(デザイン⑥)意味づくりとしてのデザイン ~センスメイキング
2015年春に、センスメイキングという言葉に出会った。出会った時もそうだが、今振り返ってもこの言葉に出会えたことに、大きな意味があった。
知人に私のストロングスキルは何かと尋ねた。ある程度答えを予測しながら、その答えを確認したくて。しかし返ってきた答えは、予測していない、想定外の、初めて聞く言葉のセンスメイキングだった。
始めは「センス?」「感性をつくる?」と思ったが、内容を聞くと違っていた。聞いたことのない言葉、意味が全くわからない言葉、そして自分に関する大切な言葉。好奇心がふつふつと沸き起こり、参考になる本を教えてもらい読むことにした。
その本は、『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』(カール・E・ワイク著)(※)
(※)この本ではセンスメーキングと書かれているが、その後出版された別の本ではセンスメイキングとなっていて、また一般的にもセンスメイキングなので、以下の引用などはすべてセンスメイキングに統一している。
何度も読み直したが、読む度にいろいろな発見が生まれてくる本の一冊。この本に書かれているセンスメイキングは、私のやっていることであり、私の考えるデザインやイノベーションの概念にも近い。知人が言ってくれたように、私が気づいてなかったストロングスキルそのものだった。
本ではセンスメイキングのいろいろ定義が紹介されていた。研究者によって定義は違うが、特に印象に残った言葉を紹介したい。
センスメイキングとは実にうまいネーミングの概念である。というのは、文字通りそれは意味(sense)の形成(making)を表現しているからだ。能動的な主体が、有意味で(sensible)、知覚可能な(sensable)事象を構築する。彼らは「未知を構造化するのだ」。
( P5より )
センスメイキングという概念は、解釈そして再解釈される痕跡を刻む行為や活動や創造を浮き彫りにする。
( P17より )
センスメイキングという概念は、それが解釈に先立った発明に光を当てているがゆえに価値がある。
( P18より )
意味は(生じなかったり失敗したりするような構築を必要とするよりも)すでに存在し発見されるのを待っているのだ。
( P20より )
私はセンスメイキングを、「 “何か” を意味あるものにすること」だと解釈することに。センスメイキングには大きく二つの役割がある。一つは橋渡しとして、もう一つは触媒としての役割がある。
前述の意味とは何かで鍵とした “つながり” にも近い。センスメイキングは、私の考える「意味づくりのデザイン」、そのものであった。センスメイキングという言葉に出会って、すでに言葉としてあったこと、マネジメント(特に組織づくり)において重要なスキルであることに、嬉しさと力強さをもらった。
(補足)
2018年11月に発刊された『センスメイキング ~本当に重要なものを見極める力』は、ここで紹介した『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』とは違う解釈ですが、面白いです。二つの視点から自分なりのセンスメイキングを探してみてはどうでしょうか。