(アカウンティング⑤)アカウンティング ~マネジメントから会計を考える②
前回、マネジメントの課題とこれからのマネジメントについてふれた。この視点から、“これからの会計”を考えていく。
「会計のもう一つの役割。」
会計の役割は、すでにふれてきた “会社の経営(状態や業績)を表したもの” と “会社を語る” の他に、もう一つ役割がある。
会計は、厳格な会計原則のもと処理を行っている。決められた原則や原則に基づく基準(ルール)を作って、それらをもって管理統制をして、組織や会社は守られている。会社が原則や基準が定めた正しい行動をとるように、管理統制をすることが会計の役割としてある。今でいうガバナンス的な役割。
原則や基準を遵守できなければ、当然のように罰せられる。処罰は目に見えてわかるが、目に見えない深刻な問題が実は潜んでいる。その問題は、原則や基準をもって人の行動を抑制し、人から自由や可能性を奪い、そして人間性まで奪っていくこと。
原則や基準をつくる側は、この問題を知っていてつくる訳ではない。ただ、組織を守るための原則や基準を定めて、管理統制をしている。しかし、原則や基準で縛られた会社や社会を思い浮かべると、何か感じるものがあるはずだ。もっとも身近なのは、学校。
前回、「不確実なVUCAの時代では、管理統制は意味をなさなくなった」とふれた。前提が意味をなさなくなるので、マネジメントの役割は、“管理統制して従わせる” から “抗わずに調和を奏でる” に変わっていく。それも、不確実な世界で起こる変化に抗わずに。
このように考えると、会計の役割も、「会計原則をもって管理統制する」から新しいものに変わらざるを得なくなる。
「会計の役割はどう変わるのか。」
我々が「マネジメント」と呼んでいるものは、その大半が人々を働きにくくさせる要素で成り立っている。
( P481より )
この言葉は、これからの組織の姿について書かれた『ティール組織』(フレデリック・ラルー著)の中にあった、ドラッカーの言葉。この言葉を受けて、「これからのマネジメント2.0は、働きやすい要素で成り立つ」と考えている。
人や組織は、働きやすい環境のもとで働く。そのために必要なのは、人や組織を管理統制して従わせるのではなく、自由に任せること。結果、自主性や創造性を発揮して、人も組織も疲弊せずに生き残り成長を続けていくだろう。
但し考えられる問題として、人や組織がバラバラに道を歩き出すと会社として目指す目的地に辿り着けなくなる。結果、会社としての体をなさなくなり、会社が崩れていく。
そこで、全員で目的地に辿り着くためには、「指針のような方向性を示す」ことがまず必要になってくる。この考えに似たエッセンスとはいろいろな本で出会ってきたが、これもマネジメントの新しい方向性を示しているのかもしれない。
ただ方向性を示すだけでは十分とはいえない。「どこに向かうか」という方向だけ示されても、道に迷い、道を間違え、道そのものを変えたりする。「今どこにいるのか」「方向は合っているか」「方向の修正がいるか」などの、「道を確認する」ことが定期的に求められる。
この二つの役割がこれからの会計に求められると考えている。