メリクリって言えなくて・・・第2話(全5話)
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メリクリって言えなくて・・・第2話です。それではどうぞ~
※この物語はフィクションです。
第2話 523円
赤レンガ倉庫の前で急に別れることになった彼女は、コインロッカーの荷物を取りに駅に向かった。彼が予約したホテルに今日は泊まるつもりでいたから、1泊分の荷物は持っていた。もしかしたらという少しの期待があった彼女は念のためそのホテルに確認したが、すでにキャンセルされていた。
元カレはこういうところは仕事が早い。皮肉を心でつぶやきながら、結局万葉俱楽部に向かうことにした。
コインロッカーに到着し、使用中のぼんやりと灯された赤いランプを見ても虚無感しか感じなかった。荷物を取り出し、また歩き出した。
駅の外に出ても、鮮やかな水色のキャリーケースを自分の体の横にぴったりとつけ歩いてはため息の繰り返しだった。少しでも癒しを求めて万葉俱楽部へ急いだ。
一方、元カノのわがままで別れさせられた彼は、万葉俱楽部に到着した。入口の前のロビーで、とあるモノを探していた。会員カードである。
彼は節約家であり、ポイントカードでポイントを貯める。いわゆるポイ活を欠かさずに行っていた。カードは30枚近く所持し、財布はいつもパンパンだった。おそらくあの師匠が見ていたとしても明らかにそういうであろう。
彼は、そんなパンパンな財布を開けようとしたらチャックが噛んでしまったらしい。冷静に一回閉めて動かせばよかったが、そんな状況ではなく力ずくで開けると小銭を聖なる夜にばらまいた。
どんだけツイてないんだ・・・。
心で自分にドン引きしながら小銭を拾っていると、女性の声が聞こえた。
「すいません・・・これ・・・」
小銭を拾ってくれたらしい。拾ってくれた523円を受け取り、彼はお礼を言った。そして、顔を見上げるとどこかで見た気がする顔があった。
彼はすかさず、「あの・・・僕とどこかで会ってませんか?」と言った。
夜に映える鮮やか水色のスーツケースを持ったベージュのコートを着た彼女は、ピンときた様子で、「彼じゃん!」と言った。
続けて「私、彼女だよ!覚えてる?」と聞いてきた。
彼は忘れるわけがない。
その名前を聞いて、彼は外だから冷たいはずなのに心がホットワインを飲んだように熱くなった気がした。
第3話に続く・・・
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