七人の婆さん
実家に、親戚が集まった。婆さんばかり7人だ。
みんな持病があるのだろう。昼ご飯を食べ、「さあ、お薬の時間ですよ」となったところで問題が起こった。
「私の薬があらへん」と婆さんが騒ぎだしたのだ。「あの薬がないと、頭がおかしなるねん」
頭がおかしくなっては大変だ、とみんなが探し回る。
その途中で「この花キレイなあ」などと一人が言うと、「ほんまキレイや」「私の方がキレイやで」「うば桜や、わはははは」などと薬はそっちのけになる。
「刀、あるで」と婆さんが日本刀を持ち出す。うちは、剣道をやる家系で、実家にも何振りか置いてあるのだ。「ひゃあ、怖いやんか」「抜いたらいかんぜよ」「福山雅治の龍馬は男前やったなあ」などと、また薬探しが中断される。
効率が悪いので私も探そうとすると、「男の人は座っとき」と止められる。
結局、薬はゴミ箱の中にあった。鼻をかんだティッシュを捨てようとして、薬の方を捨ててしまったらしい。ポケットには、丸めたティッシュが入っていた。
「大ボケやな」「アルツハンマー病や」「アルツハイマーちゃうの」「どうっちでもええがな」
かつて偉大なボクサーであるジョージ・フォアマンは、「老いは恥ではない」と言った。だが私は、「恥ではないと言い切るのはいかがなものか」と異議を唱えたいと思う。