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防御率4点台でも侮るなかれ!ぬるっと抑える瀧中瞭太

1.最初に

今回のノートは楽天イーグルス瀧中投手の紹介です。
 交流戦で楽天と対戦するのにあたり、セ・リーグを中心にみることになる竜党の方の中には「3戦目の瀧中ってだれやねん。」という感じの方もいらっしゃるのではないかと思いました。この正直あまりよく知られていないプロ二年目の右腕は自身の開幕戦で2回途中10失点の炎上を経験したもののそれ以降の登板では6先発して4勝防御率1点台の成績を収めているのです。プロの先発投手の中では遅いと言える140キロ前後のストレートでもなぜ抑えられるのか?だらだら下手な文章読むのめんどくさいという方もぜひ対戦する前に投球概要だけでも目を通していただけると嬉しいです。

2.基本情報

生年月日:94年12月20日生(27歳プロ2年目)
右投げ右打ち
経歴:滋賀県出身.高島高校-龍谷大-Honda鈴鹿-楽天(19年6位)
背番号:57
推定年棒:1300万円
通算成績:15先発6勝3敗
Twitter:@adww57
龍谷大(17年卒)から社会人経由で入団した右腕で、大学では中日の石田健人マルク投手(18年卒)の1つ歳上でチームメイトにあたります。最速148kmのストレート(実際はほとんどが140前半から中盤)と6球種ほどの多彩な変化球を重心を下げたスリークォターのフォームから繰り出して抑えていく実戦派で、今季はここまで楽天の16億ローテの6番手の役割をこなしています。

3.投球概要

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 プロ二年間15先発で6勝を挙げている瀧中ですが、注目してほしいのはWHIP(一投球回平均でどれだけ走者を出すか)が通算1.11でありこの指標は1.2未満でエース級とされているもので20年中日の先発で瀧中より優れているのは大野(WHIP0.87)福谷(WHIP1.02)だけになります。下表右にあるようにタイプとしてはフライ系なのですが、被本塁打数もかなり少なく通算80 1/3回で6本と通算被本塁打率0.67になります。これは20年中日の先発の誰よりもよく福谷(被本塁打率0.68)に近い数字になります。ちなみに大野は被本塁打率0.79です。

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 続いてQS率、平均投球回をみるとわずかではありますがリーグ平均に満たないことがわかります。また、ホーム防御率は2.27と圧倒的に敵地での成績よりも良いのが特徴です。
 これらのことから、瀧中投手は走者をあまり出さない上飛翔癖もない非常に安定したローテ投手であるといえます。

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 今季の瀧中投手は7回先発して4勝2敗防御率4.08ですが、これは防御率詐欺といえます。なぜなら、初登板で2回途中10失点して以降は直近6試合の登板で4勝防御率1.60の投球で交流戦でも東京Dの巨人戦でも7回途中無失点のピッチングを見せました。

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こちらが20年の投球割合です。瀧中投手を相手にするのにあたりケアするべきパターンは2つあります。
 一つは、2球種で全体の60%程度を占める140キロ前後のストレートとスローカーブでカウントを稼ぐもの。二つ目は、フォークをはじめとする130キロ台の変化球群で打ち取るパターンです。
 これらについて、次の投球詳細でさらに詳しく見ていきたいと思います。

4.投球詳細

 瀧中の投球について、ごしま(twitter:@gosima_eagles)さんがまとめてくださったデータを交えてみていきたいと思います。
(注:これらのデーターはスポナビのデーターを引用して加工しています)

 まずは改めてこのグラフを見てください。

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これは20年えに瀧中が投じた球種の割合を示すものでストレート、カーブ、カットボールの3球種で75%を占めることがわかります。そして、次のグラフが奪三振時に結果球となった球の割合です。

カーブ、カットボールが減少しフォークが大幅に増加していることがわかります。この瀧中のフォークは一級品で空振り率は18.4%とフォークの空振り率のNPB平均が18.6%であることを考えても平凡なのですが被打率が20年は5.3%、21年もここまで7.7%と魔球と言って差し支えない結果を見せています。​

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こちらは、20年に150球以上フォークを投じた選手のフォーク被打率ランキングに瀧中をまぜたものです。どれだけ圧倒的な性能であるかわかります。
では、なぜお世辞にも動画映えするわけではない瀧中のフォークはこんな結果を出せるのでしょうか?

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 その答えは球速帯にあると考えます。このヒストグラムを見てください。130キロ±10キロの帯域にフォーク・チェンジアップ・スライダー・カットボール・シンカー・シュートというおびただしい数の変化球が同居していることがわかります。これらの6つの球種は球速帯が統一されている一方で変化量、変化方向が異なりそれこそがフォークを魔球にしていると考えています。おそらくかなりハイレベルなピッチトンネルが形成されていると考えられ、それを可視化するためにpitching ninjaさんのようなgifを作ってみたかったのですが今後の課題にしたいと思います。

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(注:この球種別ヒストグラムと配球チャートはごしまさんが編集したものです。

 そしてこれらの球を直球は内、変化球は外に投じていく傾向がとくに右打者から見て取れます。昨季左打者相手に右打者より大幅に悪いBB%11.5%を記録したように左打者を相手にするとストレートの制球に苦慮する側面もあるのかもしれません。

そして6月3日のヤクルト戦、瀧中が完全にはまった投球を見せていたと感じたのが初回の青木との対戦です。

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1.  1B0S  内角              カーブ           見逃し   青木無反応
2.  1B1S  内角              ストレート ファウル
3.  2B1S  内角 134km   シンカー  見逃し   
4.  2B2S  内角 131km   スライダー 空振り   タイミング合わず
5.  3B2S  内角 129km   スライダー 見逃し   インハイを見極める
6.  3B2S  内角 142km   ストレート ファウル  引っ張りファウル
7.  3B2S  内角 131km   フォーク  ファウル 
8.  3B2S  内角 132km   フォーク  空振り三振 7球目より落差大

楽天山田スカウトは獲得時「右、左打者関係なく内角に投げ切れるのが持ち味」と発言してますがそれがよく表れていてかつ、組み立ても比較的オードソックスなものになっています。瀧中投手の配球は浅いカウントではストレート、カーブを投じカウントを整え、中盤からは130キロ台の変化球を投じて追い込んで最終的にはフォークで三振を奪う流れになっています。

5.最後に

 ストレートカーブの押し引きと130km/h中盤の4球種のコンビネーションで抑えてく瀧中投手の魅力を所々ほかの投手との比較を交えて分析してみました。今回の中日との対戦は瀧中が得意な楽天生命パークでの対戦になりますが映像では分かりにくいけど完成度の高い瀧中のピッチングを楽しみにしたいと思います。
 直球に弱いとされる中日打線。意外と打てたりしないかな...(願望70%

6.参考

スポナビ
20年中日のWHIP
被本塁打率ランキング
ごしまさんのtwitterアカウント
河北新報
先発完投が5年で半減した理由、巨人・桑田真澄コーチは135球提唱(データスタジアム)
データで楽しむプロ野球20年瀧中















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