旧優生保護法裁判について、皆さまにお伝えしたいこと。<オンラインセミナー実施レポート>
ぜんち共済株式会社の公式note「ぜんち note」編集部です。
7月27日(土)に旧優生保護法裁判をテーマに、東京訴訟弁護団長の関哉 直人弁護士、原告の北 三郎さん(仮名)に登壇いただきオンラインセミナーを行いました。こちらの記事では当日の様子についてレポートいたします。
※関哉 直人弁護士は当社の顧問弁護士でもあります。
セミナー開催の背景
全国各地で訴訟が提起された、旧優生保護法裁判。
旧優生保護法は、1948年に制定され、精神障害や知的障害を理由に、本人の同意がなくても強制的に不妊手術を行うことを認めていた法律です。この法律は1996年に廃止されましたが、その約50年間にわたり、全国で多くの人々が強制的に不妊手術を受けることとなり、社会に優生思想が深く根付く結果を招きました。
2024年7月3日最高裁判所大法廷は、「旧優生保護法は憲法に違反する」との判断を示しました。このような過ちが二度と繰り返されることのないよう、本訴訟の原告弁護団として力を尽くされた関哉 直人弁護士、そして強制不妊手術の被害に遭い今までつらく、悲しく、苦しい思いをされてきた北 三郎さんの言葉にしっかりと耳を傾け、各々が考えるきっかけにしたいと考え、本セミナーを企画しました。
セミナーのポイント
① 2024年7月3日の最高裁大法廷判決について解説
・旧優生保護法そのものが作られた当初から憲法違反(13条・14条違反)
立法当初から憲法違反と述べた最高裁判例はこれが初めて。
昭和23年から平成8年までの約48年もの長期間にわたり、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の障害等を有する者等を差別してこれらの者に重大な犠牲を求める施策を実施してきた。
・被害者の権利行使は困難であった
被害に遭われた方は声を上げるのは難しかった。法律は国会が制定したもので普通は憲法に合っていると推測する。その中で被害に遭われた本人が裁判に訴えることを期待することはできなかった。また、国が適法だったという姿勢を変えなかったことも権利行使をするのが困難な事情だった。
・裁判最大の争点は除斥期間
20年権利を行使しないと権利が消滅する民法の規定(除斥期間)がある。手術から20年が経ったから権利消滅では著しく正義・公平の理念に反する。
・判例の変更
裁判は過去の最高裁判例に倣って判断していく特徴がある。20年経ったら自動的に権利が自動的に消滅する当事者からの主張はいらなかったが、20年経っても国からの主張がいる、これに対して原告側は反論ができますという構造であることに変更した。
② 最高裁における合理的配慮・環境の整備について
裁判所側と何回もやり取りを行ってきた。例えば、手話通訳の立ち位置や、「障害がある」という表現への統一の依頼などを裁判所と詰めていった。
③ 裁判官が込めた思い
立法当初から憲法違反だと判断してくれるとは、今までの判例の枠で考えると正直多くの弁護士は思っていなかった。法律を疑っていくという姿勢は重要。
この問題はそれぞれがそれぞれの立場でしっかり責任を自覚して、そこからできることを考えていかないとスタートしない問題なので、裁判所もそれをしっかり考えてくれたと考えている。
④ 判決を受けてやるべきこと -この判決を無駄にしないために-
・全面的被害回復
全面的被害回復の途を作った判決を、しっかりつなげる方法論を考えていかなければならない。
・子育てに関する制度改正
社会にある制度的な障害を取り除くことはできる。子育てに関して、障害のある方がパートナーと家族を作る選択ができるよう制度を作っていけたらと思っている。
・教育での差別解消
全閣僚をメンバーとする対策推進本部が立ち上げられることから、教育での差別解消をしっかりと盛り込むように働きかけていきたい。
⑤ 原告の北 三郎さんとのやりとり
参加者の声
おわりに
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
私たちは今後もオンラインセミナー等の情報提供を通じて関係者、社会の皆様の理解を深め、「誰にも優しい社会の創造」を目指してまいります。