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変な子

 ルリナは、小さい頃から「変な子」と呼ばれていたらしい。

メンタルの障害から他人と普通に会話を交わすことができないからなのかもしれないが、それ以外にも他の子とは違うところがいろいろとあるからなのかもしれない。


◆ SNSをしない

例えば、ルリナはいまどきの子にしては珍しくSNSを全然しない。
母親のマナミから連絡用に携帯電話を持たされてはいるものの、ほとんど使うことがないという。
友達が1人もいないからなのかもしれないが、LINEも、Instagramも、何もやってないそうだ。
誰かと繋がりたいという願望を持ち合わせていないらしい。

◆ 流行に興味がない

例えば、ルリナは流行りのものに全然関心がない。
十代の子が当然知っているようなことでも知らないことが多い。
芸能界のことも、アニメのことも、音楽やファッションのことも、流行りのものを何一つとして知ろうともしないのである。
当然ながら社会のニュースについても関心がないし、若い人達特有の言葉もいろいろと知らなかったりする。
まるで、どこかの無人島で生きてきたかのように現代人の知識や感覚とずれているのである。

◆ 同世代のことが特に嫌い

ルリナは他人のことが苦手なのだけど、特に同じ世代の人達のことが非常に嫌いなのだそうだ。
というか、同じぐらいの年齢の子達に対しては内心で強い嫌悪感を持っているらしい。
男子も、女子も、性別にかかわらずどちらも大嫌いで、人として信じることがどうしてもできないという。
それは、過去に酷いいじめに遭ってきたトラウマもあるのかもしれない。

ルリナはかつて都会の学校で、同じ学年の男の子達から集団で最悪の辱めを受けたこともあるらしい。
そのときは、それを周囲で見ていた女の子達も、誰もその蛮行を止めようともせずに笑って見ていたそうだ。
事件の後、教師の前でも誰も事実を証言せず、それはルリナの狂気じみた自作自演のこととしてうやむやにされてしまったらしい。
子供というのは、ある意味で大人以上の残酷性を秘めている。
時には大人では想像しえない酷い仕打ちを他者にしてしまうこともある。
他の生きものや小動物を無邪気に惨殺したり、際限なく何度も他者を傷めつけては狂喜乱舞していたりする姿がいい例だ。

ルリナは人間関係で失望の経験を繰り返していくうちに、メンタルの障害もより一層深い傷となって脳に刻まれてしまったのだろう。

   

現代社会とかけ離れた感覚を持っているルリナ。
まるで、時空を超えて別の次元から来たみたいだ。

でも、少なくとも私にとっては「変な子」ではない。
むしろ、ルリナの考え方に私は共感できる部分が多く存在すると思う。

考えてみれば、私も現代の浅はかな流行を嫌悪している部分はあるし、人間嫌いなところもルリナと似ている。
ルリナが私に対しては警戒しないで慕ってくれているのには、それなりの理由があるのかもしれない。

おそらく私とルリナは「変」な人間どうしなんだろう。

この狂った社会に染まらない、異端者どうしだ。