狂美
俺はワインよりも日本酒の方が好きだ。
助手席の森木は饒舌この上なくワインの素晴らしさを語り始めた。「大体ですね。葡萄言うのは奈良時代に日本に伝来してそこから今日までの歴史があるんですよ!!」
全くこいつは何でこんな無駄な知識を蓄えられえるのに、これらから俺たちが向かう富央県にいる凄腕警官の名前も覚えてないのだか。
俺との温度差に気付かずまだ口が止まっていない。「そう言えば最近、品魔谷県のほうに一際不思議な葡萄があってワインにすると鉄分が豊富で珍味なんですよ。有給休暇使って行こうかな?」
そっと口を挟んだ「いっその事警察辞めてブドウ農家にでもなればいいんじゃないか?それだけ葡萄への愛があればできるだろう」
森木は拗ねて腕を組んで鼻息を荒くしながら窓の外を見ていた。
高速道路の看板にここから先30km渋滞と表記されていた。
それを読んだ俺と森木は全く同じタイミングでため息をついた。
そこから直ぐに渋滞につかまり亀よりも遅くのんびりと進んでいた。
品魔谷県入口の看板を見つけた。警視総監にも渋滞の旨を伝えてるから最悪高速を降りて下道から向かうのも一つの手だ、なんて考えていると森木も看板をみたらしく兎のようにはねながら「先輩、噂をすれば品魔谷県ですよ。この渋滞じゃ仕方ないですよ、下道から行きましょうよ。ちなみに、警視総監にはもう話ついてます。あと、総監から品魔谷の連続失踪事件頼むだそうです。」こういう時の俊敏さと言ったら群を抜いているんだよな。
警視総監も森木がお気に入りだからって甘すぎるだろ、ただの新米だぞ。
しかも、連続失踪事件なんて初めて聞いた、そんなお使いみたいな感覚で事件を依頼するんじゃない。
断る文言を考えていると、俺ジャケットの外ポケットに入っているスマホに事件の電子ファイル送られた事を告げた。
流石に観念した。
確かに森木いうことにも一律ある、ここでブレーキランプの点滅を見続けてもらちが明かないし仕方がないか。
俺たちの車は幸運にも出口のすぐそばだったのでものの数十分で品魔谷県入口に行けた、しかし、品魔谷は日本有数の絶景の名所らしく新幹線も止まるようになってからか都市部はごった返していてこうなると高速の渋滞と大差ない、仕方なく山を超えるルートで車を走らせていた。
山道を少し走ってホテルや農園が見えた。
森木は再度「先輩、この辺に私の言っていたブドウ農園があるんですよ!」神のいたずらか知らないが車の左前のタイヤがパンクした。
けたたましい音を立てて爆発してしまった、俺たちも車内で驚いていた。
車から降りてタイヤを見たがバッチリパンクしていた、釘が落ちていたみたいだ。
この車にはスペアはあるものの工具類は積んでいない困ったものだ。
森木は目を輝かせながら「先輩、後70m先に農園があるんです。協力してもらいましょうよ?」俺ため息をつき「背に腹は代えられないか」ボソッと残し農園に向かって歩き出した。まだ車内にいてシートベルトを付けていた森木はあたふたしながら後を追った。
少し歩いた。周りは山だがいきなり開けた土地出た、ツリーハウスが真ん中鎮座していた。
巨大で樹齢が三桁は越しているだろうスギの木がありそれを囲うように、2階建ての家が寄生するように建っている。
建物の入口にはスロープが設けられている、ガラス自動ドアがあり、2階のバルコニー外側薄い切りにした丸太にワインレッド色で「聖杯」と大々的に書いてある。
森木が追いつたことだし、早速中にお邪魔しよう。
自動ドア開いて建物に入った、どうやら1階は事務所で2階は部屋みたいだ。
客が来た事を知らせるアラーム音が響くが誰も来ない、しばらく待っても来ないため2人で1階を探索し始めた。
1階には事務所、トイレ、テーブルが3台それに事務所は10畳のスペースにフローリングで会議机が2つおいてありノートパソコンが2台それと4つのコーヒーカップあるだけ。
俺は口を開いた「どうやら電気はついているが何やら、人は出払っているみたいだ。」
帰ろうと玄関に近づくと自動ドアの向こうから2人土のついた作業着の男女が来た。
2人の女のほうが俺たちを見るなり「こんにちは、見学希望の方ですか。申し訳ございません。現在は見学のご予約は行っておりません」言われた俺たちはお互いの顔を見合ってしまうくらい訳の分からないことを言われた。
女の隣のガタイの男がしゃがれた声で「あの、どうかなさいましたか?」丁重に質問してくれた。「すみません、車がパンクしてしまいスペアはあったんですが工具がなくて工具をお借り出来たらなと思ったんです」こちらも丁重に聞いた。
男のほうが「うちに腐るほどあるのでお貸ししますよ。それと一人じゃ大変ですから手伝いますよ。」気の利いた提案をしてくれた、断る理由もなく受け入れた。
男が工具を取りに行こうとすると女が「そうだ。お名前言ってなかったですね。私このブドウ農園{聖杯}を運営しています。安武幸来です。今工具取りに行ったのが旦那の安武孝一です。」こちらも答えるのが義理だ「私は刑事の井上です。こっちは森木です。ご協力感謝します。」「そうですか。大変な目にあいましたね。森木さんは車が治るまでこちらで待ちますか?」「ほんとですか!私ここの葡萄に付いてお話聞いてみたかったんです」というわけで俺と孝一さんで車を直し、森木と幸来さんがここに残る事になった。
孝一ガタイがよく俺よりも背丈があるきっとラガーマンだろう、孝一さんの手伝いがあってかあっという間にタイヤ交換が終わり車を農園の前に止めた。
ツリーハウスに戻った、自動ドアに隙間ができた瞬間に森木と幸来さん楽しそうな話し声が家の外に飛び出していった。
中に入るとテーブルを囲んでワインの飲み比べをしていた。
見た感じまだ酔ってはなさそうだからこのまま泊まれる宿を探さないと、革靴つかつか音を立ててテーブルに近づき
「森木!!車も直ったし町に行こうこのままだとお二人にも迷惑だろうし」「いえそんなことないわ、森木さんここのワインすごく気に入ってくれたみたいでよかったわ」「先輩!私ここのワイン買って帰るので止めないでください!買うと言ったら買うんです!」
「ご自由にどうぞ」まったく世話の焼けるやつだ。
森木は幸来さんを連れ事務所にワインの代金を払いに行った。
俺は孝一さんに「うちの部下がすみません、あとこの辺で今からでも泊まれる宿を探しているのですが何処かありませんかね」
孝一さんは少し天井を見つめてハッとして「そうだ、ここから20分くらいの場所に{敷島}ってホテルがありますよ。あそこは4階の露天風呂が町を一望できるので最高ですよ」
相変わらず親切な人だ、親切すぎるくらいだ。「分かりました。行ってみます、本当にご迷惑をおかけし申し訳ないです。」軽く頭を下げた。
後ろから来た満面の笑みの森木が両手にワインを2本持ってきた。「先輩見てください。うらやましいいでしょ?あげませんけどね」「そうか、それは残念だ。さてもう行くぞ。では、孝一さんに幸来さんありがとうございました。」俺たち二人そろって頭を下げた。あちらの夫婦も「気にせずにまたいつでもいらしてください。」
車に戻りスマホで{敷島}と入れてみた。
ヒットした。顧客満足もいいらしく、ここからだいたい3kmくらいのところにあるみたいだ。
助手席の森木はもう既にワインの瓶をだきしめながら眠っていた。「おいおい、酔っ払いのおっさんじゃないんだから」思わず口からこぼれた。
車を走らせて20分くらいでついた、丘の登り切った場所にある
4階建てみたい、外見は古いホテルって感じだ。
外壁は肌色が気持ちくすんだような色だし看板は出ていない確か口コミでも「隠れ家みたいな場所です。」記載されてたな、まぁ今日だけだし何でもいいか。
ホテルの目の前に長方形の駐車場が設けられているが車は俺の車を入れて3台だけだった。8つブロック分けされていて一番右奥にこの場所にそぐわない真っ赤なスポーツカーその隣に黒い四駆その横に俺たちの灰色のセダン。
なんだかクレヨンみたいだな、助手席の森木をたたき起こしホテル入った。
お腹が空いてたまらない俺と早くお酒が飲みたい森木、ホテルの入口自動ドアから入り受付があるが玄関は狭いエレベーターはなくあるのは螺旋階段だけみたいだ。
受付に黒髪の髪の長い男が来た「すみませんお待たせしました。ご予約は済まされていますか?」「えっとそれが」一通り経緯を話した。
ある程度理解してくれたみたいで「今シングルの部屋が二つ空いていますのでそちらお使いください、4階になります。お手数ですが階段でおあがりください。」「ありがとう」受付で435と436の部屋の鍵を受け取り、階段を上がった。このホテルは何処か古臭いだが、それが味になっている事は間違いないだろう階段を1段上がる度に少し前の時代に迷い込んだような感覚に陥る。(気持ち館内で流れている有線の曲も古いものだと思える。)
螺旋階段を犬が自分のしっぽを嚙もうとその場を回るみたいに回りながら登った。
だいぶ階段を上りやっとの思いで着いた、あと数段多かったらきっと目が回っていただろう。
「1階の食事処に1時間後に」「了解しました。」そう言ってお互いとなりの部屋に入った。
部屋は、ビジネスホテルと大差ない。
入口からは見えない場所にある白いシングルベット、狭く年季が感じられるユニットバス、ベットの近くにパソコンが置けるくらいのテーブル、真っ黒な灰皿ここまではビジネスホテルだが、ベットの反対側に窓の外に露天風呂になってるこれはうれしい。
さて今日もずっとすわりっぱなしだった、鞄を机に放り投げポケットクラシックなタバコを取り出しライターで火を付けてテーブルに腰かけ、深呼吸みたいに深く吸って吐き出した。
煙草の煙が天井に狼煙のように上がっていく、それを何も考えずに追っていた。
いきなりスマホがなった。
現実に引き戻された、画面見ると品魔谷県警の失踪事件担当の論田から事件の詳細な日時をまとめた資料だった。
メールの最後に「我々品魔谷県警も協力する事があるなら何度も言ってください。」ありがたいことだ、丁重にメールを返した気がついたら煙草は3本目だ。
しかも、約束の時間まで30分を切っていた。シャワーに入って私服に着替え、鍵を閉め急いで階段を駆け下りた。
1階の食事処「田端」ここも昔の喫茶店を彷彿させる、昔でいうところのハイカラな場所だ。カウンターとテーブル席が2席ずつだけ、カウンターに1人男が酒をたしなんでいた。
定員は男女2人、その一番奥のテーブル席に腕を組んで待っている森木の姿が見えた。俺は「申し訳ありません」小声で頭を下げながら席についた。「先輩遅いですよ、大人なんだから5分前にはついてください。私もう頼んだので先輩も頼んでください。」メニューを俺の前にファサと渡してきた。
申し訳ない顔をしながらメニューを見た、カレーライス、ハンバーグ、ペペロンチーノ、ナポリタン,,,定員を呼び「ナポリタンとアイスコーヒーブラック」頼んだ。
しかし、短髪黒髪のこの定員は凄く愛想が悪いさっきの注文とるのも大分やけくそだったな。かなり険悪な雰囲気だった、名札には「城崎」。
森木から切り出された。「先輩、ちょっとした推理ゲームしませんか?」「いいよ、俺にかてるかな?」「問題はこの店の定員2人が付き合っているかです。もちろん違うなら理由も言ってくださいよ。買ったほうがここの会計持つので」「よし、やろう。先行、どうぞ」
森木は笑みを浮かべながら推理を話した。
「まずあの二人ピリついているのは付き合っていて喧嘩したあとなんじゃないか。
それに二人共制服は同じでも、高級な革靴をお揃いは付き合ってないと無いでしょう。
それに決定的なのは女の子方がずっと男の子方を見つめているからです。どうですか?」
「的を射ているな。だけどな、あの二人は本当に仲が悪いなぜなら、男の子が注文を取って厨房の女の子方に行っても出て来やしない、それに二人共プライドが高くあまり群れるタイプじゃないからだ。どうだ?」
「いや、それは違いますよ。お互いに謝るタイミングを見計らっているのかもしれないじゃないですか?」
「そうかもな。ついでに彼らが都会生まれってのも補足しておくか、二人共標準語しか話さないさっきカウンターの男には無理矢理方言を使って話したがぎこちなかった。それに男の履いている。革靴と女の革靴は違うブランドの靴だ。」
淡々とお互いの推理の攻防をしていると、女の子店員が来て料理を運んでくれていた。
「ハンバーグとナポリタンです。飲み物は食後に持ってきます。」けだるそうだ。
この時俺はこのまま森木との推理ゲームが終わらない事を悟り思い切ってみた。
「なぁ失礼だとは思うが、君たちは付き合っているのかい?」
付き合っているというワードが出た時から女の子定員は眉間にしわが寄ってむすっとし始めた。「いえ、違いますよ。あんな奴一番嫌いなタイプなので。他にご注文は?」「ないよ。すまないね。」
女店員ブロンドヘアーを揺らしながら厨房に戻っていった。名札には「白」
森木がすぐさま口を開いた「先輩反則ですよ。ここは先輩が払ってくださいよ。」「はいよ、そうだ。話がかわるが明日品魔谷県警に行くぞ。データはもらったが一応担当の話も聞きたい」「了解です。一先ず、食べましょう」それもそうだ。
森木のある鉄板上に今も肉汁を跳ね飛ばしているハンバーグ、俺の前にあるベーコン、ピーマンとパスタ。極めつけには、ケチャップのかかった食欲を誘う姿のナポリタン食べないわけにはいかない。美味しさをかみしめながら食べきった。
食後の珈琲を飲んでいた、カウンターの男が店のテレビをつけ野球観戦を始めた。
声を出さずジッと画面を見つめていた、表情は和らいでいた。
森木はスッと立ち上がって「さぁ先輩行きますよ。明日も仕事ですよ」「そうだな、行こう」ここの会計は反則負けで俺が払った。男の店員が会計をしてくれた、相変わらず気だるそうだ。
彼の服から微かに香水のにおいがした。
シトラス系統のいい匂いだ。
長い螺旋階段を登り明日の朝9時に車の前と告げ別れた。
俺は部屋に入ってスマホでエディットピアフを流し椅子に腰掛け、クラシックな煙草を吸い少しだけ事件資料をパソコンでみた。{品魔谷連続失踪事件}確認するだけでも4人の誘拐、市内の怪しい場所を洗ったが成果は無く、この町の権力者である可能性が高い。
4人の共通点は幾つかある、1つ年齢20代である、2つ街外れの監視カメラのない所でさらわれている最後に現場周辺でトラックとスポーツカーが頻繫に目撃されている。
車両にはナンバープレートは無く、監視カメラにはほとんど写って無い。
なので、犯人は少なくともこの町から出ていないことは確かだ。
煙草の灰を落としていなかった灰が資料に落ちた。俺は慌てて灰を取り除いた。
これは集中出来てない証拠だ。
資料の{聖杯}と書いてあるところが白くなっていたが俺はこの時は気がつかない。
気分転換で露天風呂に入った。
露天風呂から見える町は、あまり街灯もなく帰って気分がよいしかし、こんな平和な街で誰が誘拐なんかするのだろうか。
こんなこと考えるとのぼせてしまう早々に切り上げ、夜も更けてきたことだしベッドに入った。このベッド安物だろうが、まるで水面に倒れこむみたいだった、段々と沈んでいく光も届かない深い場所に。
スマホのアラーム音がなり始めた。
せっかくの深海にいたのに餌に食いついた魚のように現実という名の漁師につり上げらえてしまった。
目を擦りスマホを見るともう朝の7時だ、さて頑張って今日も捜査しよう。
ふらつきながら椅子に座りクラシックな煙草吸い、シャワーを浴びて、髭を剃り、スーツを着た。
腕時計を見ると8時45分を示している、少し早いが車で待っているか。
部屋から出る鍵を閉め受付に鍵を渡し、駐車場で珈琲を買い車でのんびりリクライニングして待った。
少ししてまだ9時にはなっていないが森木が現れた。
助手席のドアを開けて一言「早いですね」「まず、おはようだろ」「そ、そうですね。おはようございます。」「おう」あいつは結構驚いていたみたいだ。
さて品魔谷県警に向かうかここからだと市内に有るから6kmある、朝も早いゆっくり車を走らせた。走り始めは自然を感じながら走っていたが、木々が少なくなり少し経てば住宅街がズラリと立ち並んだ。
住宅街外れに3軒分の敷地に品魔谷警察署、4階建て町一番大きい建物のであろう。
警察署は古臭くてつるが壁にくっついている、すぐ隣に駐車場がある。
駐車場は上から見て上下に区切られている。
奥には好通整備の車、郵送車が1台ずつ止まっていて、手前には3台のパトカーが並んでいた。俺は駐車場に止めるときふと、警察署の外壁に目が留まった「特殊詐欺撲滅」「少年犯罪防止キャンペーン」垂れ幕がありどこの警察も同じなのかと安心した。
車を停めて颯爽と警察署に入った。
受付で2階に案内された、古臭い階段を上がると目の前に扉の横に「連続失踪事件対策本部」書かれた紙が貼られている。
扉を開けて中に入ると至って普通の会議室に刑事が3人すし詰め状態で資料をにらんでいた。
相当集中しているのか執着しているのか俺達が入った事に気づかない。
軽く咳をしたら、短髪の刑事が顔を上げ、椅子から飛び起き「こんにちは。お疲れ様です。品魔谷県警失踪事件担当主任、論田 彗です。ご足労恐縮です。」元気よく話し始めた。
俺の隣にいた森木が声を上げた。「ろんろんだ。久しぶりじゃん。」如何やら知り合いみたいだ。「今回の事件の捜査は難航しているみたいですね」ボソッと言った。「そうですね。誘拐犯の意図がつかめないというか目的もわからなくて…」「そうか。でもな、休むのも仕事だぞ。」「はい」早速資料を見してもらった。
この町は都会に比べると驚くほど監視カメラが少ないそれに住人も高齢化していてまともな証言が取れていない。
これでは犯人の後取もつかめないし犯人の正確な人数もわからない、どうやって犯人をつきとめよう。
森木が面白い事を言い出した。「これ3人で同じ事をするんじゃなくてみんなで違うことしましょう。」「はぁ?何が言いたいんだ。」「だから、私が1人目の被害者がいた場所、町はずれの美容院に行きます、先輩は2番被害者がいた、街の反対側の居酒屋に行ってください。ろんろんが3番目被害者がいた捜査するこれでどうですか?時間は有限ですよ」「そ、それもそうだな」「確かに皆さんで同じ人を追うより効率的ですね。」
森木はどこか誇らしげに腕を組んでいた。確かに森木の言う通りだ。
森木は更に話し始めた。
「私、犯人が女性なら美容院に行けば話聞けると思うんですよね。先輩たちどうします?」やけにうまく段取りが出来ているな。
俺は少し天井を見て考えて口を開いた。
「俺は犯人が男性だとしたら居酒屋で一緒に酒飲んで酒の勢いでついつい話すと思うだよな」
論田は俺たちの話を聞いてからそっと話した。
「そうですね。私は、男女が話せる場と言ったらこの辺に新しくできた大型のカフェがあるのでそこを張ってみます」「よしそれじゃあ各自明日の朝一時報告だ。この場所に9時に集合だ。」「了解です。」「はい」
それぞれ散り散りに町に出向いた。
俺は夕方になってから居酒屋に入り土方の初老の男性と仲良くなった。
その人は事件にはさほど詳しくないが面白い事を知っていた。「お前さんよそ者だから知らないと思うがこの町の有権者は大体農家だ。
最近だとブドウ農家と米農家ずっといがみ合っていたらしい。」
「らしいというと和解でもしたのか?」
「どうやら、米農家の木本さん娘さんあの事件の2番目の被害者で米より娘のほうが大切だからってみんなクビにして夜な夜な娘を探してんだと、だが、最近その両親も見なくなったな」
「となると両親も連れ去らわれたのか?」
「俺も警察じゃないから分からないがこんなにわかりやすいのに警察はブドウ農家に事情聴取をしやしない」
「そうか、いったい警察は何を考えているんだろうな」
「なぁ、あいつらは市民を守るのが仕事なのに全く」この人の言う通りだ。
いくら農家でも競争社会だ、日本酒とワインが同じ土地にいて喧嘩にならない訳がない。
何かがおかしいな、これだけだと何も掴めてないのと同じだ。
もっと探らないと。居酒屋の客に片端から声をかけて飲んだがあまり結果は良くなかった。しかし、見覚えのある顔がいた城崎だ。ホテルのウエイトレスをしていた、なにやら2人のガタイのブロンド男性外人と飲みに来たみたいだ。片方はロン毛で瞳の青い男もう一人は、坊主頭の瞳が青い男。
兄弟のようだ顔は瓜二つで、城崎とは仲睦まじい様子だ。
ここで探りを入れるため城崎の知り合いのふりでもしてみるかいかんせ、席が遠いしかも、久しぶりの酒で酔いの回るのが早い。
気が付くとホテルの自室の床に突っ伏していた。
体中が痛い、取り敢えずシャワーを浴び着替えて煙草を手にバルコニーでボーっと街をながめながら吸った。
俺の目に写るこの町は、犯罪の対極にいるような気がする。
人は優しい景色も綺麗で心を浄化してくれるような場所だ。
皮肉なことに人間が暮らしていることで犯罪が消える訳がない。
風が吹いた、バルコニーのすぐわきに咲いてあるジンチョウゲの匂いが顔の前を通り過ぎていく。
ジンチョウゲは香水のような匂いで確かに花言葉は「栄光」「勝利」だった気がする、ともかく春を知らせるいい花だ。
吸い込む煙草の煙が熱くなった。思わずむせた、腕時計に目を向ける。
8時24分を過ぎたとこだった。急いで煙草を消し、車に向かった。
キーを差しエンジンをかけた時助手席側の窓を叩いてくる人がいた、やっときたかと顔を覗くと眠そうな表情の森木が立っていた。
森木はドアを開け「す、すいません。遅くなりました。」「おう、シートベルト付けろ」
ホテルから品魔谷県警に向かった。向かうときに森木は面白い話を聞いたと意気揚々と誇らしげに胸を張って腕を組んでいた。鼻が伸びすぎてフロントガラスを突き破りそうだ。
県警について昨日の会議室に向かった。
階段を上り目の前の会議室に入った、昨日は三人いた。
論田の部下が見当たらない、論田が机に突っ伏している。
「おい、論田何があった?」「いや、特には」「噓が下手だな。部下はどうした」
「女性の才木と六崎は体調不良です。
男性の紀元は連絡がつきません。それにさっき警視長から捜査を打ち切ると言われました。」「はぁ?どういうことだ。俺が話をつける」「警視長なら今日はもうお帰りになりました。」
今更だが、蛇がいる沼に片足突っ込んだ事に気が付いた。
だが、今は片足どころか腰まで浸かっているこのまま引き下がれないいっその事潜ってみるか。
俺達はいなくなった部下の家に向かった。部下の名前は紀元一郎34歳独身。
町のはずれのアパート、自分の給料を心配になるくらい歴史を感じるアパートだった。
偶然大家さんに出くわした、大家さんに紀元の行方を聞くが特にはなかったようだ。
ただ昨日の夜遅くに外国人2人が紀元に会いに来ていたらしい、そう言えばこの前居酒屋に城崎と合っていた外国人がいた気がするな。
紀元の部屋に入ったが、荒らされた形跡は無いだが、どこを探しても貴重品が無い。連れ去った2人が持って行ったとしか考えられない
次に才木久美子29歳独身。
才木は電話をかけた所病院で診察を受けはやり風邪をひいいてしまい自宅にいるそうだ。
確認がてら才木の住んでいるマンションに行き玄関で少し話した。見るからに顔が白く瞳はうるんでいた。マスクをしていたが咳が短いスパンで物凄く悪そうだ。何かあったら連絡するように伝え車に戻った。
さて、ここまで来てこの先を考えなくては、先に外国人を捕まえるか?それだと余りにも不毛な気がするな。
そうだ。城崎あいつが一番この辺でよく見かけるな、今思えば行く先々に奴の姿を確認する。
だが、打ち切られたこの捜査令状が取れるわけもない。
城崎はボンボンだ、だがなんで奴がここにいるんだ?
働かなくても暮らせる財力はあるはずだ、確かにあいつには前科があったはず、確か「婦女暴行」だったか。少しゆすってみるか。車に戻るときに森木にこれからの予定を話す
渋々了解してくれた、論田にも同じ話をした。
三人で城崎に話をする為にホテル「敷島」に向かった。食事処「田端」に奴はいた。
白の姿もあった「少し城崎を借りる」とだけいい城崎を連れてホテル裏の階段で話していた。城崎は明らかに警察を好まない態度。
手いじりが止まらない、ジャブ程度の質問を投げかけた。
「なぁ、城崎何でここで働いているんだ?」「そりゃこの町のすばらしさに心打照れて少しでも貢献できないかと…」
本当にこいつ舌は4枚くらいあるなと思うくらい口が上手い。
珍しく森木が怒鳴った「いい加減本当の話しなさいよ」顔を真っ赤に怒鳴る森木、すかさず論田が追い打ちをかける「君と仲のいい外国人は今どこかな?最近よく一緒にいるよね?兄弟なのか?」笑みを浮かべるが目は笑っていない論田は恐ろしい。
さすがの城崎も諦めてことの経緯を話し始めた。
「俺はあまりかかわってないから知らないけど、あの外国人が誘拐犯だ。この前居酒屋で自慢げに語ってた。」
「そんな今言っても噓くさいな」
「本当だって、その時次の標的も決めたって話してた。」
「誰を襲うって言ってたんだ?」
「紀元とかいう警察だ。あんたらの仲間だろでも、俺はその日はここで働いていた。監視カメラで確認すればいいさ」
「そうか、最後に、外国人の名前とか教えてくれるか?」
「兄のサニードルチェ弟のサニーガルチャ髪が長いのが弟だ。年齢は分からないが、大体24、5歳だ。」
「分かった。情報ありがとう、でも、夜道には気を付けたほうがいいぞ」少し脅して去った。
森木がすぐ飛んできた「先輩、何てこといっているんですか?録音とかされていたらどうすりつもりです?」キャンキャン吠える。
「確かに言い方は良くなかった、だがな、あいつは前科持ちであんだけ口がうまいやつだ。どこまでが真実かわからない」「そうですけど…」
論田が割り込んでくる「私もそう思います。彼のさっきの話も作り話みたいなところはあったんでね。でも紀元の話は真実味がありましたね。」
「ろんろんはそうやって甘やかしすぎなんだよ、上司でもダメな所は指摘しないと」そんな終わらない話を永遠していた。
ホテルの駐車場で論田を見送り俺達は部屋に戻った。
部屋に入るときに森木忠告しておいた。「何かあってもいいように携帯は常に持っておけ」あいつは真剣な表情で頷いた。部屋に入ってすぐ隠しカメラを探したがなさそうだ。一先ず、一服して色々考えた。
城崎の話の信憑性やサニー兄弟が黒幕なのか?だが、人をさらう理由が無い。
一体何が目的なんだ。足を組み頭を働かせた。変な結論に至った。
そう言えばあのワイン何で変な味なんだろうか?製造に化学薬品を使ってるのか、調べたがそういうのはなかったな、問題のない薬剤しかなかった。資料の{聖杯}の文字が灰で白くなっている。
サニー兄弟は確かブドウ農園で働いていたな、明日はブドウ農園に行ってみよう。
そこからはいつもどうり何事もなく朝を迎えた。
9時になり車で待っていると森木が周りを警戒しながら車に乗り込んだ。「お疲れ様です。」「おはよう、そんなに警戒しなくてもいいんじゃないか?」「いえ、何事も未然に防ぐのがいいですから」「確かに一理あるな」
酒に酔うのも未然に防いで欲しいな。早速ブドウ農家に向かった。
建物についたが、電気も何も点いていない、この時間だと働いてると思ったんだがな。
とりあえず入ってみるか、建物に入ると塩素臭い、一階のドア付近で鼻をつまみたくなるくらい匂う。
2階からせき込む音がする森木にアイコンタクトをして、階段を上り夫婦の部屋に向かった。部屋のドアには鍵がかかっていた。
ドアを蹴って壊し、中に入ると窓はガムテープで外から止められていた。夫婦はベッドの上で衰弱していた。急いで2人を外に出した。
旦那の孝一さんから「ま、だ、従業員が」かすかだが確かにそう言っていた。もう一度戻り
階段上がって目の前の部屋にドアを壊して入り床に倒れている2人を確認したが既に脈はなかった。
直ぐに論田を呼び現在の状況を共有した。
安武夫婦はかなり動揺しており話は聞けなかった。
森木から話があるそうだ。「先輩にろんろん聞いてください。
この部屋おかしいですよ、まず鍵は内側から機械制御で閉じられていた。
それに比べ窓は外からガムテープで閉じられていたっておかしくないですか?
この建物スマートハウスですよ、大体の機械で制御できるのに何でそこだけ手動なんですかね」
「確かにそれは変だな、それに、さっきエアコンを調べたら熱交換機の隙間に変色したビニールのカップが見つかった。2つあるエアコンどちらにもだ。
犯人は4人を殺そうとしたのか?だが、夫婦は生き残った。」
「そうですね。となると、次狙われるのは夫婦じゃないですか?殺し損ねたんですから。」「そうだな。論田と地元の刑事連れて病院に行って夫婦の病室を警護してくれ、森木はここで部屋をくまなく探せ、俺は会いに行かなきゃいけないやつがいる。」
「了解です。すぐ病院に向かいます。」3手に別れた。
車でホテル「敷島」に向かい城崎をホテル裏に呼び出すだが、待てど暮らせど奴は来ないしびれを切らして受付の藪木に話をした、藪木も朝から部屋から出てないと話していた。
藪木の案内で城崎の部屋に向かった。
部屋のドアに手をかけた、鍵はかかっていなかった。
嫌な予感がしたが後には引けない腹を括って、部屋に入った。
部屋の真ん中に口から泡を吹いている城崎が横たわっている。
奴の目の前にあるPCの画面には忌楽園の絵画が表示されていた、真ん中にブドウの木があり木のわきにはアイムとイム、枝の間から顔を覗かせる蛇が描かれている。
城崎は手に睡眠薬の瓶を見切り占めていた。
自殺かにしてもタイミングが変だな。
ここで城崎が死ぬのはおかしいなと考えていると携帯がなった。
電話に出ると森木だった。
「先輩、サニー兄弟の部屋を探したら枕もとの本から紙が落ちたんです。
その紙に{神は兄の捧げ物を気に入らなかった}と書かれた手書きのメモがありました。これが何を意味しているんですかね?」
「どうやら本の内容がかかわっているみたいたいだ。」
「こっちは城崎が自殺していた。忌楽園の絵画を見ていたみたいだ。」
「なんか不気味ですね。」
「そうだな。こっちを片付けたら食事処{田端}で落ち合おう」「了解です。」
電話切って直ぐに応援を呼び任せた。
この事件一体何がどうなっているんだ?全てにおいて納得がいかない。
食事処「田端」に向かい森木と合流した。「先輩、いきなりなんですけど誘拐の人数っていくつですか?」「紀元含めて6人だ。数がどうかしたのか?」
「本の中で6は完全数とされているんです。
6日間で神が天地創造し、最初の人類を生み出す。
だから、6という数字はとても素晴らしい数字なんです。
この事件、本が凄くかかわっている気がするんです。
サニー兄弟の部屋に落ちてたあの文章も聖典で一番初めの殺人{ケインとルイン}の話の一説なんです。」「何だか宗教染みた事件になったな。」
ここまで一気に事が起きたが、まったくと言っていいほど捜査としての進展は無い。
次々と重要人物は消されている。
誰が犯人何だ?この疑問が頭の中を風船の如く浮かんでいる。
何だか風船は頭上を浮かんでいて手を伸ばせばつかめそうなのに手は空を切る。
きっと何か見落としがあると確信して、俺はもう一度ブドウ農園に向かった。森木と論田は夫婦のいる病院に向かわせた。病院は{聖杯}から7㎞位の街のほうにある。
確か名前は{品魔谷総合病院}だった気がする。
この建物自体に不思議な事は無い、そう言えばこの農家が作ってる不思議な味のワイン、どんなブドウの木がなっているのだろうか?
建物の後ろには端が見えないほど広大な土地、ブドウは周りの木にくっついていく性質があるらしい、そのため土地全体が赤いカーテンがついているみたいに見ている。
土地のちょうど中心に俺はより大きい葉が真っ赤なブドウの木が鎮座していた。
仰々しい見た目だが、匂いは香水みたいな透明感のあるいい匂いを放っている。
虫が花の蜜を取るのがわかる気がする、自ら近寄るというよりかは引き寄せられると表現したほうが正しいと思う。
上ばかり見ていたが足元に目をやると、根元の土は最近変えられたみたいだ。
ある一定の場所だけ土の色が違うのがわかる。
広大な土地を端から端まで地面見て回った5~6ヶ所土の色が異なる所が合った。
とりあえず、安武夫婦の部屋を見返そう、夫婦の部屋は至って普通なんの問題もないそれが引っかかる。
あまりにも綺麗に整過ぎている、普通来客や或いは何かしらの覚悟を決め時しかほこりひとつない程綺麗にしないだろう
全ての家具が1mmのずれもなく置かれている。
部屋を3回ほど見たがやはり何もないかとあきらめかけた時、ベットの足が少しずれていた。
ダブルベットの右下の足が少しずれていた、ベッドの下を覗いてみると、床には何もなかった。しかし、ベッドの天板に新しい天板が張られていた。
1階から道具を拝借して外してみた。
すると、男女の衣服が6組出てきた、胸騒ぎがする。
まさかと思い、スマホからさらわれた6人の服装を資料で確認した。
目の前の事を否定したくなるがあの夫婦が犯人で間違いなさそうだ。
しかし、何故人を襲う理由があるのか?
もう一度シャベルを持ちブドウの木に向かい男5人で根本掘り続けた。
数メートル掘り進めたところで根が丸くなっている、正確には根が覆いかぶさっている。
という、表現が正しい。
根を切り開くと、死体があった。手伝っていた捜査官が我慢できず吐いた。
物凄く強烈な匂いで鼻が壊れそうだった、衝撃な事が起きすぎて脳の処理が追いつかない。
これで夫婦が犯人だとして、夫婦は逃げるはずだ。こんな頭のおかしい犯人は何をするかわからない。昔からある言葉で「窮鼠猫を嚙む」っていうのがある。
意味としては、追いつめられた鼠が猫にかみつくように、弱い者も追いつめられると強い者に反撃することがある。
今まさに夫婦にピッタリの言葉だ。そうなると、病院にいった2人が危ない。
森木に電話する、帰ってくるのは接続中の音だけ、間髪入れずに論田に電話をかけてた。
接続中の音しか返ってこない、諦めて通話終了を押そうとした。押す寸前で、論田が出た。
俺は慌てて話した。
「おい、そっちは大丈夫なのか?森木と連絡が取れない。
あいつは近くにいるのかいるなら変わってくれ」
「う、えっと森木は夫婦に連れ去られました。
僕も後頭部を椅子で殴られて気絶してしまいました。」
「そうか、とりあえず病院に向かう」
俺は話しながら病院に車を走らせた。病院までは11㎞位ある、時間がかかりすぎる間に合ってくれ。
一度街に降りないと病院にはいけない。しかし、街は絶景騒ぎで交差点が赤になっても通行人の列が途切れない。サイレンを鳴らしても変わらない。路肩に車を停めて走った。
病院の下は警察車両でいっぱいだ、赤と青のサイレンが辺りを照らしている。
這う這うの体で病院についた。
もうすでに他の警察がいた。
「状況は?」
「はい、犯人が警察官を人質に屋上に立てこもっているみたいです。」
「この病院は何階建てだ?」「7階です。」
エレベーターに乗ってRを押した。エレベーターが音を立てて上がっている、俺は銃を取り出した。
レンコンの中を見て弾が入っていることを視認した。これを使うのは最終手段だ。
なるべく使いたくない。
エレベーターは止まり扉が開いた。
自動ドアを出て植物園を通り屋上の端に飛び出ている場所があった。
柵で囲われている。柵の奧に安武孝一が森木を羽交い締めして、立っていた。
すぐ手前で論田が銃を構えている、その論田の左わきに向かって腹走りこんでくる、安武幸来。
俺は重要な決断を強いられた。
1、安武孝一を撃って孝一が落ちたら森木も危ない。
2、安武幸来を撃って止めても、論田は確実に孝一を撃つだろう。
3、俺が何もしなくて幸来が論田にタックルして、論田の撃った弾が誤って森木に当たったらそれは終わりだ。
どうしたものか、時が止まっていた。
小さな動物の時間がスローモーションに感じる、という話があるな、今まさに小さな動物と同じ感覚だろう。
額から流れる汗が顎先にくるまで体感10分はかかって気がした。
どうする。一体、どれを選べばいいんだ。
叫びたくなるくらい考えてた。
そして、俺は答えを算出した。
今まであまり経験したことのない心臓の鼓動、気をしっかり保たないと震える両の手。
そして、自分持っている拳銃の火花が一つ一つ目で追えてた。
弾は論田の足をかすり論田は倒れこみながら幸来を撃った。
そう、俺の答えは論田を撃つことだ。
孝一は、今目の前で起きたことにあっけを取られている。
森木は孝一の腕を振りほどいて、柵にしがみついた。
孝一が足を滑らして、視界から消えていった。ここで、止まっていた時間が元に戻った。
論田が私に向かって叫ぶ
「一体何をしてるんですか?」
「何がだ」
「何じゃないでしょう」
「お前は何ものだ」
「え? 何言ってるんですか?私は警察ですよ」
「いや違うな」
俺は淡々とこの事件の真実を語り始めた.
「この事件は、外国人2人の犯行で終わらない。大きな疑問が残る。
何故人が誘拐されたのか、あのぶどうの木何故葉が赤いのかそして、珍味なワインなのか?
それは人間をワインのだしとして使っているからだ。」
「それがいったい何ですか?」
「まて。そうすぐ結論に飛びつくなここからだ。ここからが面白いんだ。
まず初めに最初の被害者は孝一の弟、孝二だ。
この孝二は数年前に消息不明になったはずだったが夫婦に聞けば事故で亡くなったとそんなことは有り得ない。
その年からここのワインの売り上げがうなぎ上りになっていた。俺は事件のファイルが来て読んで引っかかった。それに気が付いたのは論田お前もだった。」
「そりゃ事件資料を見れば誰でもそう思うでしょ」
「そうだな。しかし、今話した部分の資料は論田が暗号化して持っていた。
お前の部下のPCには入っていないおかしな話だな。
続けよう、お前はこの事件の犯人が夫婦なのにすぐ気が付いた。ここで捕まえても何も特にならないそこで考えた。
夫婦を脅して金ゆすった、夫婦からお金をもらう代わりに作戦にも協力した。
誘拐ってのは一人でやると大変だ。
そこで海外からサニー兄弟を連れて来た。
3人目までは彼らだけでやっていたが、彼らはいかんせ日本語がうまくないそこで城崎を論田が紹介する。
城崎は前科もちで断れるはずがない。
作戦はうまくいっていたが俺たちや紀元が気付いてしまったそれを消す作業をして最後に不要なサニー兄弟と城崎を消した。何か間違っていることあるか?」
「こ、こんなのあなたの妄想だ。」
「そこまで言うならもう少し詳しく話してやろう。
サニー兄弟の部屋に落ちてた手書きのメモあれはお前の字だ。
居酒屋で彼らの文字は見たことがあってね明らかに違うもんで驚いたよ。
さて、謎解きはこのくらいにして後は署で楽しくお話ししようか。」
「私は認めないぞ、全部あんたの言いがかりだ。妄言だ。虚偽だ。」
論田はわめいていたが柵を越えて手錠を持った森木に取り押さえられ捕まった。
安武幸子は論田の撃った弾が右の肩を貫通しただけで命に別条はないみたいだ。
これにて全てが解決だ、もうこの県には来たくない第一に品魔谷っていかにもおどろおどろしい名前じゃないか。植物園にジンチョウゲ事件解決を祝うように咲いていた。周りを見渡して、花を1つもらいスーツの胸ポケットにしまってエレベーターに向かった。
屋上非常階段付近で声がする。「なんだよ。変なとこで詰めが甘いんだよな。せっかく期待できる新人に任せたのに失敗か。あの刑事は邪魔だな。人のゲームを邪魔するなんて信じられん」男はイヤホンで野球の実況を聞いてぶつくさ文句をたらしながら階段を下っていた。
甲骨仁
いかかでしたか?
フィクションならではの展開や設定を思う存分に入れてみました。