新しい企業レポートの登場|統合報告
「統合報告」の登場
統合報告が求められるようになったのには、時代の変化が関係している。
● 会社に求められる情報の変化
→ 見える資産情報から、見えない資産情報へ
● 経営活動への期待の変化
→ 売上や利益などの量の追求から、理想の社会づくりの質の追求へ
● 事業活動の変化
→ 会社単独の事業から、ステークホルダーとの協創へ
● レポートの役割の変化
→ 報告や説明だけの資料から、コミュニケーションツールへ
B/SやP/Lなどの「決算関連資料」や「決算報告書(有価証券報告書など)」は、過去の業績である財務情報(数字)を中心に、“経済性”を説明した資料。営利・非営利問わず多くの組織が、過去の活動結果(業績)を社外に報告する目的で作成している。
何をしたかという過去の業績はわかっても、業績(数字)の背景・根拠までは決算資料だけでは読み解くことは難しい。
そこで、経済性をわかりやすく説明(解釈)するために文字としての非財務情報(ビジョン、経営戦略、マーケティングなど)が必要になり、「アニュアルレポート」が登場した。
これ以降、投資家の投資スタンスは短期投資から中長期投資に変わり、投資家が求める情報も“見える資産”(財務情報)から“見えない資産”(非財務情報)に変わっていった。
投資家などの市場のニーズ(成長)を追い求めた結果、会社の経営活動が様々な問題を生み出した。そこで、経営活動が社会にどのような寄与(貢献)したのか、または環境を破壊していないかなど“社会性・環境性”の社会的責任が問われるようになって、「CSRレポート」や「環境レポート」が登場した。
さらに視点が社会から地球規模に変わり、“持続可能性”が強く求められ、「サスティナビリティレポート」が登場した。
これらのレポートが会社に強く求められるようになった背景には、ステークホルダーから「会社の経営活動が誰のためにあるのか」が問われるようになったから。売上や利益などの量の追求から、理想の社会づくりの質の追求へと、社会全体の意識の変化が大きくある。
多くの会社では、投資家や社会に求められる内容毎に多くのレポートを発信している。結果、すべての資料を読まないと経営活動全体がみえなくなって、わかりにくくなってしまった。
また、会社単独からステークホルダーとの協創へと、経営活動の拡がり(関係性)が生まれている。
そこで従来の説明レポートから、投資家やステークホルダーとの関係性を築くためのコミュニケーションツールとして、「統合報告」が21世紀になって登場した。
21世紀の投資
従来は、企業が創出する経済的価値(財務的リターン)のみが投資判断になっていた。しかし近年、社会そして地球(環境)に対する影響(インパクト)も投資判断基準になり、次の3つの投資が増えつつある。
また近年は、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標が経営目標になっているかも、投資判断基準になっている。
インパクト投資
財務的リターン(経済的価値)と社会的インパクト(社会的価値)の両方の実現をめざす投資
ダブル・ボトムラインで評価(財務的評価、社会的評価)
SRI(社会的責任投資)
企業が創出する財務的リターン(経済的価値)に、企業が社会に負うべき社会的責任(CSR)を加えた投資
ESG投資
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮している企業への投資
トリプル・ボトム・ラインで評価(財務的評価、社会的評価、環境的評価)
企業に求められるレポート
従来は投資家向けに、企業の創出する経済的価値などを表した決算関連資料や決算報告書、アニュアルレポートなどIRレポートが中心であった。
しかし『21世紀の投資』に挙げたように、企業が社会や地球(環境)に対してどのような影響を与えたか(成果・影響)がステークホルダーから求められるようになり、それに応じたレポートが作成されるようになった。