2022年 5月29日 奈良クラブ 0-2 東京武蔵野ユナイテッドFC 感想
「調子がいいときって難しいシュートでも入るのに、そうでないときは簡単なシュートも入らなくなるんです、不思議と…」
この言葉は、先日行なわれた大阪ダービーでNHKの解説者としてTVに出演した大久保嘉人氏が発したものである。今さら說明するまでもないだろうが、彼はJ1通算最多得点記録保持者でその数は191得点であり、J1通算最多シュート数記録保持者でもその数は1141本である。(J.LEAGUE Data Site参照) そんな彼らしいその直感的なこの言葉はサッカーの本質を実によくとらえられている。いくら論理的でロジカルに說明できたとしてもサッカーは時として上手くいかかにことがよくある。それがサッカーの醍醐味でもあるし難しさでもある。この試合を見終わって私の脳裏にこの言葉が浮かび上がった。
この試合で奈良クラブはまたしてもホームであるロートフィールド奈良で敗戦してしまった。私はこの試合を5度程見たが、そんな私でさえこの試合での奈良クラブは2失点して敗戦こそしたものの良い内容だったと思っている。それを証拠にシュート数でもこの試合では11本(前半5本+後半6本)も打っていた。ここまでのシュート数を見てみると、滋賀5 Honda3 青森2 大分12 岡﨑2 三重12 新宿9 高知10 Honda4(3)で、11本のシュート数は多いのが分かる。サッカーでは内容が良くても試合に負けることも珍しいことでは決してない。先日行なわれたUCL FINAL リヴァプールvsレアル・マドリードの試合でも同様のことがあった。とはいっても敗戦を繰り返さないためにもこのまま楽観視することはできない。それではどうして奈良クラブは敗戦してしまったのかを考えてみる。そうするとこの試合で敗戦してしまった1番の理由はやはりCFの浅川選手にあると考える者が多いのではないだろうか。
5分、右WG長島選手のクロスに頭で合わせる GK1番両手パンチングで枠外 左WG森選手詰める ST山本選手ペナ内中央後ろフォロー 可児選手ペナ外右ジョグ
29分、右CKの流れ球に頭でゴールもオフサイド
○31分、右WG長島選手のクロスにCFの浅川選手はバックステップで右CB4番のマークを外して頭で合わせピッチに叩きつけるも枠外へ 左WG森選手ペナ内中央 ST山本選手ペナ内右 ボランチ可児選手ペナ内左後ろ ボランチ森田選手ゾーン3手前中央 左SB加藤選手ゾーン3左
48分、GKアルナウ選手→ST山本選手→左WG森選手とワンツーでクロス 右WG長島選手→CF浅川選手へ 相手に囲まれ何度か切り替えしながらもシュートも枠外へ ボランチ可児選手ペナ外中央 ボランチ森田選手ゾーン3手前
52分、右WG長島選手→中にいたボランチ森田選手へ渡る 森田選手浮き球クロスでCF浅川選手へ 左CB16番と競り合いタッチラインへ 左WG森選手ペナ内中央 ST山本選手ペナ内左
58分、左WG森選手→クロスに右WG長島選手が回り込んでキープ 長島選手浮き球パス→CF浅川選手右斜め向き頭も枠外へ ペナ内中央ライン際ST山本選手ボール追う 長島選手ペナ内右外側 ボランチ可児選手ペナ外中央 ボランチ森田選手ゾーン3手前
○59分、右SB都並選手がファーサイドへ大きくロングクロス 左SB加藤選手がポケット左で頭で落とす CF浅川選手左足でシュートもGK1番が右手1本で弾きビッグセーブ ST山本選手ポケット左へ加藤選手と重なる ボランチ可児選手ペナ内中央
○77分、右SB都並選手が左SH9番をかわしてCF浅川選手へミドルクロス 浅川選手頭でシュートもGK1番が両手で弾きビッグセーブ 右WG浜田選手ペナ右後ろへマーク引き込む こぼれ球へ向かうも左CB16番にクリアされる 左WGペナ内後ろ左 ST山本選手ペナ内後ろ中央 ボランチ片岡選手ペナ内後ろ右 ボランチ森田選手ゾーン3右サイド手前 その後左右3本クロス森田森片岡もクリアされる
公式記録では浅川選手のシュート数は4本(前半1本+後半3本)となっているが、このようにシュートチャンスは8回確認できた。特に31分と59分と77分の3回については武蔵野のGK1番のビッグセーブがあったとはいえ、この決定的なシュートを決められなかったのは正直残念だった。今の奈良クラブの基本戦術としてCFの浅川選手へ数多くクロスを集中させてゴールを奪うというのがある。高知戦ではこれがまさに機能して貴重な勝ち点を上げることができた。とはいっても先述したようにJ1通算最多得点記録保持者である大久保嘉人氏でさえ、ゴールを決められないときはあると言っている。それは当たり前のことである。いくら得点能力が高い浅川選手といっても入らないときは入らないのである。この試合のようにこれからもこういった試合は必ずある。そのため、この試合の敗戦の理由を浅川選手1人だけに負わすのはやはり酷ではないかと思えてきた。そもそも基本戦術にCFへクロスを集中させるような、この一本槍の戦術に問題があるのではないだろうか。ところで話は変わるが、浅川選手は確かにゴールを決められなかったかもしれない。しかし、ゴールを狙うだけではない献身的なプレーを浅川選手は何度も見せてくれていた…
19分、ボランチ森田選手→CF浅川選手へミドルパス 右にそれる 右サイドで浅川選手が左CB16番と競り合うもキープして競り勝ち右WG長島選手へ 長島選手がクロスもペナ内中央誰もいずスペースあり 左WG森選手ペナ内中央へ進入するもクロス左外へ流れる ST山本選手ペナ外左 ボランチ可児選手ペナ外中央 ボランチ森田選手ゾーン2
21分、奈良陣内で右SB都並選手の頭のクリアボールにCF浅川選手がレイオフして左CB16番詰め寄られるも胸トラップでボールを収める 右WG長島選手へパス 長島選手→センターサークルST山本選手が上手くトラップ フリーの左WG森選手へ渡さずしばらくして降りた森選手へバックパス
23分、右SB都並選手から縦パス CF浅川選手レイオフしてボール収める 浅川選手⇔ボランチ可児選手 浅川選手→右WG長島選手へ渡るも相手へ ×ST山本選手ゾーン3中央で待ち構える
39分、ボランチ29番にCF浅川選手とST山本選手が挟み込みボール奪取 浅川選手⇔右WG長島選手 浅川選手→左WG森選手へ 森選手→森田選手シュートも枠外へ
山本選手ペナ内左 浅川選手ペナ内後ろ中央
42分、センターライン右WG長島選手→レイオフして右サイドへ流れたCF浅川選手→中にいたボランチ可児選手→浅川選手→右サイド深くで長島選手がクロス ペナ内右中央の左WGの森選手の頭も合わず
このように、浅川選手は幾度となくレイオフをして奈良クラブのビルドアップの手助けを行っているのがよく分かる。浅川選手は奈良クラブが勝つ上で絶対に必要で欠かせない選手だということは間違いない。それではこの試合では奈良クラブとしてどうすれば良かったのか。それは他の選手がゴールを奪えばよかったのである。
先日ブンデスリーガ第34節 シュツットガルトvsケルンの試合を見た。この試合は遠藤航選手が後半ATにCKで劇的打を決めて残留したことで話題に上がっていた。この試合のシュツットガルトの基本フォーメーションは4-3-3で、遠藤航選手は右IH。シュツットガルトは残留争いに巻き込まれることもあって後方からしっかりと前進していくケルンに対して、遠藤航選手は終始プレッシングに追いやられていたが、32分、34分、35分にはゴール前まで果敢に進入して決定的な場面を立て続けに作っていた。奈良クラブとしてもこの遠藤航選手の、時には自分のポジションを離れてでも積極的にゴールを狙うプレーをぜひとも参考にしてもらいたい。もちろん国、リーグ、クラブ、タスクと違いがあるのは百も承知である。それでは、この試合での奈良クラブの他の選手のシュートについては…
森選手
34分、GKアルナウ選手→ロングパスに左WG森選手渡る ペナ内運びシュートも右CB16番がスライディングで競り合い枠外へ CF浅川選手と右WG長島選手ペナ内フリー ST山本選手はゾーン3手前中央
42分、センターライン右WG長島選手→レイオフして右サイドへ流れたCF浅川選手→中にいたボランチ可児選手→浅川選手→右サイド深くで長島選手がクロス ペナ内右中央の左WGの森選手の頭も合わず
43分、可児選手→右サイド深くで右SB都並選手がST山本選手へクロス 相手の頭のこぼれ球に左WG森選手がシュートもGK1番キャッチ CF浅川選手ペナ内中央 ST山本選手ペナ内中央左 右WG長島選手ペナ内後ろ右 ボランチ可児選手ペナ外右 ボランチ森田選手センターサークル外中央
山本選手
35分、右WG長島選手右ポケットへ進入 右CB16番がブロックも中へスルーパス ST山本選手ペナ内中央後ろでシュートも左SB8番にインターセプト 左WG森選手ペナ内中央右 CF浅川選手ペナ内中央左 ボランチ可児選手ペナ内後ろ右 左SB加藤選手ペナ内後ろ左 その後押し込む
70分、GK1番のロングボールの競り合いのこぼれ球を浮き球ロングシュート ゴールバー直撃
森田選手
39分、ボランチ29番にCF浅川選手とST山本選手が挟み込みボール奪取 浅川選手⇔右WG長島選手 浅川選手→左WG森選手へ 森選手→森田選手シュートも枠外へ 山本選手ペナ内左 浅川選手ペナ内後ろ中央
50分、ゾーン3手前左で浮き球シュートもGK1番キャッチ CF浅川選手へクロスか? ST山本選手ペナ外中央
55分、左WG森選手→ボランチ森田選手へ渡りい浮き球シュートも左CB4番に当たってGK1番がキャッチ CF浅川選手ペナ内中央 ST山本選手ペナ内後ろ右 右WG長島選手ペナ外中央 右SB都並選手ペナ外右
加藤選手
81分、左CB寺村選手ロングパス→左WG森選手へ 森選手マイナス気味にクロスも合わず こぼれ球をペナ内中央でボランチ片岡選手バックパス→左SB加藤選手へ 加藤選手ペナ外左からシュートもGK1番にキャッチ CF浅川選手ST桑島選手左WG浜田選手ペナ内中央
都並選手
14分、CKに頭でシュートも枠外へ
公式記録では、森2 森田2 山本1 加藤1 都並1となっている。これでは決して多いとはいえない。しかもゴール前まで進入しての決定的なシュートは数多くなかった。この試合では右サイドでのクロスが多かったとはいえ右WGの長島選手、浜田選手にシュートがなかったのは残念だ。シュートチャンス以外では…
13分、右WG長島選手のグラウンダーのクロスに相手がカット ペナ内中央CF浅川選手 ペナ内中央後ろ左WG森選手フリー ペナ右離れST山本選手ペナ左へ位置 ボランチ森田選手ペナ外中央 ボランチ可児選手ゾーン3手前右ジョグ
17分、左WG森選手のクロス CF浅川選手右WG長島選手がペナ内中央 ST山本選手はペナ外中央ジョグ ボランチ森田選手、可児選手はゾーン2左右上
24分、左CB寺村選手→センターライン付近右サイドで右WG長島選手へ 長島選手しばらく運びクロス ペナ内中央にCF浅川選手と左WG森選手 ST山本選手センターサークル内 ボランチ森田選手センターサークル外中 ボランチ可児選手センターサークル外左
28分、センターサークル外中央でST山本選手→左WG森選手へ 森選手ツータッチでクロス ペナ内中央CF浅川選手右WG長島選手 ペナ内後ろ左に山本選手 ペナ内後ろ右にボランチ可児選手 ボランチ森田選手センターサークル外中央
46分、センターライン左側で左WG森選手とST山本がワンツー 左サイドペナ手前で森選手→ST山本選手→右WG長島選手へ渡るも相手にクリア CF浅川選手ペナ内中央右 クリア後右CB伊勢選手競り勝ち→山本選手→左サイド奥深くで森選手クロスも合わず 浅川選手長島選手ペナ内中央 ボランチ可児選手と森田選手ゾーン3手前
52分、右WG長島選手→中にいたボランチ森田選手へ渡る 森田選手浮き球クロスでCF浅川選手へ 左CB16番と競り合いタッチラインへ 左WG森選手ペナ内中央 ST山本選手ペナ内左
64分、右SB都並選手→右ポケット外でボランチ片岡選手へ渡るとボランチ10番が詰め寄る 片岡選手がCF浅川選手へクロスもタッチライン割る CF浅川選手ペナ内中央 ST山本選手ペナ内中央 フリー右WG浜田選手ペナ内後ろ右 左WG森選手ペナ内後ろ左 ボランチ森田選手ペナ外右
66分、両SB高く両WGSTCFボランチ少し下がり目も5レーン埋める
79分、左WG森選手グラウンダークロスも相手にクリア ペナ内にCF浅川選手ST山本選手右WG浜田選手 左SB加藤選手ペナ外左 右SB都並選手ペナ内後ろ右 ボランチ片岡選手ペナ外中央 ボランチ森田選手ゾーン3手前中央
このように、66分以降の両SBを上げた時間帯以外では左右両WGのクロスに対して、ペナ内に入っているのはCFの浅川選手とどちらかの左右両WGの森選手、長島選手、浜田選手の2人だけであることが多いのがよく分かる。これではCFの浅川選手がゴールを決めきれなかった場合はペナ内で立て続けに連続シュートが打てない。セカンドボールもペナ内で回収することができずによくてペナ外となるので尚の事波状攻撃は不可能だ。STの山本選手、桑島選手、ボランチの森田選手、可児選手、片岡選手のうち1人がもっと積極的にゴール前まで進入することさえできれば、CFの浅川選手の空いたスペースを利用して決定的なチャンスを作り出すことができるはずだ。以前青森戦後でフリアン監督が両IHの位置が低いことを危惧していたことがあった。おそらく奈良クラブの攻撃が単発的で迫力に欠けるのはこのことが原因だろう。もちろんサッカーでは攻守が表裏一体であり、相手陣内に中盤の選手があまりにも進入してしまうと、カウンターを狙われることになるのでそれこそ相手の思うつぼだ。ここでは素早い認知能力と正確な状況判断能力が試される。このように考えると、この試合で敗戦した1番の理由は、先述したがCFへクロスを集中させ過ぎている一本槍の基本戦術だと思われる。他の選手がゴールをたくさん決めれば、浅川選手のモチベーションもただでさえ高い選手なのだから、さらにゴールへの意欲が上がるのは目に見えている。それがよい相乗効果となってチームがさらに高みへと成長するのだと確信する。
それでは次に失点シーンについてだけ少しだけ触れてみたい。ここでは特に先制点を決められた場面を見てみる…
11分、右CB4番→左SH23番斜めのミドルパス 右WG長島選手が足出すも当たらず
53分、右CB4番→左SH23番斜めのミドルパス 右WG長島選手は左FW14番がレイオフしてボールに行けず その後失点
このように、53分にゴールを決められるのだが、11分にも同じように武蔵野の右CB4番から左SH22番に斜めの素早いロングパスがズバッと見事に決められているのがかなり気になっている。いずれも左WGの長島選手があと一歩のところでパスカットできそうだったが、結果はCB4番に上手くパスを通されてしまった。これは、おそらく武蔵野が事前に奈良クラブをスカウティングしたときに、試合前からこのロングパスをデザインしていたのではと推測している。奈良クラブの前線のプレッシングは相手のCBへ積極的に入らないことが多いので、正確にロングパスを蹴り分けるCBがいるチームと今後対戦する場合には、このことが最大の弱点となるかもしれない。早急に対策を講じてもらいたい。
最後に、この試合の1番の収穫は、右SBの都並選手が本調子に戻ってきているということだ。
22分、ボランチ10番のロングボールに右SB都並選手がキープ 左SH23番が詰め寄るも切り替えして剥がす 後方の右CB伊勢選手へバックパス 右CB伊勢選手→ボランチ可児選手へ渡りカウンター回避
59分、右SB都並選手がファーサイドへ大きくロングクロス 左SB加藤選手がポケット左で頭で落とす CF浅川選手左足でシュートもGK1番が右手1本で弾きビッグセーブ
77分、右SB都並選手が左SH9番をかわしてCF浅川選手へミドルクロス 浅川選手頭でシュートもGK1番が両手で弾きビッグセーブ
このように、22分では都並選手の切れ味鋭い切り返しと右CBの伊勢選手との連携は見事だった、その他にも59分と77分のこの試合では決定的なチャンスだった、右サイドからの大きなロングクロスがとても素晴らしかった。だからこそ余計に浅川選手には決めてもらいたかった。都並選手のパフォーマンスが向上することはただでさえ選手層が薄いと思われるSB陣にとって本当に頼もしい限りである。これからも選手達のよき理解者としてピッチ以外でも活躍してほしい。期待しているぞナラドーナw 奈良クラブはまだまだJへ昇格できると信じている。これからも奈良クラブを見守り続けたいとそう思っている。Vamos奈良クラブ!