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ISRAEL NOW!1月24日~30日のニュース【1週間で7人の人質が解放、合意決裂の危機も回避】

ー ISRAEL NOW!ー
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
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◯ 治安

【ハマスによる休戦合意違反が発生】(Y,P,H)
24日にハマスは、翌日に解放する女性の人質4名のリストをイスラエルに送付した。しかしリストに名前が記されていたのは女性兵士で、これは「女性市民、その後に女性兵士を解放」という休戦合意には沿わない内容。ネタニヤフ首相はその後交渉関係者を呼んで協議したが、合意に違反したリストではあるものの受け入れを決定した。
しかしイスラエルは仲介国(米・カタール・エジプト)に対して、「明らかな合意違反」だと抗議。生存が確実な女性市民1人を解放しなかったことについてハマス側は「技術的な問題」としているが、予定通り女性4人を解放するため合意違反ではないとの姿勢。
このハマスによる違反を受けてイスラエルは上記の一般市民女性の解放が決まるまで、予定されていたネツァリーム回廊の開放(ガザ北部市民の帰還)を凍結すると発表。このイスラエルの対抗策に対してハマスは、イスラエルに対して開示することが義務付けられていた未解放の26人の人質の安否情報を期限内に送付しないという、合意違反を再び行った。
ハマスによる意図的な合意違反は23年末の休戦期間にも見られており、イスラエル側としては現段階で合意破棄を行う予定はないとしている。(1/24,26)


【女性兵士4人ハマスによる『セレモニー』の後に解放され帰還】(Y,P,H)

10/7にナハルオズ基地からガザに拉致された7人の女性哨兵のうちの4人―リリ・アルバグさん、ダニエラ・ギルボアさん、ナアマ・レビさん、カリナ・アリエブさん―が解放され、477日ぶりにイスラエルで家族と再会を果たした。
同基地への襲撃では7人の女性兵士が拉致され、捕らえられてからジープで拉致されていくまでの動画(テロリストのボディカメラ)は、国内に衝撃を与えていた。7人のうちの1人は23年10月末に国防軍により救出され、翌11月にはもう1人の兵士がシファ病院でテロリストにより殺害されたことが判明、遺体が収容されていた。
そしてこの日、15か月間にわたってハマスのもとで囚われの身だった5人のうち4人が解放され、国際赤十字を通じてイスラエルに引き渡された。
先週行われた女性市民3人の解放時には、ハマスから赤十字への引き渡しの場にガザ市民が殺到。もみくちゃにされながらハマスの車両から赤十字の輸送車に移動し、両組織の車の屋根にテロリストが自動小銃を手に立つなど、異様な光景が繰り広げられていた。これを受けイスラエルは、仲介国を通じ「同じような光景が繰り返されないように」とハマスに通達。
今回の解放時は野次馬たちが人質に押し寄せるような光景はなかったが、ハマスが正式な『セレモニー』を広場で開催したため、結果的に今回も群衆が殺到。人質女性4人は車両から降ろされた後に、壇上に上がりガザ市民たちに向かって笑顔で手を振る時間が設けられた(もちろんハマス側からの指示だと考えられる)。
またステージの横断幕には「ナチス的シオニズムに対する勝利・ガザはシオニズムの墓場・シオニストは勝利し得ない」などといった文言が踊るなど、プロパガンダ的演出が色濃く出た解放となった。
仲介国に加えて赤十字も「解放される人質の安全を守るため」という理由から、市民が大挙して見世物になるような引き渡しを自重するよう求めていたが、このような結果に。その後4人は中央部の特別病棟に搬送され、家族や友人との感動の再会を果たしている。(1/25)


【合意違反問題が解決―女性市民は解放、ネツァリーム回廊も開放】(Y,P,H)
ハマスによる合意違反から起こった休戦合意の危機的状況について、仲介国カタールは解決したと発表した。ハマスは、25日に解放しなかった民間人女性の人質アルベル・イェフドさんと女性兵士アガム・ベルゲルさん、そしてもう1人の3人を木曜日に解放すると約束。
また第1段階で解放される残り26人の安否情報も1日遅れで提示し、これを受けてイスラエルは翌日27日の朝からネツァリーム回廊を開放、ガザ北部市民の帰還を許可することとなった。26人のリストに関してはそのうちの18人は生きており、8人は死亡しており無言での帰宅になるということだが、イスラエル側の関係者は「私たちが持っている情報と一致しており、驚きはない」と反応。

ガザ北部で市民を歓迎する、ハマスのテロリストたち。
(kan.org.il より)

27日には同回廊が解放され多くのガザ市民が南から北に戻り始めたが、覆面のハマスのテロリストたちが握手をして北部住民を迎えたり、「Welcome to Gaza」との垂れ幕が用意されていたりと、ハマス側は『勝利』であるとアピールしている様子が報じられている。(1/26-27)


【イラン、幼稚園を標的にサイバー攻撃】(Y,P)
イランのハッカー集団『ハンダラ』がイスラエルの幼稚園を標的としてサイバー攻撃を行い、約20の幼稚園でミサイル飛来を知らせる警報のアナウンスや、テロを賛美するアラビア語の歌などが流れるといった事例が発生した。また同時に市民に恐怖を与えるようなSNS数万通が、ランダムに携帯電話に対して送られたというのも確認されている。
『ハンダラ』は犯行声明を発表、それらに加えて国家治安省のデータをハッキングし、警官の個人情報や警察車両や銃器などの免許といった機密情報を大量に抜き出すことに成功したと主張している。これに対して国家治安省と国家サイバーセンターは、「通常とは異なるエラー・異常な事象は確認されていない」としている。
パレスチナのコミックキャラクターの名を冠したこの組織は、10/7以降イスラエルに対してサイバー攻撃をしてきたと発表しているが、その中には事実確認が出来ずデマだと思われる件も多い。(1/26)


【男女3人が解放され帰還、イスラエルは解放のされ方に抗議】(Y,P,H)

~アルベル・イェフドさんが解放される様子~
(NBC News 公式Youtubeチャンネルより)

ナハルオズ基地から拉致された女性兵士のアガム・ベルゲルさん(20)、キブツ・ニルオズから拉致されたアルベル・イェフドさん(29)とガディ・モーゼスさん(80)の計3名がハマス・イスラム聖戦によって解放され、482日ぶりにイスラエルへと帰還した。
先週土曜日には4人の女性兵士が解放されており、ベルゲルさんの解放により女性兵士はこれで全員がイスラエルに帰還したことに。また生存が確認されていたアルベル・イェフドさんについては、「1.女性と2.民間人を優先」との合意がなされていたため先週解放されるはずだったが、イスラエル・仲介国の圧力により数日遅れで解放された。
3人目のガディ・モーゼスさんは80歳男性であるため、前述の解放に関するルールに照らし合わせるとこれで生存する女性・子供の民間人はすべて解放され、生存している男性市民の解放を開始したことに。そのため一家で拉致された母シリ・ビバスさんと2人の子供アリエルくん、クフィルくんについては、死亡している可能性が高いとの恐れが改めて報じられている。
ベルゲルさんは他の4人の女性兵士と同じ病院に搬送されて再会を果たし、(アラブメディアによると)他の人質とは違い1人で隔離状態のなか監禁されていたイェフドさん、そして高齢のモーゼスさんも病院で家族と面会し抱擁する様子が感動と共に報道された。
そんななかテロ組織の人質の解放の仕方に関して、さらなる批判が高まっている。ベルゲルさんは前回の女性兵士同様、ハマスによる『セレモニー』はあったものの比較的スムーズに受け渡しが進んだが、イスラム聖戦により監禁されていたモーゼスさんとイェフドさんに関しては、聖戦と赤十字の車両間に距離があり多くのガザ市民が押し寄せた人込みをかき分けるように歩かされた(上の動画)。
これに対してイスラエルは仲介国に抗議すると同時に、110人のテロリスト・囚人釈放を数時間延期させる措置を取った。その後仲介国を通じて「人質たちの安全な解放に関する理解が得られた」とし、イスラエルは殺害者33名を含む釈放を再開させた。またこの日には3人のイスラエル人のほか、キブツで働いていた5人のタイ人被害者も解放され、イスラエルの病院で治療を受けている。(1/30)

◯ 内政

【超正統派政党、休戦第2段階の履行を支持】(Y,P)

ネタニヤフ首相を長年支えてきている、超正統派(右)と正統派(左)の政党。
(maariv.co.il より)

休戦の第2段階に向けての交渉開始を来週に控える中、超正統派の2党の指導者たちが次々と第2段階に入り全ての人質の帰還を実現させるべきだと発言した。シャスのデリ党首は同党議員の集まりで「これは重い代償を伴う簡単ではない取り引きだが、人命救助は行わなければならない」と話し、他の党首・主要議員たちも「囚われ者を救う以上に重要な戒めはない」という有名なユダヤ教の言葉を引用しながら、第2段階へと進むべきとの姿勢を一様に示した。
極右・正統派のスモトリッチ財務相は、第1段階終了後に戦闘を再開しなければベングビル氏のように連立脱退するとしており、正統派と超正統派が真逆のスタンスを取る形になる。
これにはウィトコフ中東特使が実務者トップとなり、米トランプ政権が「休戦の第2段階完了」を重要な使命としており米はイスラエルに、カタールはハマスに対して合意に進むよう強く働き掛けている、という国際的な背景もある。(1/28)

◯ 国際情勢

【トランプ大統領:「イランとは外交的解決。ガザ市民を隣国に移住」】(Y,P,H)
24日に米トランプ大統領は「イスラエルによる攻撃なしにイラン問題を解決できればそれが良い」と発言、イラン問題について外交的解決が好ましいとの立場を示した。またイスラエルによるイラン攻撃を支持するかという質問には、「それには答えない」とノーコメント。
前バイデン政権時に同氏は数回にわたり「イスラエルのイラン攻撃をバイデン氏は許可しない」と非難、イスラエル内ではトランプ氏就任により米の全面的支持でイラン攻撃ができるとの声もあったが、それに対して慎重な姿勢を示した形になる。
また翌日のヨルダン国王との電話会談後、メディアに対して「ガザはカオスでほとんどが瓦礫。住宅をアラブ諸国内に建築し、(応急的または長期的に)そこで平和に暮らすのがいい」と発言。国王に対してはすでに受け入れ要請をしており、エジプトのシシ大統領に対しても同様の話を行うとした。
イスラエルの極右閣僚たちは歓迎する一方、ハマス報道官は「イスラエル極右との危険な宣言。受け入れるパレスチナ人は1人もいない」と反発。関係維持のため、アラブ諸国からは真っ向から反対する公式声明は出ていないがアラブ世界はこの発言を重く見、撤回するよう外交ルートを通じて米に働き掛けている。(1/24-26)


【UNRWAの活動停止期限が迫る】(Y,P)

エルサレムにあるUNRWA事務所
(reuters.com より)

国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の国内活動を禁じる法律の施行日が30日に迫るなか、ダノン国連大使が改めてイスラエル政府はUNRWAとの全ての関係を断つと発表した。「軽はずみや性急さをもって下された決定ではなく、必要な措置」と説明したダノン氏。
国連人道問題調整事務所のトップが近くイスラエルを訪問、今後の人道支援について協議する予定で、イスラエル側は活動の一部をこの機関に任せたいもよう。UNRWA側はこの日の国連安保理で改めて「UNRWAの代わりはなく、悲劇的状況になる」と主張したものの、米国連大使はUNICEF・WHO・国連世界食糧計画なども活動しているとし、「UNRWAが唯一の支援手段だったことはない」と回答している。
UNRWA職員の中から10/7の虐殺への関与者が居たことや、UNRWA職員の10%がテロ組織と何らかの関係があるとの調査結果から、イスラエルではUNRWAの国内活動停止を求める声が強まり、去年10月に法案が成立していた。(1/28)

[情報源略号表]

 文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
 P=エルサレム・ポスト  https://www.jpost.com/(英語)
 H=ハアレツ       http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
 Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)

[転載・引用・再配布について]

 教会活動等の非営利目的ならばOKです。ユダヤ人および
 各宗教教派に批判的な文脈での引用はしないで下さい。






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