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ISRAEL NOW!1月10日~16日のニュース【ついに交渉締結。日曜日から休戦期間、33人の人質解放へ】
ー ISRAEL NOW!ー
「エルサレムの平和のために祈れ」 詩 122
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◯ 治安
【国防軍が5回目のフーシ派攻撃を実施】(Y,P,H)
米英を中心としたフーシ派に対する空爆が行われた直後に、イスラエル空軍も戦闘機・給油機・偵察機など20機以上を用い、フーシ派拠点へと5回目の攻撃を実施した。ここ2週間でフーシ派は、イスラエルに対して弾道ミサイル4発・無人攻撃機4機を発射していたため、それへの報復措置になる。
軍報道官によると攻撃目標はホデイダとラス・イッサという2つの港と、首都サナア近郊ヒズヤズにある発電所。カッツ防衛相は最高指導者フーシをはじめとした指導層に対し「お前たちにも手を伸ばすだろう」と殺害をほのめかして警告したが、攻撃の形はテロのために使用されているインフラ攻撃という、過去4度と同じものになっている。
現段階では弾道ミサイルよりも無人攻撃機迎撃の方が難易度が高く、この1年間にイスラエルは無人攻撃機に対する防衛費として340億円以上を投入している。(1/10)
【ナハル・オズでの戦闘、2人の死者はイスラエル軍によるもの】(Y,P,H)
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10/7にナハル・オズのキブツで死亡した、ディクラ・アラバさん(51)と息子のトメルさん(17)についての軍の調査結果が発表され、2人(画像)はテロリストではなくイスラエル側の発砲により死亡した可能性が高いと判明した。
テロリストたちはナハル・オズに侵入すると、ディクラさんとパートナーであるノアム・エリヤキムさん(同日に死亡)の自宅に入り家族を拘束、ディクラさんのスマホから怯える一家の様子を生配信した(画像)。その後トメルさんは命令を受けて近隣住宅を回りノックし、外に出て投降するよう呼び掛けさせられていたが、テロリストが目を離したすきに逃亡し隠れていたところ、銃撃を受け死亡した。
当初はテロリストによる発砲と思われていたが、兵士たちへの事情聴取などから、戦闘中だった国境警備隊の特殊部隊の誤射だった可能性が高いことが分かった。母のディクラさんはその後、車に乗せられガザに拉致されそうになったところを国境警備隊が発見し発砲したところ、後部座席に座っていたディクラさんに銃弾が当たり死亡した。
このようなイスラエル側の発砲・砲撃による死亡が疑われている例はまだあり、調査が進められている。(1/10)
【休戦前最後の週、9人の兵士がガザ北部で犠牲に】(Y,P,H)
11日にはガザ北部のベイト・ハヌンでハマスにより設置された爆破装置により、ナハル旅団の19~21歳の兵士3人と軍用輸送トラック運転手の37歳の兵士1人が死亡した。
ベイト・ハヌンでは12月から軍事作戦が行われており、爆破装置は作戦を指揮する前線司令部を標的としたものと考えられている。他にも重傷者2人を含む6人が負傷。
13日には同じくベイト・ハヌンでの戦闘中に大規模な爆発が発生し、ナハル旅団のコマンド部隊の兵士19~23歳の兵士5人が死亡、8人が重傷を負った。爆破による建物の倒壊によって死傷者が発生したのだが、爆破についてはテロリストによる対戦車ミサイルや爆破装置のほか、国防軍の武器に引火したことによる可能性もあり軍が調査を行っている。(1/11,13)
【24時間で3度、フーシ派からの攻撃】(Y,P,H)
14日未明にフーシ派からの弾道ミサイルが飛来し、テルアビブを中心としたダン地区全体からユダ山地にかけての約70kmの広範囲でサイレンが鳴った。
国防軍報道官はミサイル迎撃を発表したが、夜が明けて朝になるとエルサレムの近郊数か所でミサイルの(迎撃された後の)大きな破片が住宅地に落ちたことにより物損被害が出たことが、報告されている。ミサイルによる直接的な人的被害は出ておらず、怪我人はシェルターに避難する途中で負傷した11人のみ。
フーシ派は「『パレスチナII』という極超音速ミサイルを、テルアビブの防衛省に向けて発射した」と犯行声明を出している。13日の朝には同派により発射された無人攻撃機が南部に飛来したが、攻撃ヘリが迎撃。夜にはミサイルが飛来し、領空外で迎撃されたもののヨルダン渓谷や北部・西岸地区でサイレンが鳴るなど、この24時間でフーシ派の攻撃が3度あった。(1/13-14)
【ついに交渉締結。日曜日から休戦期間、33人の人質解放へ】(Y,P,H)
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(https://www.israelhayom.co.il/ より)
10日頃から人質解放・休戦交渉にブレークスルーの兆しが見え始め、ついに15日カタール外相と米バイデン大統領が記者会見を次々と行い、イスラエルとハマスが6週間の休戦案に合意したと発表した。
13日にはすでに42日間の第1段階の休戦案の概要が報道され、兵士を含む女性や50歳以上の男性、そして病人や負傷者に該当する人質33人が解放される(生死などは不明)ことが判明。その見返りでイスラエルは(殺人などで)終身刑で服役中の囚人を含む1300人のテロリストを釈放。
第1段階の終盤には、ラファのフィラデルフィ回廊から国防軍は撤退することに。その後の第2段階は、さらなる人質解放とそれに伴う数百人のテロリストが釈放され、ガザ内からのさらなる撤退が予定されているが、第2段階については第1段階中に交渉が行われる予定。
イスラエルはこれまで交渉を進める条件として、「解放が予定される33人の人質に関する安否確認」を求めていたがこれについては妥協し、生存者としてか無言での帰宅かが直前まで分からないというハマス側の条件を飲んだことになる。またハマスはイスラエルが指定した病人・負傷者を優先的に解放することを認めるかわりに、イスラエルはより多くのテロリスト釈放を約束するなど、互いが譲歩したポイントについても報道されていた。
13日夜の段階でイスラエル側の関係者は、「24時間以内にハマスからの、OKとの最終返答があるだろう」と話していた。翌14日には米ブリンケン国務長官が「交渉は合意間際で、ハマスからの回答を待っている状況」とコメント。
ハマスからの回答が予想以上に遅れていることを受け、カタールを中心とした仲介国が一刻も早く二つ返事をするよう、圧力を掛けていることが報じられた。またハマス側に遅れ・返答の保留が発生している最大の要因は、ヤヒヤ・シンワルの弟であり現ガザ・ハマス指導者ムハンマド・シンワルの最終決定を待っているためとの報道があった。
そして翌15日夜にカタール・アメリカという仲介国、イスラエルはヘルツェル大統領が記者会見を行い、合意を発表。ハマス側も公式声明で交渉案に合意したことを認め、19日の12:15から休戦期間に入ることが決まった。ネタニヤフ首相は第1段階中に第2段階に関する合意がない場合には戦闘を再開する姿勢を示し続けてきたが、バイデン氏は会見で「交渉が継続される間は休戦が守られることになる」と明言している。
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またこの交渉締結の立役者であるトランプ次期大統領は、バイデン氏より2時間近くも前に交渉成立を自身のSNSで発表、同時に「ガザが今後、テロリストにとっての保護地域に戻ることはない」とコメントしている。(1/13-15)
◯ 内政
【ベングビル氏、連立離脱をちらつかせ交渉締結に反対】(Y,P,H)
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人質解放・休戦交渉締結の機運が高まるなか、極右のベングビル国家治安相が同案を「ハマスへの降伏」と猛反対の姿勢を示している。同氏はネタニヤフ首相が交渉案を政府として了承した場合、連立離脱を示唆。そして自身の党だけでは過半数割れしないため同じ極右・宗教政党のスモトリッチ財務相にも、同様に連立離脱を掲げて反対するよう呼び掛けた。
同時にベングビル氏は「この1年間幾度となく政治的な力を用いて交渉締結を阻止してきた」と発言。これはイスラエルから交渉を決裂させたことは1度もないというネタニヤフ氏の主張とは反対のもの。
ネタニヤフ氏は連立維持のため、グリーンラインの防衛強化や入植地拡大などの約束を両氏にし、締結への反対を取りやめるよう説得しているもよう。(1/14)
【交渉案了承のための閣議が、一時延期される】(Y,P)
人質解放・休戦案の締結が発表された15日夜の段階では、翌16日に安全保障内閣の閣議で同案が了承される見込みだったが、釈放が予定されている110人の殺害を犯したテロリストの解放について論争が両者間で表面化。極右閣僚の反対というイスラエル国内での問題もあったが、16日夜の段階では前者については解決したとのことで決議は1日遅れの17日に行われることになった。
しかしその数時間後に各メディアは、内閣については予定通り17日に行われるものの、閣議は安息日明けの18日夜に延期となり、その後に必要な最高裁への囚人釈放の請願などに掛かる時間を考慮すると、最初の人質解放が日曜日ではなく月曜日にずれ込む可能性が出てきた、と報じた。
この閣議延期の要因には、ベングビル国家治安相の党は休戦した際には連立を脱退し戦闘再開までの下野を発表しており、同じく極右のスモトリッチ財務相の宗教政党も同様の手段に出た際には戦闘再開をしなければ与党が過半数割れするため、自身の政権維持のためネタニヤフ首相がスモトリッチ氏を説得するための時間が必要であること、そして(ユダヤ教には人命は安息日より重要との教えがあり、人質解放は文字通り人命に関してだが)閣議を安息日の間に行うことに両氏をはじめ正統派や超正統派の閣僚が反対していることなどがある。
米政府はこのイスラエル側の状況に驚きと怒りを感じて、「土壇場での交渉決裂を起こしかねない」とイスラエルを警告。閣議を土曜夜に(安息日のために)延期することには人質の家族や世論からも非難の声が上がったため、17日朝に当初の予定通り同日午後に行われるとの発表があった。(1/16-17)
◯ 国際情勢
【バイデン大統領がネタニヤフ首相と電話会談】(Y,P,H)
トランプ次期大統領就任前の締結に向け人質解放・休戦交渉が進展しているなか、ネタニヤフ首相とバイデン大統領が電話会談を行った。1時間ほどの会談でバイデン氏はここ数か月の(特にシリアなどの)中東の変化により交渉の前進が可能になったとし、人質解放・ガザへの人道支援のため1日も早い休戦が必要であると強調。ネタニヤフ氏はアメリカ政府、そしてバイデン氏とトランプ次期大統領との協力関係に謝意を述べた。
同日に次期副大統領になるバンス上院議員は米メディアに対し、「バイデン氏の任期最終日、またはその前日にでも交渉が締結するのでは」との見通しを示している。現在交渉締結に向けてアメリカでは、現政権と次期政権による「100%の協力関係」が見られており、この裏には「バイデン氏が休戦協定に著名、トランプ氏が人質を迎え入れる」というWin-Winの構図があるとイスラエルメディアは報じている。(1/12)
【シリアのドゥルーズ派のため、イスラエルの同派リーダーが立ち上がる】(Y)
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IS・アルカイダと過去に協力関係だったシャラア氏が実質的指導者となったことでシリアの少数派が将来を不安視している。
特に南部を中心に人口の約3%に当たる70万のドゥルーズ派では、自らが多数派のスワイダ県知事に同派からの選出を要請したが暫定政府が拒否、その代わり過去にあった大規模なドゥルーズ派弾圧の首謀者だった人物が任命されたことを受け、宗教弾圧への恐れが広がっている。それを受けてイスラエルのドゥルーズ派指導者モワファク・タリフ氏が渡米し、国際社会に対して保護を呼び掛けた。
国連のグテーレス事務総長や米上下議会の代表、現・次期ホワイトハウスの高官たちと面会し、シリア・レバノンのドゥルーズ派の厳しい現状について語り、少数派保護のため働き掛けるよう訴えた。
世界中に約100万人前後いるとされイスラム教から別の宗教となった同派は、シリア・レバノン・イスラエルを中心に共同体があるが、独立した宗教として認知されているのはイスラエルのみ。その他のイスラム教国では異端視されているため、複雑な境遇にある。(1/12)
[情報源略号表]
文末の( )内の記号が情報源です。(掲載日が異なる場合もあり。)
P=エルサレム・ポスト https://www.jpost.com/(英語)
H=ハアレツ http://www.haaretz.com/(英語・ヘブライ語)
Y=イディオット・アハロノット http://www.ynetnews.com/(英語・ヘブライ語)
[転載・引用・再配布について]
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