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2023/12/23(土) 冬帰省記

0. はじめに

 帰省。下宿が静岡県清水、実家が東京であるから、普通の人なら一度静岡駅に出てから東海道新幹線に乗る。所要時間はたかだか2時間程度である。しかしねこひげはどうしようもないヲタクである。なら身延線経由で甲府に出るか?しかしもうその辺の路線は乗っている。しかもねこひげはただの鉄ヲタではない。おふねヲタクでもあるのだ。久しくおふねに乗っていない。気がする塩分補給が必要だ。塩分は生命にとって必須のミネラルであり、すなわち乗船が不足すると生命維持に支障が出る。そういえば、清水〜東京の間には、知名度はあまり高くない怪しい航路があるでは無いか。多少の寄り道になるが、この経路で帰省しよう。

 白羽の矢が当たったのは神新汽船「フェリーあぜりあ」ピ。伊豆半島東岸南部の下田港を出航し、伊豆諸島のうち利島、新島、式根島、神津島を経由して下田港に戻ってくる航路である。曜日によって時計回り/反時計回りが入れ替わる。おふねヲタクみんな大好き「はこぶね課」で有名な、東京竹芝より出る「さるびあ丸」ピや「橘丸」ピ、各種ジェットフォイルピ等を運航する東海汽船の系列であるが、東海汽船は有名でも神新汽船を知っている人は少ないかもしれない。ちょっとマイナーな航路である。

 下田港出航時間は9時半。え、9時半!?時刻表をめくると、清水駅に朝6時にはいないといけない。しかし、ねこひげ邸があるのは清水駅からバスで20分以上揺られた辺境の地であり、そんな早朝にバスは無い。泣く泣く事前にタクシーを予約しておいて、早朝割増2000円強のお支払い。おでかけヲタクにとって、自宅から鉄道駅へのアクセスは重要であることを改めて痛感する。なお起床時刻は朝4:40。ヲタクの朝はいつも早い。


1. 下田まで

 清水6:06発東海道本線722M普通三島行きに乗車、211系4連の国鉄モーターを聴きながら終点まで。乗り飽きた区間なので読書をして過ごす。終着三島で新幹線ホームへ。朝日に照らされた赤富士が美しい。なお東海道新幹線三島駅は、東海道新幹線唯一の1面2線+外側通過線という、新幹線にしてはかなり珍しいホーム配置をしている。このホームに降り立ったのは初めてだったので、外側通過線に興奮する激キモヲタクになってしまった

三島駅新幹線ホームより

 乗車電は三島7:06発「こだま」808号東京行き。しかし待てど暮らせどやって来ない。新幹線を降りた後の次の乗り換え時間は元々8分しかない。内心焦っていると、7:10頃ようやっと入線し、5分延の7:11発。どうやら朝の上りだから各駅で乗降に手間取っていたらしい。ねこひげは1駅で降りるのでデッキに立っていた。隣の駅なので特定特急券でお安く乗れる。というかどう頑張ってもこの三島~熱海は新幹線課金しないと、9:30下田港に間に合わないのである。そして当然だが次の乗り換えも成功しないと、今回の計画はパーである。内心焦るバカ猫を乗せたN700a(東海車)が長い新丹那トンネルを抜けて熱海に到着したのは7:18。8分乗り換えのところを4分延かまされたので、スーツケースを抱えてエスカレーターダッシュという暴挙の果てにどうにか乗り換え成功、熱海7:22発伊東線1627M普通伊東行きに乗車。その割には乗り換え改札で「このきっぷ持ち帰りたいんですけど!」とかやる辺り、やはりねこひげはどうしようもなくヲタクなのである。

1627M@熱海駅

 1627Mは元東急8000系6連であった。宇佐美でリゾート21と交換し「あっちが良かったなぁ」などと思っている内に伊東着。なおこの1627M車内で清水のコンビニで購入しておいたおにぎり2個を頬張ったが、先に結論を言っておく。今回の行程で実家に帰り着くまでの間において、結果的にこのおにぎり2個が最初で最後のまともな食事になってしまった
 伊東7:51発伊豆急行線627レ普通伊豆急下田行きに乗り換え。変わらず元東急8000系の3連。せめて元209系が来なさいよ。熱海~伊東はJR東日本伊東線であり既乗であるが、伊東から先伊豆急行線内は完全未乗区間である。海側ボックスで相席をお願いし、伊豆稲取駅で「プレバト」の企画:芸能人のスプレーアートを車内越しに鑑賞しつつ、朝日に照らされた海の向こうに見える、これから巡る伊豆諸島(と海の様子)を眺めている内に、8:58定刻に終点伊豆急下田に無事到着した。私鉄の頭端式ターミナルは心躍るね。

伊豆稲取駅のスプレーアート

2. 「フェリーあぜりあ」乗船記

 下田の駅からフェリーターミナルまでは徒歩20分ほどかかるらしいが、627レ下田到着が8:58でありそこから歩いたら出航時間ギリギリになってしまう。フェリーターミナルに早めに着くのは常識であり公式サイトにも「徒歩乗船は30分前集合」とあるので、駅のコインロッカーに大きな荷物を預けたあとはフェリーターミナルまで迷わずタクシー課金。1,000円でお釣りが来るか来ないかくらいであった。

神新汽船下田港フェリーターミナル

 乗船券と御船印を購入し、下田港FT9:30発神新汽船「フェリーあぜりあ」ピ神津島/式根島/新島/利島/下田行きに乗船。購入したのは、一周クルーズして下田に戻ってくるワンデークルージングパスの2等席。各島での下船は不可能であり、完全に塩分補給のためのきっぷである。ワンデークルージングパスを購入するのなんておふねヲタクだけであるからなのか、主要目入りのポストカードが無料で付いてきた。島民の大切な足である離島航路でありながら、妙にヲタクへのサービスが良い

ワンデークルージングパス、ポストカード、御船印

 この日は土曜日であり、反時計回りの航路、すなわち最初に最南端の神津島へ向かい、そこから式根島、新島、利島と北上して下田に帰るルートである。しかし公式発表の運航情報いわく、利島抜港の上他3島はすべて条件付き運航とのこと。ワンデークルージングなので出航さえしてくれれば問題ないが、波浪予想を見てみると西寄りの風で平均風速29k't(約15m/s)、最大瞬間風速41k't(約20m/s)、波は波高2.9mとのこと。これはかなり楽しい(?)航海になりそうである。

当日の運航状況(出典:神新汽船公式HP)
当日の風潮予想(出典:Windyアプリ)

 乗船券を手に入れたのでいよいよフェリーあぜりあピとご対面。小さくて大変可愛らしいおふねである。離島航路らしくデリッククレーンによるコンテナのLift on / Lift off方式を採用しつつ、ランプウェイによる乗用車のRoll on / Roll offも可能なハイブリッド型という珍しいおふねで、Ro/Lo船と呼ばれるが、分類上はカーフェリー扱いである。

フェリーあぜりあピ@下田港

フェリーあぜりあ主要目 
総トン数:495t
・載貨重量トン数:200t
・全長:63m
・全幅:12.6m 
・満載喫水:3.1m
・主機出力:2,060kW × 1基
・旅客定員:240名
・航海速力:15.2k't
・進水:2014年9月

 オールラインレッコし定刻9:30に出航。

オールラインレッコ!
ターミナルで係員のお見送り

 入船左舷付けであったから、さして広くない港内でくるりと右に回して防波堤の外へ。そして予想通り外防波堤を出た瞬間から揺れに揺れた。この強風と波/うねりに対して495tは小さすぎる。ピッチング(縦揺れ)、ローリング(横揺れ)、パンチング(船底が波を叩く揺れ)が凄いのはもちろんなのだが、ヨーイング(船首が左右に振れる揺れ)を分かりやすく感じたのは初めてなので感激していた。特にピッチングが凄い。船首が2~3mは上下していたのではないか、いやもっとか?上下に揺れ、左右に傾き、さらに小刻みな旋回をするかのように左右に振られる。これらの揺れが組み合わさって複雑な揺れとなっている。まさに「木の葉の舞うよう」とは言い得て妙である。

船首が下がり前のめりになった状態の時。海がよく見える。
船首が持ち上げられ前上がりになった状態の時。水平線が見えない。

 画像よりも動画が分かりやすいので、ねこひげ垢に上げた動画を以下に引用する。16時過ぎの下田入港まで、一日中この揺れが続いた

 
では何故こんなに揺れるのか。天気図を見てみよう。

当日の天気図(出典:Yahoo!天気アプリ)

 西に高気圧1,040hPa、東に低気圧1,008hPa、教科書通りの西高東低の冬型の気圧配置である。両者の気圧差32hPaにより高気圧から低気圧へ向けて吹く強い西寄りの季節風とそれに伴う波/うねりが、この揺れを引き起こしている張本人だ。つまりこの時のねこひげは、この気圧差32hPaを全身で感じていたわけである。まさに人間洗濯機に放り込まれたようだった。 
 
時おり、2階外部デッキの屋根を超える高さまで波がかかる。これは少なく見積っても海面上6~7m前後の高さの波しぶきを被っていることになろうか。恐らく、ピッチングにより持ち上げられた船首が落ちる際に、波を叩いて巻き上げているのだろう。ブリッジからは、船首が海面に突っ込んで波しぶきの跳ね返りを全面に浴びる、大迫力の光景が見えているはずである。

見えるはずの空が白くて見えない部分、よく見ると波しぶきである。
天井上まで跳ね上がり、外部デッキにも海水が容赦なく打ち込む。

 出航直後のまだ余裕のある内に船内探検を済ませることにする。激しく揺れているので腰を落として脚を開き気味にして踏ん張りながら歩く。2等室は後部左舷側にソファーと机があり、右舷側にはトイレ。さらに前部にはカーペット敷きの雑魚寝区画が片舷2区画ずつ両舷計4区画並ぶ。各所にカラフルな取っ手:通称「内海造船のタマゴ」がある。このタマゴを見つけたら、その船は内海造船(瀬戸田工場)建造であることが調べなくてもわかる。外部デッキは、2等室のある2階には喫煙所がある右舷前方と乗下船口のある左舷後方の2箇所ある他、上級船室のある3階にも後部デッキがある。

 カラフルなソファーと「内海造船のタマゴ」
ファンネルマークはシンプル@3階後部デッキ
@3階後部デッキ

 船酔いは、ピッチングによる上下の揺れが最も影響する。これを軽減するには、なるべく揺れないところにいるのが良い。ピッチングの軸はだいたい船体中央よりやや後ろ、全長の2/3程度の位置にあることが多いが、「フェリーあぜりあ」ピは2階の外部デッキがその位置に該当するので、そこで新鮮な空気を吸いつつ水平線を見つめながら船酔いリスクを軽減する作戦に出た。水平線を見ていれば、目から脳に伝わる情報と平衡感覚とのズレを抑えることも出来る。しかし真冬12月気温10度、さらにそこに平均風速約20k'tと船の速力約15k'tの合成ベクトルによる強風に吹き晒されている。要するにいくらなんでも寒すぎる

 さらに揺れに耐えるために無意識に身体の各所に力を入れて踏ん張っていたせいか、お腹が空いた。「フェリーあぜりあ」ピは495tと小さいため、レストランはおろか売店すらなく、カップ麺と飲み物の自販機しか無い。出航して1時間半ほど過ぎた11時ころ、とりあえず船内に戻って自販機でカップ麺を買う。しかしこの行動が命取りであった。お湯を入れて3分待って蓋を開ける。そして匂いを嗅いだ瞬間にやられた。一口食べて「これはヤバイ」という直感。船酔いだ。船内に響くエンジンの音や振動がくぐもって感じられる。冷や汗が浮かぶ。結局210円のカップ麺は一口食べただけで捨てることとなり、これ以降下田港に帰るまで2等室のカーペットに横になることしかできなかった。胃は縦に長いから、身体を起こしているより横になった方が揺さぶられ感が軽減され楽になる。結局船酔い対策は「薬飲んで寝る」に限るのだ。

 薬は飲まずに30分ほど睡眠を取ると、神津島到着前のアナウンスが流れる。そして12:10神津島(多幸湾)着岸。神津島は本来は集落中心部にほど近い西岸の前浜港に着くが、うねりや風は西から来ているので、東岸の多幸湾に変更となった。そんな神津島多幸湾は、天上山の断崖絶壁が目の前に広がる大パノラマで興奮する。しばし寝ていたら少し楽になってきたので、着岸〜荷役〜離岸の一連の流れは外部デッキに出て見物することにした。多幸湾は多少の防波堤が整備されており、港内に入ったらようやっと揺れが収まった。

以上3枚、神津島多幸湾に聳える天上山の断崖絶壁と斜面大崩壊

 神津島も伊豆諸島の例に漏れず火山島であり、その噴火堆積物によって出来たのが天上山なので、非常に浸食されやすい。すなわち雨や地震によって起きた斜面大崩壊がこの絶景を作り出している。また付近には多幸湧水という東京の名湧水57選に選ばれた湧水があるのだが、今回はワンデークルージングのため下船出来ないからお預けとなった。

エメラルドグリーン〜コバルトブルーの海面が美しい。
南の島に来たことを感じる。東京から約180kmだが、ここも東京都である。
公式の運航情報通り、神津島のみランプウェイによる車両荷役が行われた
船首ではデリッククレーンによるコンテナの荷役が行われる
大量の発泡スチロールを手渡しで陸揚げしていた。本土で製造した
発砲スチロールを島に送り、島の特産を詰めて本土に出荷するのだろうか?
みんな大好き(?)伊豆七島海運のカラフルコンテナ

 コンテナ、乗用車、発砲スチロールの荷役を10分程度で手早く終わらせ、12:20神津島多幸湾出航。やはり防波堤を出た瞬間から相変わらずの揺れである。次は式根島。2等室にいた他の乗船客の多くは神津島で下船したらしく、船内に残っているのはごく数人であった。よってカーペット敷きの1区画を占有し、再び横になる。横になっていれば激しい揺れも楽しむ余裕が出てくる。

 13:15式根島(野伏港)着岸。式根島は防波堤すら無く、岸壁がもう目の前だと言うのに外洋と変わらぬ大揺れである。着岸できるのかと外部デッキでハラハラしながら眺めていたら、まずオモテとトモの係留索をとったあと、少し待ってから岸壁に船体があっという間に寄ってあっさり着岸してしまった。動揺周期を見てタイミングを見計らって一気に寄せたように感じられる。神業……
 さらに着岸したあとも延々と揺れている。ひたすらローリングを続け、船体外板が岸壁フェンダーと接触する音が何度も響いていた。タラップは付けなかったようだけど、徒歩での上下船客はいなかったらしい。


山積みされた伊豆諸島航路各社のカラフルコンテナ

 式根島でも荷役だけ手早く済ませて10分程度でササッと出航。次は新島。新島までは短時間の航海であるが、やはり雑魚寝区画に横になって過ごす。時刻表にタオルを巻いた簡易枕は、「はまなす」のびのびカーペットや「あけぼの」ゴロンとシート、「サンライズ出雲/瀬戸」ノビノビ座席等でもよく使っていたねこひげの定番スタイルである。
 

 13:50ころ新島(前浜黒根港)着岸。ここも式根島と同様防波堤が無く、式根島のような神業着岸を見ることが出来た。着岸前も着岸後も相変わらず揺れ続けている。


新島では岸壁工事を行っていた
ここでも発砲スチロールを陸揚げ。手際よくコンテナに詰めていく。
クレーンで陸揚げしたコンテナは…
フォークリフトでトラックの荷台へ

 相変わらずの手際良い短時間荷役でサクッと出航。利島抜港であとは下田に帰るだけだが、この2時間が特に揺れるとのことで、外部デッキ閉鎖の船内アナウンスが流れる。実際、新島出航直後からアナウンス通り揺れに揺れる。同じく外海の航海だった下田→式根島の時はあまり感じなかったスラミングもあり、時おり船体全体に大きな衝撃が響き渡る。あまりの揺れに、家族連れの小さい子供が泣き叫ぶ声が聞こえた程だった。

抜港となった利島。遮るものが何も無い北岸たった一つしか港が
ないので、今回みたいに利島だけ抜港となりがちで、就航率が低い。

 16:10下田港着岸、下船。本当に一日中揺れ続けていた。時刻表上は16:30着岸予定であるからかなりの早着であるが、調べてみるとよくあることらしい。ならばアレに間に合うかもしれない。タクシーを呼んで伊豆急下田駅に急ぐ。

一日中の時化航海お疲れ様でした@下田港

3. 「サフィール踊り子」乗車記

 タクシーで駅に戻ったのが16:20過ぎ。余裕がある。空席もまだある。コインロッカーに預けていた荷物を急いで出して出札窓口へ。多少の出費ではあるが、「船酔い直後なので豪華な席で早く帰ろう」と理由をこじつけてきっぷを購入。目次と見出しでとっくにネタバレしてるんだよなぁ。

Pグ

 改札を通りホームへ行くと、目の前にJR東日本の在来線フラッグシップ、E261系はすでに入線していた。伊豆急下田16:39発特急「サフィール踊り子」4号東京行きである。奮発してプレミアムグリーンに全区間乗車。超贅沢である。まさか間に合うとは&空席があるとは思ってなかったよね。

「サフィール踊り子」@伊豆急下田駅
ロゴマーク
プレミアムグリーンの号車表記

 プレミアムグリーンがある1号車は車端部に大型荷物スペースが用意されている。有難い。そこに荷物を置いて自分の席へ。

デッキと客室の仕切り扉
バックシェル付きリクライニングシート
レッグレストを展開しても前の座席に足が当たらぬように逃がし部分がある

 「サフィール踊り子」専用車内チャイム「La Mer Bleue(仏語で「青い海」)」が駅到着前/出発後に毎回流れる。綺麗なメロディである。そして伊豆急線内はカーブも多いはずだが、全く揺れない。さすがはフルアクティブサスペンション。まるで滑っているかのような乗り心地である。ついさっきまでの時化航海との落差が激しい。

 熱海を出ると混雑するだろうから、伊豆急行線内を走っている間にいそいそと車内探検へ出かける。まず隣の2・3号車へ。この2両は4人用グリーン個室×2部屋と6人用グリーン個室×1部屋と1両に計3部屋しかない、これまた豪華な造りである。そして何より、高い張り上げ屋根に細い通路と個室扉が並ぶ光景は古のブルートレインを思い起こさせる造りで、大変興奮した。この通路にある窓下の補助椅子を展開して外を眺めるのが好きだった。

2・3号車の通路部分
4人用グリーン個室
6人用グリーン個室

 続いて4号車。ここは「サE261」と示すとおり、食堂車(案内上はカフェテリア)である。

令和のこの時代に「サシ」表記を拝める
山側はテーブル席が並ぶ。
海側は海に面したカウンター席が並ぶが、他の客がいたので撮影は控えた。
車内に本格的な調理設備が並ぶ

 残り5〜8号車は一般グリーンであるから、車内探検は5号車までとして1号車へ戻る。なおこの一般グリーンは、東北/北海道新幹線E5/H5系(「はやぶさ」等)や、JR四国8600系(「しおかぜ」等)、2700系(「南風」等)のグリーン車と全く同じ座席であり、四国8600系/2700系のグリーン車は既に乗ったことがあるため、今回は一般グリーンではなくプレミアムグリーンにしたという経緯がある。JR四国のお得感が際立つね。

最低ランクでこの席

 最後に1号車の最後尾、運転席を、車掌氏が車内見回りに出てい
る隙を見計らって見物して自席へ戻った。昼間の便の先頭座席は前面展望が望めるので、プラチナチケットの香りがする。

運転席との仕切りも全面ガラス張り

 車内アテンダントが各席を回り、主に4号車カフェテリアの予約を取っている。ねこひげも予約を取ろうか悩んだが、船酔い後でありまともな食事を取れる自信が無かったため、泣く泣く諦めた。下田駅前のローソンで購入しておいたウィダーinゼリーをチビチビやって夕食とする。その後は今回の「おでかけノート」を纏めていた。

 熱海までは単線でカーブも多い上、各所に観光地があるためこまめに停車してのんびり走っているが、熱海を出ると次は横浜まで停車しないので、これまでの走りとは打って変わって東海道線を快走する。東海道線東京口でこの快走が楽しめるのも「サンライズ」と「踊り子」程度になってしまった。あっという間に久しぶりの「La Mer Bleue」とそれに引き続く「間もなく横浜」の放送が流れたと思ったら、突然自動放送がぶち切られて「急停車」の自動放送。と同時に急ブレーキで緊急停車した。保土ヶ谷を通過した頃である。どうやら踏切の非常停止ボタンが押されたようだが、大したことは無かったのか、数分ですぐに運転再開となった。その後は回復運転をしているのか、さっきよりさらに快走して終点東京駅に到着。2時間半が一瞬であった。そしてここに、朝6:06に清水駅を出てから実に13時間に及ぶ帰省が終わった。

@東京駅
4号車カフェテリア厨房部分の巨大ロゴ@東京駅

4. おでかけを振り返って

 人生初の船酔いを経験できた。実はこれこそが今回のおでかけの最大の目的であった。真冬の離島航路、しかもフェリーとしては小型の「フェリーあぜりあ」ピを狙ったのはわざとである。結果的に狙い通りの時化航海となって大満足であった。目的は「自分の船酔い耐性を知ること」。そのためにあえて酔い止めを飲まずにチャレンジしたが、ゴロゴロ寝転がっていればどうにか耐えられるか?くらいであった。要するに、吐きこそしなかったものの酔ったし、食欲も無くなった。恐らくあの揺れで薬を飲まなかったら、慣れていなければ程度の差こそあれ誰でも酔う、気がする。他の大型フェリー等でそこそこの時化航海をした時は一切酔わなかったので、ねこひげは極端に酔いやすい訳では無い。つまりは船酔い耐性としてはまぁ平均的といったところだろうか。それが分かったのが最大の収穫である。しかし気分が悪くなったのは事実であり、それでも感想としては「最高に楽しかった」なので、やはりこのバカ猫はどこかがおかしい
 
 また、交通手段が限られる離島において船便は大切な足であり、物流の要でもあることを、知識ではなく目の前で繰り広げられる手際良い荷役から感じ取ることが出来た。まさに船が生活を支えているのである。そして、そのために時化だろうと船を安全に走らせ、正確に素早く入出航させ、確実に仕事をこなす船員さんたちにも感動した。と同時に、どう頑張っても無理な時は、安全のため抜港とする判断力が大切であることもわかった。


 最後に付録として、酔わないための対策と酔った後の対処法を一覧に纏めるので、船旅に興味がある方の参考になれば幸いである。船酔いが怖いという理由で船に乗らないのは勿体なさすぎる。それを補ってなお余りある魅力が海にはある。だからって狙って時化航海したがるバカ猫はどうかと思うけど。

Bon Voyage !!

付録

酔わないために

  • 結局「薬飲んで寝る」に限る

  • 酔い止め薬は「アネロンニスキャップ」一択

  • 遠くの水平線を眺めるのもあり

  • 揺れの軸中心付近(左右中央かつ船首から全長2/3程度の位置、なるべく下の階)が比較的揺れが少ない

  • エンジン(船底最後部)からはなるべく遠い方がいい

  • 空腹/満腹/睡眠不足は全て増悪因子

  • 匂いにも注意

  • 梅干しやガムが予防には良いらしい知らんけど

  • 乗船前に「気象庁波浪予想図」で検索(航行海域が黄色以上なら要注意)

  • 後はたくさん時化航海して慣れよう!

酔った後の対処

  • 酔ったあとも結局は「薬飲んで寝る」に限る

  • 「アネロンニスキャップ」一択だからね!!

  • 吐いた方が楽になる時もあり

  • 栄養補給はウィダーinゼリー(事前に買っておくべし)

  • 炭酸×カフェイン×糖分、すなわちコカコーラも優秀

  • 食事再開はうどん/お粥など胃に優しいものから

以上

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