大阪市内の道路で不審物を発見した話
地方自治体というものは、即ち村と呼ぶには大きすぎ、国家と呼ぶにはあまりにも小さいような人々の集まり、そして組織を伴った統治と繁栄を営む共同体である
地方自治体に生まれ、それぞれの運命を共にする彼らは時折衰退への道を拒むあまり、繁栄への、簡単で安易で、そして危険な手段を選ぼうとする
202X年、私用を終えたわたしは帰路に着き、大阪市を南北に貫く道路である堺筋を歩いて南に向かっていた。
七月の暑い夜を憎みながら、手持ちの扇風機を(体調を気遣い)最弱の風量で顔に当てている
自宅近くにやっと辿り着き、うっすらとした安堵を感じていたときのことだ
見慣れない"景観"が視界の端、足元でわたしを睨みつけていた
「景観条例だ」
即座に危険だと悟った
本来この大阪の地には無縁であったはずの、正義とも縛りとも、呪いとも受け取れる妖怪がそこにいるのだ
わたしは恐ろしくなった
周りを見渡すと普段は自宅近くの歩道を占拠している無数の自転車がなくなり、すっきりと歩きやすくなっている
「どうして─────」
どうして。景観条例は京都でしか見ないはずだ。特急か新快速に乗ってやっと、茶色い看板になったコンビニやアドトラックを見かけるのだ
その妖怪を顕現させるための最も小さい単位、「京都市」の三文字が地面に横たわるなんでもないゴミ袋にプリントされていた
(※写真はイメージです)

表面には京都市の文字がプリントされてある
「ここはダメだ、これからどうする」
これからどうする。自宅近くだぞ、効力を発揮し周囲を改竄する"景観条例"は止まらない。ブレーキの壊れた機関車なんて大した問題ではないくらいだ。
実際のところ、建物や山に激突すれば機関車は止まるだろうが、景観条例は建物でも山でもお構いなしだ
もし自分が暴走機関車、いや景観条例に飲み込まれてしまったらどうなる。
23歳、男性、大学は除籍された。
こんなスペックのわたしはたぶん木屋町のベーシストか、極左暴力集団の一員になってしまうだろう。
京都が持つ独特の雰囲気によって、人格すら破壊されてしまう気がする
「大阪府警に通報しないと、」
ひどいことになる。
「京都市」の影響はまだ見える範囲に留まっている。隣を女性向け求人のアドトラックが通過した。茶色くはない。
しかしこのまま放っておけばきっと堺筋を中心とした京都街が生まれてしまい、大阪市は京都市に併合されるだろう
誰がこんなことをしたんだろう。
ゴミ袋が捨ててあるだけだし引っ越してきた人なのかな。
阪急でやってきた工作員が置いていったとも考えられるよな。
とにかく府警本部の電話番号を調べないと、、えっと、、、075-、、、。

インターネットで府警本部の電話番号を調べている。
203X年、公務で出掛けるわたしは��市を南北に貫く道路である堺�通りを歩いて北に向かっていた。
盆地でもないのにとんでもなく暑いこの街と、手に持った大きな荷物を憎みながら、市営地下鉄の駅へと歩みを進める。
今日は神戸市に用事がある。新快速と阪急、どっちに乗ろうかな