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トラウマからの回復

夫と別居してしばらくすると、それまで心の奥底に封じ込めていた様々なトラウマが、まるで堰を切ったかのように溢れ出してきました。

まず、男性全般がとても苦手になりました。街ですれ違う男性、電車で隣に座る男性、職場で会話する男性…あらゆる男性が怖くて、まるで大きな壁が目の前に立ちはだかるようでした。

大声もすっかりダメになりました。テレビで人が怒鳴るシーンや、スポーツ観戦で観客が叫ぶ声も、体がビクッと反応してしまうほど苦手になりました。例えそれが自分にとって安全な場所で、脅威がないと分かっていても、ダメだったのです。

中でも特に苦しかったのは、スーツ姿の男性が極度に苦手になったことです。夫に似た背格好の男性が電車で隣に座ろうものなら、もうパニック寸前でした。目の前が真っ白になり、息が苦しくなり、冷や汗が止まらなくなるのです。

とにかくスーツが苦手で、街で見かけるスーツ姿の男性全員が、まるで自分を責めているかのように感じていました。

日常生活を送るのが困難なほどの不安に襲われ、ついに精神科を受診しました。そこで告げられた診断結果は、複雑性PTSDでした。

複雑性PTSDとは、長期間にわたる虐待や家庭内暴力、戦争、組織的な暴力など、反復的かつ持続的なトラウマ体験が原因となる精神疾患です。

私の場合、特に強く現れた症状は、自己肯定感の低下、罪悪感、絶望感、そして睡眠障害でした。

中でも睡眠障害が本当に辛かったです。毎晩悪夢にうなされ、少しの物音でも目が覚めてしまい、熟睡できませんでした。

睡眠不足が続くと、心身共に疲弊し、起きているのがやっとの状態でした。子供達にご飯を作るのも這う這うの体で、家事も仕事もこなすのが精一杯でした。

「どうして私だけこんなに苦しいのだろう」「もう何もかも嫌だ」

目が覚める度に泣いていました。それでも、「子供達のため」「仕事に行かなくては」という思いで、辛うじて一日一日を過ごしていました。

そんな状態がしばらく続きましたが、薬に助けられながら、少しずつ、本当に少しずつ回復していきました。

心の傷が癒えるには、時間がかかりました。夫からの精神的暴力によって粉々になった心が、やっと少しずつ痛みを忘れられるようになりました。スーツ姿の男性や大声に縮み上がるほど怯えることも、徐々に減っていきました。

そして、別居から一年ほど経った頃、初めて一日中起きていることができた日がありました。その日は、まるで長いトンネルから抜け出したように、人生に光が差したような気持ちでした。

ようやく正気を取り戻し、ふと自分を鏡で見返すと、髪はツヤがあり長く、きれいに巻いてあるものの、洋服がとても普通であることに気が付きました。パーソナルスタイリストなのに、洋服がとても普通だったのです。

ギリギリ、ユニクロではない程度のイメージ…と言えば、当時の私の服装がどんな感じだったかお分かりいただけるでしょうか。

今、この時期の自分の恰好を見返すと、ああ、本当に疲れていたんだな、と改めて思います。


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【zizideza】なかちゃんプロフィール
ファッションコーチング/パーソナルスタイリスト

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