(デザイン⑬)会計におけるデザイン ~デザインからみた会計の問題
会計とは、「会社の経営(状態や業績)を表したもの」で、数値や図表などを使って表している。図表などを使うと明らかに目に見えるから、経営がわかる、いやわかった気になる。しかし、実態は図表などからは決してわからない。
みせたい情報だけをみせて、みせたくない情報はみせていないから、わからない。また図表には、みせ方を工夫して作り手の「こうみてほしい」「ここは気づいてほしくない」という意図が働いているから、わからない。
そう実は、会計情報から経営を読んでいるようで、読まされている。気づかないところで、読み手の意識はコントロールされている。
この読まされている会計情報を信用することに大きなリスクが潜んでいることを、多くの人たちは知るようになった。目に見える会計情報だけを信じた結果、20世紀末から多くの会社の粉飾や不正が表に現れ、金融危機など経済・経営問題も数多く起きた。
そこで結果だけでなく、目に見えにくく・表しにくい成果などに意識を向けるようになった。
近年採用が増えている統合報告では、数値で見える財務情報と数値では見えにくい非財務情報の二つを併せて、会社活動が見えるレポートの形になっている。結果だけを表すのでなく、成果も示すように変わりつつある。
この二つ(見える/見えにくい)の情報を併せて見ることで、経営の実態がよりみえてくる。わかりやすくいえば、片目をつぶって見るのと、両目を開いて見るのとの違い。見える景色が大きく変わってくる。両目で見ることで、奥行きが現れ、立体的な情報になる。
奥行きにあたる成果をどう示すかが、これからの経営課題である。
奥行きにあたる成果は、数値化が難しい定性情報。この見えにくい定性情報をあえて見えるように無理をして、見える化・数値化・定量化をしている。
しかし、この無理がかえって誤解を招き、混乱を生んでいく。見える化などをすることで、見えにくい・表しにくい情報は削られていく。さらに余白のない、数字で押し詰められた息苦しい情報になる。
数値化などにすると前後の文脈がなくなり、線ではなく点でしか見えなく、見なくなる。
ただみせれば示せば、いいのではない。見えにくい・表しにくい情報には、見えにくいから・表しにくいからこその “価値” がある。
価値を文脈で表現すること、これがデザインの力になる。