三島由紀夫と私
あれほどピュアで澄んで何か透明な虚無感を抱えている目を見たことがない。エロティズムに目覚め、肉体的な美を求め、闘争が他人をオブジェとと見ずに、自己と他を分けているものであるとする考え方。
東大全共闘との論争は実に愉快なものであり、学生側の物に対する関係性の変更が学生運動の肝であると言った時は、日本語の扱い方と洞察力に感嘆した。
そして、日本が歩んでいくであろう姿を見事に形容していた。一言で言うとつまらない日本である。もちろん個々においてはそうではないかもしれない。ただ水飴のようにべったりとした憂いがあるということを言っている。
三島由紀夫から学べることは、美学である。それは単に自己満足的な美学ではなく、その美学を醸成させていき、血肉としてみなぎらせることである。そうしなければ、精神の白痴化が恐ろしく進行してしまい、身体的には生きているが、精神的には抜け殻同然のいてもいなくてもいいような存在に自分自身で追いやってしまいかねない。
三島由紀夫は、そんな人間ばかりがいる世界になる前に自分の美学にのっとり、誰にも精神を売り渡すことのない死に方をしたのだと思う。