つながった糸。|ドラマ感想
これは、以前使っていたブログに当時観ていたドラマ『Woman』から感じたことを投稿した文章。読み返して今も大切だと思い、色あせない言葉が散りばめられたドラマだったので、改めてnoteに投稿することに。
++++++++++++++++++++
『Woman』の第9回は、つながり始めた糸の一つ “小春と紗千の糸” がつながり、よかったというのが一番の感想。相関図はこちらに。
今回は、「償い」が大きなテーマだった。
紗千(田中裕子)と健太郎(小林薫)の夫婦の会話の中ででた「償い」。
栞(二階堂ふみ)と健太郎との会話の中ででた「償い」。
重たい償いの前に、微笑ましい二つのシーンから。
入院して小春からの差し入れの中にあった、将棋の本をみて、微笑む小春(満島ひかり)。小春は先生(高橋一生)に趣味を聞かれて、「将棋、読書、バトミトン」と答えていた。小春の微笑には、紗千が覚えてくれていたことの嬉しさが微笑みの中にあった。
もう一つは、健太郎と紗千、そして子どもたち(望海ちゃん、陸くん)の川の字。小春の子ども時代を話す紗千、そしてそれを嬉しそうに聞く望海ちゃん。紗千が望海ちゃんに言った一言が何故か心に残っている。この言葉に込めた紗千の想いを考えるだけで、ほっとなれた。
「あなたたちの素敵なお母さんになりました。」
微笑ましい話から変わって、紗千と小春の2人の空間。
この無言や短い言葉の中にある、行間がすごく重たく悲しく苦しかった。ドナーの結果(不適合)を伝えて、ただ謝り続ける紗千。
「丈夫な子どもに生んでやれなくてごめんなさい。」
この言葉は多くのお母さんが子どもを想う気持ち。いろいろなことを背負って生まれた子どもに対して想うお母さんは多い。元気な体で生んであげられなかったこと、もっとおいしい食事や十分な食事をあげられないこと、両親がいなくて寂しい想いをさせることなどなど。
それ以上に、エアーあやとりのシーンは胸が締め付けられた。途中のシーンで赤い糸が見えたときに、「糸がつながって本当によかった」と。小春が「紗千や栞を一生許せない」と言ったのは、本心ではないだろう。今の小春には、誰かを許す、許さないなどの感情はもうないと思う。言い放った言葉とは逆に、母の紗千に伝えているように見えた。
「もういいよ、お母さん。」
途中から小春は紗千に敬語を使わずに、溜めていた想いをぶつけるシーンがあった。「返事して」とは、「こっちをちゃんと見て」という、子どもが親に言うのと重なった。初めての「お母さん」そして「お母さん、助けて。助けてほしい」。やっと、紗千と向き合えたんだなと。抱きしめる紗千、そして腰に手を回す小春の姿。ずっと、小春は母親に抱きしめられたく、そして抱きしめたかったんだと。
他に、健太郎と栞の会話。
健太郎は諭すように栞に「償い」を訴えていた気持ちはわかる。自分が同じ立場なら、そうしただろう。しかし、栞も彼女なりに4年間苦しみながら償いを探してきた。感想を綴り始めた頃にも綴ったけれど、信(小栗旬)の絵を書いていたのもその一つ。罪の意識を独りで背負ってきた栞にとって、一番言ってほしくない人に言われてショックだったと思う。
諭す、叱る、怒る
よく意味の違いが言われる。これはその行為をしている側の感情や相手への向き方や関係性による。行為を受ける側にとっては同じようにしか最初は思えない。「今思えば親の気持ちがわかる」とよく耳に、そして口にすることがある。当時の子どもの心理状態では区別はつかない。
一番気になったのは、栞が河原で健太郎に何をつぶやこうとしたのか。「お父さん、助けて」のように思った。
助けてと言いたくても、言ってはいけないと踏みとどまっている気がした。誰かに「助けて」と言いにくくなっている社会。いじめを受ける側だけでなく、いじめをしている側でも誰か私を止めてと思っている子どもがいる。
他にも生活に困っていて社会に助けを求めたくても言いにくい。
悲しい事件が起こった時、「何故助けてと言ってくれなかったのか。言えば助けられていたのに。」と聞く。その簡単な言葉を「言えない」社会になっていて、その社会でみんな毎日生きている。
栞の「4年間何もしていない」は、事件以来彼女の時計は止まったまま。今少しずつ歩もうとしている、そして小春のドナーになることで時計が進めたらいいなぁと思う。
気になったのは、ドラマHPの予告内容。
栞は街で信を突き飛ばした男を見つけるみたい。彼女なりの償いとしてその男にどうするのか不安。その時何事も起こらなければいいと願う。栞が突き飛ばされたりしないか。
よく「償い」ということを聞くし、言う。でも、その償いはいつまで続くのだろうか。償うべき相手が「もういい」と言うまで続くのだろうか。果てしなく一生背負っていくのでは、悲しい。栞が選ぶ償い方が非常に気になる。
それと「小春と栞の糸」。どうつながるのかが、気になってしょうがない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?