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6分間も笑いがとまらないTim Burton監督のVincent
ナイトメアー・ビフォア・クリスマスはご覧になられましたか? ハロウィンからクリスマスまでのあいだに見たくなる映画の定番ですよね。ティム・バートン監督の作品は、奇怪なキャラクター造形とホラー要素のある物語とが相性抜群で、コープスブライドやフランケンウィニーなどを思い出される方も多いと思います。実写作品も、バッドマンやチャーリーとチョコレート工場など、公開した時は目新しい作品でしたよね。 純愛ラブストーリーのシザーハンズを覚えている方も沢山いらっしゃると思います。 ティム・バートン監督の映画といえば、ダニー・エルフマンの映画音楽も人気で、映画の音楽を聞くためだけに映像を見返したくなる作品も沢山あります。 どの映画にも異なった個性があって比べることはできませんが、特に私のお気に入りの作品は、何度も見返しているヴィンセントです。2014年に日本で開かれた展覧会(ティムバートンの世界)では会場に観賞ブースが設けられていて、6分間の本編と作品のアイデアを同時に堪能できて嬉しかった思い出があります。
ヴィンセントは品行方正な大人しい男の子で、お気に入りの遊びは空想ごっこです。自分を怪奇俳優のヴィンセント・プライスと思い込んで、頭の中でだけ別人になりきって一人で遊んでいます。普段の自分とはかけ離れた人格になりきる遊びが、ただただ楽しくて、やめられません。空想の世界で自分を讃えて、仮の自分が住む世界を宝物の鉱脈のように大事にしています。つまらない日常を素にした空想はどんどん現実離れして膨らんでしまい、ついには有名な大鴉の一節「never more!!」で、空想上で自死してしまいます。
私は、なんでもいいから笑いたい時に映画を見て、彼のごっこ遊びを一緒に楽しみます。そうすると、友だちといる時のように理由もなく楽しくなって、本当に遊んでいる時の様な笑いが止まらなくなります。 私は友達を心配するように、ヴィンセントの心が、大鴉の主人公のように死んでしまっていないか案じています。他の作品でも成長した姿でもいいから、あれから心は退屈していないか、いま何をして退屈を紛らわして生きているのか、本当の友達のように心を通わせて話を聞きたいです。
「6分間も笑いがとまらないTim Burtonティム・バートン監督のVincentヴィンセント」
©2024陣野薫