2017年8月2日(水) | 東北旅行記③
【 宮城(石巻) 】
今日は一日かけて、目的の一つの「Reborn-Art Festival」に参加する。このイベントは、東北に旅行することを決めて何か大きなイベントが開催されていないかを調べて知った。
今日のイベント参加には、大きな問題が一つある。それは大きな荷物で、スーツケースと一緒の行動はまず無理だ。二日かけて回るコースの大半を、今日一日駆け足で回るつもり。さてどこに預けるか。駅のロッカーを試したが、入らなかった。
悩んで思いついたのが、その日泊まるホテルに預けることだった。前日は泊まれなかったが、一日目は泊まったし今日の三日目も泊まる。泊まった時に、連泊したかった話や「Reborn-Art Festival」の話をオーナーとはしていた。善意を信じてホテルに向かった。
オーナーは快く預かってくれた。さらにお薦めの展示場なども教えてくれた。朝から幸運が舞い降りてきて、今日一日ハッピーな日になる気がして、ワクワクして出発地のバス停に向かった。
昨日は2時間くらいかけて、エリアAとBのいくつかを回った。今日はバスを最大限に利用して、牡鹿半島のエリアCとDをできるだけ多く回るつもりだ。
何度も何度も時間のシミュレーションを繰り返し、晴天用と雨天用/CからDとDからCの、4パターンを分刻みで綿密に計画表をつくった。計画表をつくって達成感を持ち、少しモチベーションが下がり気味だったが、空模様からコースは決めた瞬間にモチベーションが一気に上がった。
8時30分のバスに乗って出発した。1時間近くバスに乗って荻浜小学校に降りて近くの展示を観て、次のバスで牡鹿ビレッジに向かった。戻りのバスに乗り、旧桃浦小学校で降りて山の中の展示を観に行った。そこで悲しい出来事が起こった。飛んできた虫を振り払ったら、悲劇に襲われた。
振り払った手にデジカメが引っかかり、デジカメが飛んでいった。やばいと思ってデジカメを掴もうと手を伸ばしたが、その先を飛んでいった。
壊れていないかが気になり、写真を撮ったが故障してピクリとも動かない。同じように私もその場から動けなくなった。幸いスマフォがあったので写真は撮ることができたが、急にブルーな気持ちになった。
憂鬱な気持ちのまま坂を上って、バスに乗った。荻浜駐車場でバスから降りて展示を観て、次に進むバスを待っていた。乗り継ぎの時間があり目の前の駐車場をふとみたら、そこの受付も作品らしいことに気づいた。
一人だと益々憂鬱になりそうだったので、受付係の人に話しかけた。一人は石巻出身で、震災後仙台に行ったけれど今回のイベントで石巻に戻ってきたとのことだ。
私が京都から来たと伝えると、ここでも「来てくれてありがとうございます」と言ってもらい、少し気持ちが晴れやかになれた。
バスが来て乗ると、駐車場で受付係の二人が私におじぎをしてくれた。些細なことではある、ただ、デジカメの故障なんてどうでもよくなるぐらい幸せな気持ちになった。約40分間バスに揺られて、次の牡鹿公民館前のバス停で降りた。しかし、世の中はそんなに甘くないことを思い知らされた。
地図にあるバス停でバスを待っていた。発車時刻になぜか目の前の反対側の道路をバスが通り過ぎた。突然不安に襲われ、近くののり浜駐車場に走った。受付係に聞いてみると、実はバス停が違うと言われた。地図にも書いてあったし、実際にバス停の案内もあったのに、バス停がそこから駐車場に変わったと言われた。
次のバスは一時間後で、あれだけ綿密に練り上げた予定が一気に崩れ落ちた。予定だけでなく、心も崩れかけた。係の人に苦情というかいろいろ言っても、「しょうがないですね」と事務的対応がさらに追い打ちをかけた。全く納得できずにいたら、救世主が突然現れた。
私がバス停でバスを待っていたことに見ていた市役所の人が、運営サイドにバス停の位置について忠告しにちょうど入って来られた。その人が事情を聞いてくれたので説明すると、車で次のバス停まで送ってくれると言ってくださった。
その人の善意で計画通り展示を見終えて、帰りのバスに乗って石巻駅に向かった。バスで乗り合わせた人に話かけると、仙台市の山側に住んでいる人で震災時の話などいろいろ話してくれた。そこでも京都から来た私に、「来てくれてありがとう」と言ってもらえた。
東北で出会った人の多くの人から、この「来てくれてありがとう」という言葉を聞く。それも挨拶の始めに自然と言葉で歓迎してくれて、何ともいえない幸せな気持ちになれる。生まれも育ちも京都の私は、決して言えない。
帰る途中、あの荻浜駐車場に停車した。あの受付係の人がいないかなと、目で捜した。すると一人の人が私に気づきもう一人の人に伝えて、一緒に手を振って見送ってくれた。すごく優しい気持ちに包まれて、幸せな気持ちになれて、石巻駅に戻ってきた。
今日嫌なことがいろいろあった。でもそれ以上に人の優しさに多くふれた。嫌なことは、どちらかといえば頭の中で考えてしまう。嬉しいことなどは、心の中でただ感じている。優しくしてくれた人と実際ふれあった訳ではないが、両手に温もりを感じた。
東北旅行の前半は、幸せな想いに満たされて終わった。駅近くのお寿司屋さんで、美味しいお寿司を食べた。地元の魚を食べてお腹も満たされた。
明日からは、今まで行ったことのない北に向かう。どんな出会いが待っているのか楽しみだ。
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