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ISRAEL NOW!2月7~13日のニュース【男性3人が解放も―医療関係者「収容所に1年いた身体」】
ー ISRAEL NOW!ー
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
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◯ 治安
【男性3人が解放も―痩せこけて別人。医療関係者「収容所に1年いた身体」】(Y,P,H)
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491日ぶりにオハッド・ベン=アミさん(56)、エリ・シャラビさん(52)、そしてオル・レビさん(34)の3人の男性が、ハマスによる囚われの身から解放された。今回の解放も大々的な『セレモニースタイル』での解放だったが、今までと比べて人質がひどく痩せこけ、安定した歩行が困難な可能性もあってか、常に左右をテロリストが歩き腕をつかんでいた。あまりの姿に被害者の家族からは「骨だけで、全くの別人に」との声が上がり、生中継したキャスターも言葉を失っていた。
また今まで以上にプロパガンダ色が強くなり、3人は舞台に上げられただけでなく数分に渡って1人ずつインタビューをヘブライ語で受けた。休戦継続の必要性とイスラエル政府を批判する内容を話した後、「カッサム旅団に伝えたいことは」との質問があり、それに対して人質たちは「必要な全てが与えられ、良くしてもらった。私たち人質を守ったのは、イスラエルではなくカッサム旅団。ありがとうございます」と答え(させられ)ていた。
これに対して現地メディアはインタビューの内容は伝えていないが、「今までとは比べ物にならない、屈辱的かつ悪質なものだった」と厳しく批判している。
また今回解放された3人のうち2人は、帰還直後に訃報に触れることに。ベエリの自宅から拉致されたエリ・シャラビさんは、妻のリアンさん、娘のノヤ(16)・ヤヘル(13)さんが自宅で殺害された事実を知らずにガザへ。また音楽祭の近くのシェルターから拉致されたオル・レビさんも共に身を潜めていた妻エイナブさんの殺害について知らないまま、約500日間の監禁状態を過ごしていた。2人ともイスラエル側で彼らを迎えた心理カウンセラーたちに家族の安否について質問し、彼らから家族の死について知らされた。
夜のニュースでは、3人とも長期間地下トンネル内に居たため日の光をほとんど浴びていなかったこと、痩せこけたため服のサイズが3つ小さくなったこと、拷問や精神的な虐待行為、そしてレビさんはその年齢から予備役兵と認識され、軍事情報を得るための尋問を受けたこと、などが報道された。
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また人質たちの治療に当たっている医療関係者もコメントを発表、「高血圧や心疾患、腎臓・消化器系の深刻な問題、免疫系の弱体化、栄養失調による神経学的疾患などが見られる。また第1回目の解放から人質の健康問題は徐々に悪化しており、今回は1年間(ホロコーストの)強制収容所にいたような体だった」とコメントしている。
(2/8)
【国防軍がネツァリーム回廊より撤退、ハマスが『通行料制度』を導入?】(Y,P,H)
休戦22日目を迎え国防軍は、23年10月より駐屯しガザを南北に分けていたネツァリーム回廊からの、撤退作業を完了した。ネツァリーム回廊は東西約8kmに広がり、約2週間前から国防軍は段階的に撤退を海岸部から始めていた。
これにより同回廊に最大20あった国防軍の臨時基地はすべて撤去され、同回廊はハマスのコントロール下に。国防軍では撤退時、ハマスに使用されるのを防ぐため基地・駐屯所の設備を、徹底的に破壊・焼却処分する様子が見られた。
イスラエル撤退後にハマスは勝利宣言をし、「国際機関が北部に戻り始め、UNRWA本部も再建した。私たちはガザ内統治を再開させている」とコメント。そして同回廊内の幹線道路にチェックポイントを設置し、人道支援物資のトラックを止めて物資の内容・量に応じて「通行料」の徴収を始めたとの情報が、ガザ内から入っている。今後この通行料は、ハマスにとって重要な収入源になるもよう。
(2/9)
【ハマス、人質解放凍結を宣言するも、撤回。今週も3人が解放へ】(Y,P,H)
ハマス軍事部の報道官が10日に声明を発表し、一時的にイスラエル人の人質解放を凍結するとした。この理由については「度重なるイスラエルからの休戦合意違反」があるとし、イスラエルからの協定遵守の明言と「合意違反に対する埋め合わせ」があるまでは、人質解放を行わないとのこと。
ハマスが主張する違反とは、1. 北部への帰還を遅らせたこと、2. 国防軍による発砲、3. 人道支援物資の搬入が合意された量以下であるとの3つだが、1に関しては女性市民・兵士に関する解放の順番の規定を無視し、女性市民の解放を一時的に拒んだというハマス側の違反に対する対抗処置。そして2に関しては、(時には武装した)市民が国防軍に接近した際の威嚇射撃という事例が複数確認されており、軍はハマスやガザ市民による違反が起こった際の措置であると主張、3に関しては合意内に規定された数のトラックはガザに搬入されておりイスラエル側による休戦合意違反は見られていない。
これを受けて11日に米トランプ大統領は、「土曜日の正午までに全ての人質が解放されなければ休戦は中止、地獄のような事態に」と警告。ネタニヤフ首相も「人質が土曜日までに戻って来なければ、ハマスの最終的殲滅までの戦闘を再開する」と、人質の人数には明言しない形ではあるが、戦闘再開を示唆した。また予備役を含む南部への軍部隊の再配備を始めたようで、これは実際に休戦が決裂した場合の戦闘再開のためという理由もあるが、ハマスへの牽制・圧力としての一手でもあると軍事記者。
その後イスラエルが人道支援物資の搬入状況などを仲介国に報告したことにより、仲介国はハマスに対し休戦合意の履行を強く要請。結果的にハマスは13日、休戦合意に従い3人の人質を解放すると発表した。
イスラエルではこの一連の流れについて、ハマスによるトランプ計画に反発するための一手であり、イスラエルに合意違反という言い掛かりをつけ休戦合意決裂という危機的状況を意図的に作り出した、としている。
(2/10-11,13)
【最高齢の85歳の人質、10/7での死亡が判明】(Y,P,H)
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ガザ境界部のキブツ、キスフィームから拉致された最高齢の人質シュロモ・マンツールさん(85)について、国防軍は10月7日に殺害されていたと発表した。軍・諜報部は1年以上に渡ってそれぞれの人質に関する調査を行っており、マンツールさんの死亡については解放された人質の証言や機密情報などから、死亡が確認されたもよう。
マンツールさんは高齢であることから、現在の休戦第1段階で解放される『人道的解放』のリストの中に含まれており、家族は生存者としての解放を願っていたが無言での帰宅となることに。マンツールさんはイラク系ユダヤ人で1941年にバグダッドで起こったポグロム(ユダヤ人迫害・殺戮)を生き延び、その後帰還。キスフィームのキブツ創設者の1人となった。
(2/11)
【休戦合意違反:ガザからロケット弾が発射、ガザ内に着弾し少年が死亡】(Y,P)
休戦期間に入って初めて、ガザ地区内からのロケット弾発射が行われた。発射自体は失敗に終わり、イスラエル領内には届かずガザ地区中部にある難民キャンプに着弾し、キャンプ内に住む14歳の少年が死亡した。軍部は「ガザ地区内でのロケット弾発射という行為自体が、重大な休戦合意違反」としており、イスラエル側は激しく非難。
パレスチナ側は「ロケット弾はイスラエル軍のミサイルの一部から作られたもの」とコメントし、これは搬入された人道物資がテロ利用された訳ではないとの意味ではないかと考えられるが、ガザ地区内での戦闘はもちろん休戦合意違反になる。
これを受けて空軍は、使用されたロケット弾の発射台に対して空爆を行った。
(2/13)
◯ 内政
【私の光はまだガザに― ビバスさんが解放後初めてのコメント】(Y,P,H)
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妻のシリさん、息子のアリエル・クフィルくんをガザに残した形で1日に解放された、ヤルデン・ビバスさんが初めてコメントを発表した。「私の光はまだガザにあり、家族が残されている以上、全ては闇。皆のおかげで私は帰ってくることが出来た。今度は私の人生に光が戻るよう、力を貸して欲しい」と、被害者家族の会を通じて自らの声を国民に伝えた。また、「私たちをサポートする全ての人々に、感謝の気持ちを伝えたい。『ありがとう』という一言では、この感謝・尊敬を表現することはできない」と、解放のための声を上げた国民全体に謝意を述べた。1年以上行われ続けてきた人質解放(+そのための休戦)を求めるデモに関しては、ネタニヤフ首相をはじめ右派からは「ハマスに加担し、戦争の目標達成を遠ざける」と批判の声がある反面、解放された人質たちからは「ニュースで見聞きし大きな励みになった」と、彼らを精神的に助けていたことが分かっている。
(2/7)
【ネタニヤフ首相が国会で演説、軍部・野党への批判を展開】(Y,P,H)
ネタニヤフ首相が米訪問から帰国してから初めて、国会での演説を行った。1年以上言われていたハマス後のビジョンがないとの批判については、「(トランプ大統領によるガザ計画という)これこそが、戦後のビジョン。オスロ合意は破綻していることを学ばない君たちは、これを受け入れられないだろう」と、野党を批判した。また休戦に関しても「(野党は)早い段階から休戦を支持していたが、もしその圧に屈していたら、イラン枢軸がまだまだ力を持ち続けるという、どんなにひどい状態だっただろうか」と、野党批判を時間を掛けて展開。その矛先は野党だけでなく軍部にも向けられ、「開戦当初の戦争内閣で、軍部から『人質の生還は不可能だと考える必要がある』と言われた。『1人の生還も難しいだろう』と。しかし私はそうは思わずに戦い続けた」と、自身は軍部とは違い人質救出を信じ、そのために行動し続けてきたと強調した。
このような軍部の声は今まで全く報道されておらず、実際にあった会話かは不明。野党議員からは反発の声が上がり、演説を妨害したとして多数の議員が退場させられるなど、非常に荒れた本会議となった。
(2/10)
【最高裁長官の就任式、立法・行政機関は式をボイコット】(Y,P,H)
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大統領府にて、最高裁判所のイツハク・アミート新長官の就任式が行われた。通例では立法・行政権を司る首相・国会議長・法相・最高裁選考委員の閣僚たちが式に参列するのだが、ネタニヤフ政権がここ数年進めようとしている司法改革による対立から、ネタニヤフ首相やレビン法相たちが参加をボイコットしたなかでの式となった。
ヘルツォグ大統領は「民主主義国家において、最高裁長官へのボイコット・否認があってはいけない」と首相・政府を批判し、アミート新長官は「三権間の関係性が複雑な時があるのは自然なことだが、それぞれの機関は自らではなく国民のために存在していることを忘れてはならない。司法機関は立法・行政機関との対話を望んでおり、最高裁長官・法相間の定期会談の再開を」と、政府に対して歩み寄りを呼び掛けた。司法改革とそれによる三権分立のバランスに関して国が二分されているなかの就任式は、司法と行政・立法間の対立をより鮮明にさせるものとなった。
(2/13)
◯ 国際情勢
【ネタニヤフ首相の冗談めいた発言に、サウジが公式声明を発表】(Y,P,H)
極右TV局チャンネル14の取材で、キャスターがパレスチナをサウジアラビアと間違えて発言、それを受けてネタニヤフ首相が「君はパレスチナ国家がサウジ内にできればと考えているのか。確かにあそこには広大な土地はあるが」と、冗談を交え訂正しながら発言した1コマがあった。そんな発言を受けサウジは外務省から正式な声明を発表、『断固反対』の立場を表明した。この発言はエジプト・ヨルダン・UAEなどからの批判を呼んでおり、サウジは「ネタニヤフによるパレスチナ人の強制移住発言に対する、兄弟諸国の批判に謝意を述べたい。彼らは自身の土地に関する権利があり、イスラエルが望むように彼らを追放することはできない、というのが王国の立場だ」と正式に発表した。イスラエルメディアは、「ネタニヤフのジョークは、アラブ諸国にはウケなかったようだ」と、こちらもジョーク交じりに報じている。
(2/9)
[情報源略号表]
文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
P=エルサレム・ポスト https://www.jpost.com/(英語)
H=ハアレツ http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)
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