創造の座、オムナス/Omnath, Locus of Creation》の禁止や、その他フォーマットの平穏を取り戻すための決定に見られるように、プレイヤー達の声に耳を傾けている。すなわち、プレイヤー達は廃止されたフォーマットを取り戻したり、新しいフォーマットを作ったりすることができるということだ。WotCは我々が家でプレイしている内容を監視しているわけではないので、ちょうどこのパンデミックで孤立している間に新しいモノを考えるのも良いのではないだろうか?まあ、殆どの場合において、それはタイニー・リーダーズのように衰退したり、エクステンデッドのように時代遅れになってしまうことだろう。しかし一方で、もしかすると、統率者戦のような立場を確立できるかもしれない。


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