無目的的に。
『ありのままがあるところ』(著:福森伸)
この本は、かなり前に書いた記事でふれた映画に関する本でもある。
< ( 無の探究の旅の前に ) 「ない」から「ある」へ >
実は初版時から、amazonのトレイにすぐためていた。
2019年12月だから、2年近くためていたことになる。
気になる本は、とりあえずトレイへという感じになり、
どんどん下に降りていく。
たまにトレイを全部見渡しては、いつか買おうと思いつつ、
今ではないと思っていた。
そんな本が実に多い。
その今がいつ来るのかわからない。
来ないまま、ずっと下に残り、
どこかのタイミングでトレイから消している。
それでも、残り続けてきた本の一冊。
なぜ今だったのかは、わからない。
わからないけれど、気づくと買っていた。
同じような一冊の本と一緒に。
もう一冊の本はまだ読んでいないが、
何となく心に残るような気はしている。
大好きだったドキュメンタリーからの一冊。
読んで頭に残ったのが、“無目的的”。
この数年、目的という言葉を耳にする。
ビジネスでは、ミッションやビジョンよりもパーパス(purpose)だと。
最近は、パーパス経営なる言葉もいろいろなところで聞くように。
新しい組織のティールでも、この目的が鍵になっている。
他にも何かにつけ、「その目的は?」と言ったり聞かれたりする。
私もその一人だったが、これだけ言葉が氾濫すると嫌になる。
天邪鬼の性格だからだろうか。
押し寄せる言葉に、背を向けたくなる。
「目的を決めなくても何となく成立することはできないのか」
こんな疑問がこの数か月、頭の片隅で語っていた。
そういえば、以前ビジョンの重要性が叫ばれているとき、
似たような話をしていた。
「ノービジョンでもいいよね」
当時の感覚がよぎっていた。
そんな中で、手にした本だった。
そして、映画と同じく私を立ち止まらせ、大きな気づきをくれた。
詳しい内容は、ぜひ読んでほしい。
しかし少し簡単に紹介して、知ってほしい。
私たち健常者目線では、何かにつけ目的や意図を明確にしろと声を荒げる。
目的もなく生きていると、時には叱責されさえする。
しかし、障がい(この本では知的障がい者)をもった人は、
目的や意図などを明確には持ちにくい。
障がいをもった人の目線を通して、
私たち健常者がどう改めるかを問われているように思う。
それが、タイトルにも現れているように思えた。
印象に残る言葉は数多くあり、その一部を紹介したい。
もし心に引っかかる何かがあれば、
ぜひ本を通して今いる世界の対岸の世界に渡ってほしい。
こちらの世界を見渡してほしい。
そして、実は対岸ではないことに気づいてほしい。
目的を持たないということは、身体の求める方向に素直に従って生きることであり、決して怠慢な生き方ではない。自分の知っていることに頼って素直に行動することだから、自然体であり波風の立たない生き方になる。
目的をもって必死にそこに向かう生き方もいいけれど、目的を持たないという美意識に私は憧れる。
目的をもってそこに向かうことに正しさを求めがちだが、
美しさをより求めたい。
偏りすぎている社会だからこそ、
少し反対側に重心を移して均衡を保ちたい。
そんなことを、再認識させてもらえた本だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?