メリクリって言えなくて・・・合併版
まえがき
このタイトルに見覚えのあるみなさんも多いと思います。
読んで頂いた方はありがとうございます。
なぜ、改めて投稿するのか?
それは現在開催中のnote創作大賞に参加するためなのです。
文字ばっかりで読みにくいイメージのある小説を写真小説にすることで、多くの皆さんに読んでいただけるように考えました。
そして、私がカメラマンを目指しているとあって夢へのアプローチにもこのnoteを活用しています。
そこで、5話編成の小説を分割していましたが、合併して投稿します。
クリスマスのみなとみらいを舞台にした物語です。
そこに、載せきれなかった写真も併せて掲載できればと思います。
それではー。
※この物語はフィクションです。
第1話 ツイてない
「やっぱり捨てられたか・・・」嫌な予感が確信へ変わった。
時刻は12月24日20時を超えた。気温は低くなり、寒くなるばかりであった。
本来の待ち合わせをすでに3時間も経過していた。
普段は穏便な彼でさえも、我慢の限界を迎えた彼は、待ち合わせ相手の彼女に電話をかけた。
「もしもし。今どこだよ?」「ごめん。好きな人ができたからそっちに行ってる。別れるから。じゃあねー」有無を言わさずに彼女いや、元彼女は電話を切った。
彼は当然納得がいかず、かけ直したらすぐ、「この電話は現在使われておりません」というメッセージが流れた。
何で急に・・・しかもクリスマスイブの日に・・・彼は呆然とするしかなかった。
複雑な心境の彼は、とりあえず落ち着くために駅を出て夜のみなとみらいを歩き始めた。
さすように冷たい風も吹いていたが、カップルに対しての怒りや妬み嫉み、自分の悪かったことの洗い出しや寒さへのイライラ、泣きたいけど我慢などいろんな感情がごちゃごちゃになり、何も感じなかった。コスモワールドを少し過ぎたぐらいに頭の中でプツンと切れる感じがした。
その後はパリピたちが乗った車の轟音や爆音のEDMだけしか聞こえなくなっていた。
考えるのも厄介だから、とりあえず、あの銭湯に行って汗でも流そう。それで、忘れられるなら・・・
そう思い、彼はあの銭湯に向かった。
同時刻、赤レンガ倉庫でクリスマスマーケットよりも人々がニヤニヤしながら、少しざわざわしながら注目しているものがあった。
「俺のこと何もわかってないじゃねぇかよう」
「いや分かってるよ。」
カップルの痴話喧嘩のようだったが、何か様子がおかしい。
大柄の男は号泣し、嗚咽が止まらなかった。
彼女らしい人は励ましていたけど、男は聞く耳を持たない。
「もう別れる!さよなら!」言い出したのはまさかの大男だった。
「ちょっと待ってよ!」追いかけたけど彼女は間に合わなかった。
本来逆じゃない?という雰囲気が流れていたが、当人たちには、関係ない。
追いつけなかった彼女は、戻ってきて我慢できずに思い切り泣いた。
本当に泣きたかったのは彼女のほうだと思う。
野次馬も気配を察してか解散が早かった。
冬の寒空の下、ベンチに座り野次馬だったおばあちゃんが買ってくれたホットココア飲みながらしばらく泣いて、また歩き出した。
お風呂入ってリフレッシュしよう。それで、酒を飲んでご飯をたくさん食べよう!それで断ち切ろう。そう思い、目を腫らしながら彼女もまたあの銭湯へ歩き出した。
このツイてない二人がまさか逆についてることになろうとは知る由もなかった。
第2話 523円
赤レンガ倉庫の前で急に別れることになった彼女は、コインロッカーの荷物を取りに駅に向かった。彼が予約したホテルに今日は泊まるつもりでいたから、1泊分の荷物は持っていた。もしかしたらという少しの期待があった彼女は念のためそのホテルに確認したが、すでにキャンセルされていた。
元カレはこういうところは仕事が早い。皮肉を心でつぶやきながら、結局万葉俱楽部に向かうことにした。
コインロッカーに到着し、使用中のぼんやりと灯された赤いランプを見ても虚無感しか感じなかった。荷物を取り出し、また歩き出した。
駅の外に出ても、鮮やかな水色のキャリーケースを自分の体の横にぴったりとつけ歩いてはため息の繰り返しだった。少しでも癒しを求めて万葉俱楽部へ急いだ。
一方、元カノのわがままで別れさせられた彼は、あの銭湯に到着した。入口の前のロビーで、とあるモノを探していた。会員カードである。
彼は節約家であり、ポイントカードでポイントを貯める。いわゆるポイ活を欠かさずに行っていた。カードは30枚近く所持し、財布はいつもパンパンだった。おそらくあの師匠が見ていたとしても明らかにそういうであろう。
彼は、そんなパンパンな財布を開けようとしたらチャックが噛んでしまったらしい。冷静に一回閉めて動かせばよかったが、そんな状況ではなく力ずくで開けると小銭を聖なる夜にばらまいた。
どんだけツイてないんだ・・・。
心で自分にドン引きしながら小銭を拾っていると、女性の声が聞こえた。
「すいません・・・これ・・・」
小銭を拾ってくれたらしい。拾ってくれた523円を受け取り、彼はお礼を言った。そして、顔を見上げるとどこかで見た気がする顔があった。
彼はすかさず、「あの・・・僕とどこかで会ってませんか?」と言った。
夜に映える鮮やか水色のスーツケースを持ったベージュのコートを着た彼女は、ピンときた様子で、「彼じゃん!」と言った。
続けて「私、彼女だよ!覚えてる?」と聞いてきた。
彼は忘れるわけがない。
その名前を聞いて、彼は外だから冷たいはずなのに心がホットワインを飲んだように熱くなった気がした。
第3話 光と陰
小銭を拾っただけなのになぜ知っていたか。
彼と彼女は互いに幼稚園の時から知っていた。いわゆる幼馴染である。
女子と話すのが苦手な彼が唯一同世代の女性で気兼ねなく話せるのが、彼女であった。
彼は、さすがに同じなのは中学までだろうなと考えていたらしい。
しかしながら、彼女もまさかの同じ高校であった。こんなことあるのか?と嬉しさと困惑という複雑な感情になったという。
高1の春。入学して1週間程度経っただろうか。
朝の電車を待っていると、「おはよう!」
下を向く彼を覗き込むように彼女が挨拶をしてきた。まるで、女神のようだった。
彼は、通学路の少し細い路地でも何か盛り上げなきゃという一心で必死にしゃべった。
将来の夢のコト、先生のコト、部活のコト。今思えば迷惑だったかもしれないと彼は後悔することもあるそうだ。だけど、彼女は話をしっかり聞いてくれた。
しかしながら、彼女にも友達ができ始め、一緒に通学する機会は少なくなっていった。
彼女は、充実した友達と学校生活を謳歌していた。
一方、彼は、友達はいたものの、まったく心を開けず俗にいう陰キャとして高校生活を送っていた。
しかし彼女は、彼を学校で見かけても笑顔で手を振ってくれたりした。
なぜ、こんな陰キャに笑顔で対応してくれるのだろう。そう考えることもあった。
時は流れ、高校を卒業し、お互いに別の進路に進んだ。彼は専門学校に、
彼女は、短大に進学したらしい。もう会う機会はないな。と彼は思った。
専門学校でも、クラスのウェーイ的なノリとか周りの視線が怖く、あまり馴染めず休み時間は図書館にこもり、クラスで話しかけられても当たり障りのない会話に努めるなどによって彼の陰キャな性格はさらに進化されていった。
そんな下を向くような日々を送る中で、学校が少し早く終わる日があった。
少し小腹がすいた彼は、ファストフード店に入った。
ボッチ飯は、慣れているというか好きというか彼にとって当たり前のルーティンであった。いつも通り会計を済ませようとした。
その時、店員さんから「もしかして・・・彼?」
なぜ知っているんだ。ふっと顔を向けるとそこには彼女がいた。
化粧していて一瞬分からなかったが、間違いなく彼女だった。
「やっぱりそうだ!久しぶりだね~」
この出会いは少し体がしびれる気がした。
少しだけ会話は弾んだが、仕事中だったから邪魔になると思い、彼はすぐに席に着いた。席に着いても少しそわそわしていた。やはり気になる。
陰キャだから卒業後、同級生に声をかけられることなんて片手で数える程度しかなかった。なおかつ、周りから少しやばい人に見られていたかもしれないから声をかけられるわけがないと思っていた。
なぜ声をかけてくれたんだろう。
そう考えながら、ダブルチーズバーガーに食らいついた。
帰る時も笑顔であの高校時代のように対応してくれた。
その日から彼女のことは、忘れられずにいた。
まさかこんなツイてない日に会えるなんて・・・
思わず、唇をかみしめ様々な感情をぐっとこらえていた。
また、あのファストフード店のしびれと同じ感覚が体内に走った。
彼女は小銭を渡した後に言った。「せっかくだから、もしよかったら銭湯一緒に楽しまない?」
こんな機会最後かもしれない。
彼は、「もちろん。」と一言言って館内にともに入った。
第4話 っぽくないクリスマス
彼は、露天風呂に浸かりながら考えていた。
このあと、何すべき?ご飯?それともまったり?
交際経験ゼロのパーフェクト童貞の彼にとっては大きなバグを引き起こしていた。
何が正解なのか。頭の回線が切れてしまいそうだった。
場所を変えよう。そう思いサウナへ向かった。
クリスマスなのにガッチリ体型のおじさまが多く、なんとむさ苦しいことか。
そんななかでじっと耐えること10分は過ぎただろうか。
水風呂に入ってボーッとし、いわゆる[ととのう]と呼ばれる極限リラックスモードに突入した。
頭で何も考えずにいたら、彼は何でもできる気がした。
まずは、食べながらだ。
話はそれからだ。
そう思い、浴場をあとにした。
風呂上がりの彼女と合流し、食事処へ向かった。
彼は、親子丼とイチゴパフェ。彼女は生ジョッキに焼き鳥と天丼を発注した。
「メリークリスマス!」ツイてない二人は、彼はウーロン茶で、彼女は生ビールで乾杯した。
いい飲みっぷりだ。普段飲まない彼だがそのぐらいはわかる。
それからというもの色々話すことが尽きず、結局1時間半ほどたっていた。
学生時代の行事や先生、生活のコトだけでなく、これまでのこと。今日あったことも速報のように愚痴あったりした。
少し酔った彼女は顔が赤く、色気があり、正直なんかエロい。
そして、不思議と彼女の魅力に改めて吸い込まれていきそうになる。
まるで、クリスマスツリーの中でも煌々と輝くオーナメントボールのように夢中になっていた。
このまま飲むとあの話が聞けなくなる。そう思った彼は、
「少し酔い覚ましのために外で歩かないか?」と聞いた。
彼女は、「え~めんどくさい」とまだ泥酔モードではないだが、少しテンションが上がっているようだ。
「あんなことになってクリスマスツリーやイルミネーションをしっかりとは見られてないだろ。」
「まぁ、それは~。でも寒いし・・・」
らちが明かなくなりそうだった。
しかし彼女は、「だったら屋上の足湯行かない?それだったらわざわざ出なくてもいいし。温泉あるし。それならいいけど?」といった。
折衷案を受けなきゃたぶん連れ出せない。そう考えた彼は「わかった。そうしよう。」と受け入れた。本当は、出たかったが。
屋上の足湯に向かうとカップルが多く、いちゃつきが厳しく見えるカップルも多くいた。
そのカップルは無視すると、みなとみらいの夜景や大観覧車の光の演出がきらめき、少し幻想的だった。
彼女とともに足湯につかると、足先から染み渡る感じがした。
「ふぅー」二人そろって声が出た。お互いに少し笑った。
楽しみつつ、ついに彼は覚悟を決めた。
「あのさ・・・一つ聞いてもいい?」
この言葉に彼女は、「いいよ~。どした。」と聞いてきた。
彼は一拍おいて「学生時代、ド陰キャだった自分に優しくしてくれたの?あと、やばい雰囲気が出てたかもしれないのに、どうしてファストフード店で声かけてくれたの?」と神妙に聞いた。
彼女は、彼の真剣な目に少し驚きつつもこう答えた。
「そりゃあ、幼馴染だもん。」
この言葉に続き、「正直、変わってるとは思ってたよ。だけど、幼稚園から知ってたし、たまに遊んだり中学でも同じ班で活動することもあったし。どういう性格かぐらいわかってるよ~」と彼女は酔いながらもしっかりとした口調で言った。
彼は、そう思ってたんだと思いながら、話を聞き続けた。
「それに、優しいじゃん。彼さ。ミスすることは多いけど何かに取り組むとか誰かを支えるとか、代わりに辱めを受けるとかさ。先陣を切る切り込み隊長になったり周りのためにいろんな事してくれるじゃない。でも、話や感情表現が下手でそういう風に見られっちゃってることもあるから~。一見さんにはなんだあいつ。とかパシれるって見られてるかもしんないねぇ。」
彼女の思いは伝わった。泣きそうになった。
彼は、少しこらえてモヤモヤしていたことをもう一つ問いかけようと思ったが、しつこく見られたらいやだしやめることにした。
そんな中、彼女が口を開いた。
「まだ話したりないなぁ。そうだ!彼って明日クリスマス本番って空いてる?もし空いてたら1日付き合ってくれない?質問に答えたお礼がてらに。」
「ちょっと待って。」女子からの声掛けに動揺する彼は冷静を装い予定を調べた。空いてる。
意を決して「空いてるからいいよ。」といった。
心中では、ぜひお願いしますと言わんばかりに土下座するほどだった。
「じゃあ決まりね!」とニーっと笑った。
あの高校時代の女神のようにハツラツな笑顔だった。
そして、館内に戻り、二人とも休憩室のリクライニングソファーで横になった。
余談だが、彼は、ドキドキして一睡もできずに夜を明けたそうだ。
最終話 あの場所
クリスマス当日を迎えた。昨日のイブは急転直下からの千載一遇なチャンスを得るという波乱万丈な一日だった。
朝7時まで眠れなかった彼は、今日どうなってしまうのかという不安を覚えた。まぁ何とかなるか。そう思いながら顔を洗いにトイレに向かった。
トイレから戻っても彼女は寝ていた。
ふと寝顔を見てもすっぴんを知っていたからやっぱりかわいかった。
スマホをいじったり、ぼーっとして退屈な時間を過ごしていた。
朝8時。彼女が目を覚ました。「あぁ。おはよう。」眠たい目をこすりつつ、声をかけてきた。目が完全に開いていない。
「おはよう。よく眠れた?」と彼が聞くと、「まぁ。何とかね。」と答えた。断じて言うが、この二人は付き合っているわけではない。ましてや、昨日それぞれの相手に別れを切り出された二人だ。
「今日とりあえずどうする?」と彼が聞くと、彼女は「まず、朝ごはん食べたい。」といった。
朝からあの食事処やってんのかなぁと思いながらも食事処へ移動した。
何だこの賑わいは。朝からすごいじゃないか。
お金がない若者カップルが聖なる夜を共に暮らしたり、子供が走り回ったり、家族と一緒にクリスマスを過ごしサンタさんの代理というテイのお父さんが頭を抱えていたり、ソワソワしていたりと、夜よりは減るが、十分にぎわっていた。
朝食を楽しみ、お茶をすすっていると彼女から「あのさ。少し汗を流したいし、準備したいからお風呂入ってもいいかな?」と聞いてきた。
彼は、普通な顔をして「オッケー。そしたら、10時過ぎにロビー集合にしようか。」といって解散した。
解散したものの、彼は風呂に入るか迷っていた。昨日は入ったし、別に入らなくてもいいんだよなぁ。でもゆっくりくつろぎたいなぁ。まぁいっか。と思い結局は入らないことにした。
また、休憩室に戻り彼の本領発揮を見せた。彼の仕事は、フリーで旅行代理業を営んでいる。主に社員旅行のために会社に赴いたり、クライアントの旅行キャンペーンの実施の相談などが業務の内容だ。だから自分の都合で休めるし、自分が受けたい仕事も決められる。彼にとってまさに天職と言える。
そんな彼は、この短時間の間にもし、彼主導になった時のプラン。そして彼女が行きたいところについていくプランをそれぞれ3つずつ考案した。
どうなった場合でも、対応できるようにするためだ。
彼がプランの構築が終わり、時計の針に目をやると、9時35分だった。
そろそろいいか。そう思った彼は、着替えに向かった。
着替えが終わり、スマホの時計は9時55分。少し早すぎただろうか。
彼女が来るまでの間、お土産を物色していた。買うわけではないが、見るのもかなり好きだった。そんなことをしていると、彼女がやってきた。
「お待たせ~!」
今日も元気がいい。服装に目をやると彼は、衝撃を受けた。ベージュのコートを手に持ち、赤のチェック柄の裾が長めのビッグシャツに黒いTシャツそして、青いジーパンにスニーカーというファッションだった。さらに、髪型は、少し高めのポニーテールだった。
彼が衝撃を受けるのは無理がない。
なぜなら、彼にとってドストライクのファッションと髪型だったからだ。
髪型は言ったかもしれないが、ファッションについては言った試しがないからだ。あわあわする彼を見て彼女は、「どしたの?大丈夫?」と聞いてきた。我に戻った彼は、「あぁ。大丈夫大丈夫。」と言って「それじゃいこっか。」と言って会計を済ませて外に出た。
クリスマスのみなとみらいは平日であったから。サラリーマンが多めだが、ファミリーや少し痛いカップルのほうが多くいた。
そんな人たちを横目で見つつ「まず何したい?」と聞いたら、彼女は、「うーん・・・。大体行ってるもんなぁ・・・」と言って困っていた。そうだ。二人とも地元に近いんだから行ってないわけがない。「それじゃあ・・・」と発しようとした瞬間に彼女から、「そうだ!せっかく会ったわけだし学校行かない?」。さすがにどのプランにもない提案だった。学校の観光名所なんてあったか?寺子屋時代のお寺とかのコトか?彼は、旅行業の知識をフル検索してしばらく考えてもやっぱり出てこない。
そこで、「なんか観光名所の学校でもあるの?」と問いかけた。彼女は、「違うよ~私たちの母校だよ!」
嘘だろ。ってか入れないだろ。そう言おうともしたが、遅かった。
「あぁもしもし~。卒業生の彼女ですが、本日伺わせていただきたいのですが。」まぁダメだろう。そんな簡単に入れるわけがない。そう思っていると、「本当ですか!ありがとうございます!失礼しまーす。」と電話中の彼女が言った。
ダメだったでしょう。という前に「オッケーだって!」と言った。
噓でしょ。恥ずかしいぞ。そんな思いが交錯したが、彼女が喜ぶんだったらいいかと思い、あきれながらも、「そっか。じゃあお土産買わないとね。」と言って駅に向かった。
後から聞いたら、彼女はウェディングのライターやヘアメイクなどを担当し、取材力やアポの力はそこら辺の人よりも強いらしい。
私立海華横須賀学園高校。
それが彼と彼女の母校である。
横須賀の市街地から少し離れたところにあり、海の近くにあった。
男女共学で、文武両道・一毎入魂を校訓としていて何事にも全力で取り組みなさいという意味だった。
運動部も文化部も人気で遠くの地域、横浜方面だけでなく藤沢方面からも通学する生徒が多い高校だった。
そんな母校に着いた。部活動の生徒がちらっと見る中でも、堂々と卒業生として歩いた。そんな中先生などに軽い挨拶を済ませて、「授業はないから自由に見てね~」と先生から言われた。軽すぎないか?と思いつついろいろ回った。
彼女とともに座って高校時代のことを思い出しながら、いろいろ話した。
きのうはなし足りなかったこと。思い出したこと。思い出せばきりがない。
しかしながら、思い出や感傷に浸っている時間はあっという間に過ぎた。
そして校門を出て学校から最寄り駅への帰り道。
彼女は、少し寂しそうな眼をしていた。
「もう、お別れか・・・」そう言うので、彼は「また会えるよ。」そう言った。本当は悲しかったけど本当のことを言ってしまったら彼も泣いてしまいそうだった。
「とりあえず、連絡先を交換しよう。」彼はそう言った。彼はそれだけでも十分だった。
しばらく話しながら歩いていて駅に着いて彼女から「ここで解散しよっか。」そう言った。
「そうだね。それじゃあまたね。気を付けて。」と言って彼は反対側のホームに向かった。
あの帰り道夕焼けを見るのが苦しかったが、どこか清々しい顔を彼と彼女はしていた。
終わり。
読了ありがとうございました!
今後も更新していきます。
それではー。