(アカウンティング⑱ 最終章)会計がマネジメントを、会社を変える
会計の役割(最終)
先の行動を評価するから役割を最後に一つ加えて、会計の役割を次のように考える。
● 会計で、会社を語ることができる
● 会計で、会社が進んでいる道を確認する
● 会計で、目的までの方向性を示す
● 会計で、会社を自分ゴト化できる
● 会計視点から、会社の存在価値を明文化する
● 会計で、目的に対する行動(実現性・実行性)を評価する
また、会計の可能性でふれた “日本らしいアカウンティング” の役割を、次のように考える。
● 余白をデザインして文脈をつくり、会計情報に有機的な意味を持たせる
● カタチのない会計情報に意味を持たせ、会社がみえる
● 美しく正しい行動を会計でみせる
これら会計の役割から、「会計とは、目的までのプロセスを辿ること」。
辿るとは、道を確認し方向性を示すこと。辿ることで、自分ゴトになって自分の言葉で語ることができる。辿ってきた道・辿っていく道に光を照らす(評価する)ことで、存在価値が見えるようになる。
経営活動を1枚の地図で考えると、今までの会計は「今どこにいるのか」という経営状態を座標(点)としてピンで刺しただけであった。地図にピンを何本も刺すだけでは、目的地には辿り着かない。
目的地に辿り着くためには、「これからどこに向かうのか」「目的地に向かっているのか」「これからどうするのか」という方向性を確認していく必要がある。
この方向性の確認がアカウンティングの役割で、「コンパス」になる。
このコンパスがあれば、プロセス(道)を辿ることができる。
マネジメント1.0の「成長成功すること」を求めず、マネジメント2.0では「生き残ること」を求めると示してきた。これは、成長成功しなくてもいいと言っているのはない。「方向性が正しければ、会社は成長できる」と考えている。この仮説の鍵は、何を成長と捉えるかにつきる。
マネジメント1.0では、狭義の資本(金融資本)の成長を求めた。しかしマネジメント2.0では、広義の資本(人的資本・知的資本・社会関係資本・自然資本など)で成長を考える。実際、統合報告の価値創造プロセスは、狭義ではない広義の資本で広く長く捉え直している。
マネジメントに対する会計の役割
従来リーダーは、経営層が決めた会社の方向性を会社の内外に示してきた。どこを目指し(目的)、どのような企業行動をとるか(理念・ミッション)を示してきた。ただ示すだけでなく、方向性を会社内で浸透させる活動(唱和や勉強会など)も実行してきた。これは階層の上から下へのアプローチである。
しかしマネジメント2.0は、階層のない組織を目指し、リーダーの役割も今までとは変わる。管理統制から解放され自由になった仲間(従業員)がバラバラにならずに、全員が一体になって目的地まで辿り着けるようにサポートに徹することになる。
新しい会計を活かして正しい方向を歩んでいるかを確認・評価し、よりよい会社になるようなサポートをしていくことに変わっていく。
最後に、組織やマネジメントが変わりリーダーをサポートするためにも、新しい会計も変わる必要がある。今までのようなマネジメントの結果をただ表す会計から、会社の方向性を照らす会計に生まれ変わる。
そう、新しい会計はマネジメントをデザインし、会社をマネジメントをリードしていく。