関連意匠の活用方法
「知財系 もっとAdvent Calendar 2021」で情報発信する機会を頂き、ありがとうございます。
これまで、知財の情報発信をしていないので、少し不安な面もありますが、気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。
今回は、関連意匠制度の活用事例について書きたいと思います。
1.事例
最近クライアントから以下の相談を受けました。
「設計変更により製品Aの外観形状が変わった。設計変更後(製品A)の外観形状について保護受けられないか?」
という相談でした。
補足しておくと、製品Aは約2年前に特許出願だけがされており(公開済)、特許出願の図面に設計変更前の外観形状が表されていました(実際はコップではありません。)。
このまま、設計変更後の製品Aについて意匠出願をしても、先の特許出願の公開公報で拒絶になってしまう(意3条1項3号)といった案件です。
2.関連意匠の改正
令和元年意匠法改正により、関連意匠の出願時期が拡大しました(基礎意匠の出願から10年を経過する日前まで)。それに伴い、意匠法10条2項が新設されました。
意匠法10条2項
「第三条第一項第一号又は第二号に該当するに至つた自己の意匠のうち前項の規定により意匠登録を受けようとする意匠の本意匠と同一又は類似のものは、当該意匠登録を受けようとする意匠についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項第一号又は第二号に該当するに至らなかつたものとみなす。」
意匠法10条2項により、基礎意匠が公知になっていたとしても、それを引用して関連意匠は拒絶されなくなりました。
3.出願変更の有効活用
先の特許出願から2年も経過してるから、国内優先権も主張できないし、このままでは先の特許出願の公開公報により、拒絶されてしまいます(3条1項3号)。
そこで解決策として考えたのは、
「先の特許出願を分割、意匠出願に変更し、新たに基礎意匠を生み出せば、少なくとも先の特許出願の公開公報が引用されて拒絶されることはなくなるのではないか」というものです。
4.特許出願時の図面
出願変更による新たな意匠登録出願が、もとの特許出願・・・の時にしたものとみなされるためには、以下(1)~(5)のすべての要件を満たさなければなりません(意匠法審査基準 第Ⅷ部 第2章 出願の変更 )。
(1)特許出願から意匠登録出願への変更の場合は、もとの特許出願について拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3か月以内であること
(2)実用新案登録出願から意匠登録出願への変更の場合は、もとの実用新案登録出願が特許庁に係属していること
(3)変更による新たな意匠登録出願の出願人と、もとの特許出願人又はもとの実用新案登録出願人とは同一であること ただし、もとの特許出願人あるいは実用新案登録出願人から新たな意匠登録出願人へ、意匠登録を受ける権利の承継が適法になされている場合は、審査官は出願人が同一であると判断する。
(4)もとの特許出願又は実用新案登録出願の最初の明細書及び図面中に、変更による新たな意匠登録出願の意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されていること
(5)変更による新たな意匠登録出願の意匠が、もとの特許出願又は実用新案登録出願の最初の明細書及び図面に表された意匠と同一であること
一番ネックになるのは(4)及び(5)の要件だと思います。
そこで、出願変更をする際に、上記(4)及び(5)の要件を欠くことがないように、特許出願後に外観形状が変わる可能性があるもにについては、特許出願時の出願図面に六面図を差し込んでおくのも手だと思います。
非常に実務的なお話ですが、最後までお読み頂き、ありがとうございます。