Z世代の労働観 スピード退職の裏に隠された心理とは?
GW明け、退職代行業者への依頼が殺到しているというニュースを見かけました。
悪質なブラック企業から抜け出すための最終手段というイメージがあった退職代行サービスですが、最近ではブラック企業が相手でなくても、なんとなく退職を直接伝えづらいから…というライトな感覚の利用も増えているみたいですね。こうしたニュースの影響もあり、若者(≒Z世代)に対して”すぐに仕事を辞めてしまう扱いづらい相手"という印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、Z世代の労働観について考えてみたいと思います。
Z世代への偏見
さて、Z世代の社会人に対してどのようなイメージを持っていますか?私がこれまで見聞きしたことのある意見をいくつか挙げてみます。
辛抱強さに欠け、すぐに落ち込んだり泣いたりしてしまう
ナイーブゆえに何気ない指摘や注意をパワハラ・セクハラと言い出す
日本の終身雇用制度を古臭いと捉え、さくっと離職・転職するのが当たり前
組織に対する帰属意識や連帯感が薄い
配慮されることが当たり前
実は(ほぼ)Z世代の私ですらZ世代が怖いです。以前こちらの漫画を読んだときに怖すぎて震えました。
もしこんな後輩が入社してきて自分が教育係になったら、自分のほうが精神を病んでしまいそうです。優しく丁寧に、でも意図が伝わるようにどうにか工夫してコミュニケーションを取っても、「怒られた」と解釈されてしまってはどうしようもありません。
ADHDやHSPといった特性に対する理解が世の中に広まりつつあるのは良いことですが、誰も適切な対応方法については教えてくれません。症状を抱える本人にも、周りの人々にもきっと正解は分からないはずです。ADHDにしろHSPにしろ、人によって症状は千差万別なので、唯一の正解が存在するわけではないからです。ただし、給料をもらって仕事をする立場である以上、苦手だからやらない/やらせないは通用しませんよね。それでも、ある程度は本人の特性を考慮してあげたい。優しさと厳しさのバランスが非常に難しい問題です。
Z世代の頭の中
竹田ダニエルさんの著書『世界と私のAtoZ』を読んでいたところ、ちょうど先ほどのHSP新入社員の漫画と通ずる話が出てきました。
私は多様性と聞くといまだにLGBTQを真っ先に思い浮かべてしまいますが、最近では個人の脳の性質に対しても多様性の考え方が適用されるようになっているんですね。この話は、以下のように続きます。
これはあくまでアメリカのZ世代に関する話なので、日本のZ世代がこのような考え方を持っているわけではないと思います。しかし、TikTokやInstagramといったSNSを日常的に使うZ世代にとって、海外の同世代による発信はかなり身近なものであるといえるでしょう。
怠惰は存在しない?
個人的に面白いなと感じたのは次の記述です。
怠惰という概念そのものを、資本家が生み出した虚構として真っ向から否定するのは、Z世代のラディカルな思考傾向を如実に表しているように思います。少し前に中国の「寝そべり族」が話題となりましたが、彼らの多くもまたZ世代です。「寝そべり族」当事者へのインタビューを読むと、怠惰を悪とみなす社会への拒絶反応が伝わってきます。
葛優のミームも有名ですね。
(※この人は俳優です)
日々プレッシャーに晒されながらやりたくもない労働に時間を使うくらいなら、お金を稼げなくても自由な生き方のほうがいい。自由を獲得するためにはホワイトカラーからの離脱も厭わない。労働に対して真面目に向き合うこと自体がナンセンスだし、向上心なんてもってのほか。そうした考え方が、国を問わず若者たちに浸透してきているようです。Z世代は社会人として働くことを舐めていると捉えられがちですが、彼らはもはや社会を諦めているのだと思います。
まとめ
仕事をすぐに辞めてしまったり、転職を繰り返したりするのは、Z世代に「諦め癖」が染みついているせいかもしれません。もちろん何に対してもさっさと諦めてしまう人というのは世代を問わず存在しますが、Z世代は集団的にどことなく諦めムードを抱えています。
生まれてこの方ずっと不景気で、メディアではひたすら地球温暖化や少子高齢化への危機感が主張されている。さらに彼らは、9.11アメリカ同時多発テロ、東日本大震災、新型コロナウイルス流行など、”社会のトラウマ”といっても過言ではない惨事を子どもながらに目の当たりにしてきた世代です。Z世代の目に映る社会とは、いつ何が起きるか分からない不安感でいっぱいなのです。努力したって報われない、社会には期待できない、そんな意識を持ってしまうのも無理はありません。上の世代が「甘え」や「わがまま」と捉えるZ世代の態度は、現代社会を覆いつくす不安感・緊張感を乗り越えるための自己防衛といえるのではないでしょうか。