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2021年2月の記事一覧
残したい景色はいつも目の前にあって、嵐のように去る話
無謀にも、「覚えておきたい」と思う。
人は忘れる生き物なのに。
◇
外に出ると、3歳の娘と私は手を繋ぐ。
玄関を出て、娘は左手を差し出す。目は行く先のみを見ている。
娘の頭の横で宙に浮いている小さな手は、握り返されるのを静かに待っている。その手をぎゅっと掴むと、弾かれたように駆け出す。
待って、早いよ。そう言って、娘の揺れる髪の毛と、きゅっと上がった頬を斜め後ろから見る。喜びが、小さな身体か