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家族のこと

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娘や夫のはなし
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2020年8月の記事一覧

ミルクをぜんぜん飲まない娘と、悩んでいた私へ

娘が産まれてからずっと、母乳を飲まない、ミルクを飲まない、離乳食を食べない、と悩んでいた、ちょっと過去の私へ。

母乳もミルクも飲まない娘は全然飲まなかった。
母乳もミルクも、平均と言われる摂取量にはほど遠かった。

2017年初夏の深夜2時前、娘は元気に産声を上げた。

産院の授乳室では、お母さんたちが横並びで座り、揃って膝に赤ちゃんを乗せ、我が子に母乳を与える。

どれだけ母乳を飲んだかを毎回

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祖母と手紙と1万円

祖母と手紙と1万円

毎週末、祖母へ手紙を書いた話。
(写真は昨年のお花見で、娘が祖母にプレゼントしていた桜の花びら)

祖母私の祖母は、大正生まれの97歳。

若いころ女学校の先生をしていて、その頃から90歳になるまで、ずっと趣味の踊りを続けていた。元気で、声が大きいおばあちゃん。
毎日寝る前にカーラーを巻いてくるんとさせた、まっくろなショートヘアー。
10年以上前、私の祖父にあたる夫を亡くしてからは、ずっとひとり暮

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娘のこたえ

知らないものと遭遇したとき、3歳の娘は知識欲を全開にする。

例えば、はじめてセミの死体を見つけたとき。

おでこと、鼻と、とにかくスレスレまで顔を近づけて、じっと観察をする。そして、この未知のものが何なのかを、言葉で、私に伝えようとしてくれる。

この世に生まれてたった3年。セミの死体に顔を近づける間、その数年間に吸い込んできた、せいいっぱいの知識を総動員している。きっと、たくさんの記憶を自分の

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いつか見る打ち上げ花火へ

いつか見る打ち上げ花火へ

「はなび、きれーい」

夕方のニュースで、今年中止になった花火大会の話題が取り上げられていた。画面には昨年の映像が流れている。テレビいっぱいの、鮮やかな大輪。

ぱらぱらぱら、と散っていく映像をぼうっと見ながら、少し気持ちが萎む。本当は今年、家族揃ってはじめての花火大会へ行くつもりだった。

今年の4月、少し早めに小さな甚平を買った。娘が選んだホタル柄。夏に入る目前、花火大会が全国で軒並み中止とな

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娘とくつしたの話

娘とくつしたの話

自分でなんでもやりたい娘と靴下の話。

「娘ちゃーん、お母さんお迎えにきたよー!」

先生の言葉でパッと顔を上げ、ニコニコした顔で腕を振って走ってくる。まだ加減を知らない3歳の娘を、ドンっという音とともに胸で抱きとめる。止めていた息を小さく吐きながら、少し前まで娘が座っていた場所を見る。机には塗りかけのカラフルなカブトムシ。その横には、茶色、黄色、黄緑、出しっぱなしのオレンジ色のクレヨン。

カブ

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