答えがないから、思い出す。
2011年の暑さが和らいだ頃、生まれて初めて金縛りにあった。
仕事に、大学院の勉強に、修士論文にと、あまりにも忙しかった。
月曜から木曜までの合計睡眠時間は、10時間もなかった。
1日平均、3時間も寝ていなかった。
こういう生活は、2011年の4月から論文を書き終える11月まで続いた。
そのピークが、9月頃だった。
金縛りは突然やってきた。
少しでも多く寝たいのに、突然身体が動かくなった。
はじめは、「身体が動かない」と思った。
少しすると、いつしか寝ていた。
それが、少しずつ動かないことを認識する時間が増えていった。
そう、寝る時間が益々減っていった。
金縛りにあうのが、1週間ぐらい続いただろうか。
眠れないことのイライラがピークに達したある日に、あることが起こった。
その日も金縛りにあった。
ただ、少し様子が違う。
押さえつけられるような金縛りだった。
両肩を、強くて大きな手で押さえつけられている感じがした。
足を動かそうとしても、なぜか足も動かせない。
時間とともに、どんどん重力に吸い込まれるような感じで、抑え込まれた。
金縛りというよりも、誰かに抑え込まれている気がした。
イライラがピークに達した。
なぜだか、よくわからない。
「重たいから、どけっ!」と言いたくなった。
でも、声もでない。
悪夢の中にいるかのような感じだった。
どんどん抑え込まれていく。
身動きも声もでない。
柔道の抑え込みのように、顔に何かが覆いかぶさってきた。
なぜだか、よくわからない。
声は出ないが、口は動く。
覆いかぶさっている何かに、思い切りかみついた。
眠れない怒りを込めて、かみついた。
すると、金縛りは解けた。
翌日から、金縛りもなくなった。
あれは何だったのだろうか。
夢をみていたのだろうか。
ただ、口には何かに噛みついた感覚はあった。
はたして、金縛りだったのだろうか。
それとも、何かの霊に憑りつかれていたのだろうか。
いまだに、解決できない出来事の一つ。
答えがないから、思い出すのかもしれない。
答えがわかると、おそらく思い出さない気がする。
何でもかんでも答えを求めすぎる社会。
答えを求めすぎたから、淡泊で人間味を失ったかもしれない。
答えを置いておくと考え方も、いいのかもしれない。