サンクチュアリ ー聖域ー

2023 Netflix

福岡、
店が閉店、バラバラになってしまった家族。
父親は庭いじりか深夜の警備員バイト、母親は浮気にあけくれる。
そんな両親の元、柔道の才能があった小瀬清は道を外れ不良になってしまっていた。
ある時、清はスカウトを受け相撲取りになる道を選ぶのだが…。

https://youtu.be/yirqWhlHnAg 

※以下ネタバレ

最初に言っておきますと非常に面白かった。
格闘技が元々好きなものですから。
ただ暴力描写も当然のごとく多いので、そういうものが苦手な方はやめておいた方がいいかもしれない。


不良とスポーツは相性がいい。
現実世界でもかつて札付きの不良だった赤井英和や前田日明がスポーツ選手として輝く例は多く、フィクションでも井上雄彦「スラムダンク」の桜木花道や石渡治「B.B.」の高樹翎等々枚挙にいとまがない。

いわゆる不良がその道に入るものの、舐めているせいで当然ながらうまく行かず、途中で逃げ出し辞めようとするが仲間に助けられ、やがて競技に向き合い真に強くなっていく不良meetスポーツの王道ストーリーは踏襲。

今作はそんな王道青春ストーリーをなぞりつつ、裏テーマとして親と子、家族を描くのも特徴かもしれない。

崩壊寸前の両親と仲が良かった、閉店してしまった父親の寿司屋を取り戻すために金が必要な主人公清。
清にとって大事なのは相撲ではなく金であって、父親と母親が仲良く相撲中継を見ていたあの頃の風景でしかない。
だが静内に負け、母親に殴られ、彼女には浮気され何もかも失い、そこで初めて目を背けていた相撲に向き合うようになる。

そしてそのライバルである静内の母親は虐待をしていたが、唯一静内が相撲で勝った時だけは褒めてくれた。
桜の木の下で弟と無理心中した母親のことを忘れられない静内。
自分だけが母親に置いて行かれた孤独に耐え、数少ない美しい思い出の中、静内は戦い続ける。

龍貴は父親のプレッシャーの下、大関にまで昇進する。
しかし母親から巣立つことができず、父親はそれを憎々しく思っている。

断髪式の際、猿将に向けて
「自分は親方を本当のオヤジだと思ってました」
猿谷が語りかける。
龍貴のように実際の血縁でなくても相撲部屋において親方と弟子は父と子のような関係だし同部屋にいる相撲取りは兄弟弟子と呼ぶ関係性。
相撲部屋は家族。
さまざまな形の家族が描かれることで単なるスポーツドラマが一層深みを増している。

忽那汐里演じる帰国子女の女性記者 は国嶋飛鳥は外部から(海外)の視点を代弁する存在として配置されている。
ここ十年ほどで問題になっていた旧態然とした相撲界の問題点を外からの視点で指摘することで相撲界の異常さをあらわにし、異常だからこそ強く勝ち残れる相撲の世界に取り込まれていく逆説的な存在。

ネットフリックスで世界配信される以上、やはりこういった存在は欠かせないが、果たして海外の人々にどういった受け入れられ方をするんだろう。

ちなみに一番盛り上がるあたりで終わるのは第二シーズンへの期待をあおるためだろうと理解できるので是非制作して欲しいが、どうせなら一話分削ってせめて静内との決着だけは入れて欲しかった…というのは贅沢な希望だろうか。

★★★★☆

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