糸がつながって、輪(和)になった。|ドラマ感想
これは、以前使っていたブログに当時観ていたドラマ『Woman』から感じたことを投稿した文章。読み返して今も大切だと思い、色あせない言葉が散りばめられたドラマだったので、改めてnoteに投稿することに。
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『Woman』の第11回は、最終回、すべての糸がつながった回でした。相関図はこちらに。
いつもはすぐに眠れるのに、最終回の夜はなかなか眠れなかった。シーンが目に浮かぶと、眠れなくなっていく。
まず、ずーっと気になっていた栞(二階堂ふみ)が働き始めて本当によかった。本当の自分を出せたからだろうか、雰囲気が優しくなったように思えた。前回ふれたが、前を向いて歩こうというのが見えて嬉しい気持ちになれた。
それと、信(小栗旬)が再び青柳家に戻ってきた。小春(満島ひかり)が、そして望海ちゃん、陸くんが望んだ毎日がこれからやってくる。紗千(田中裕子)がお花を持ってきた時、何故か涙が出てきた。
栞の結果が出た夜のシーンもよかった。昔紗千が娘の小春としていたあやとりを、紗千が孫の望海ちゃんとしていて、何とも言えない優しい空間がそこにあった。
では、最終回で感じたシーン毎に綴っていく。
【 小春と栞の2人だけの会話シーン 】
“信”を通しての対話で、姉妹の二人は少しずつ分かり合えた気がした。お互いがお互いをどう見ているかを、“信”の言葉を通して話す。最後の最後になってようやく、「姉妹の糸」がつながり始めた。
「適合したら、“その時だけ” 妹と思ってください」
これは栞の言葉。栞はどのような気持ちでこの言葉を伝えたのか。「償い」などの薄い想いではないものが、この言葉にはあった気がする。
【 栞の適合結果を待つシーン 】
無音の中の会話を想像するだけで、ドキドキそしてざわめきを感じてしまった。何よりも喜び方のいろいろさが逆に胸にぐっとくるものがあった。聞こえない言葉を聴こうとすると、いろいろな言葉が顕れてきた。
体いっぱいで喜びを爆発させた澤村先生(高橋一生)。
ただただ抱き合う紗千と健太郎(小林薫)の二人。
望海ちゃん、陸くんをみつけて、そして信を想って涙する小春。
受話器を落とし、報告しに行く時にぶつかって倒した自転車を起こす栞。
【 信と小春の会話シーン 】
「物語の最後のページは、生きている答えである。
ただ人生には答えがない」
誰もが何でも答えを求める時代に対する、強いメッセージとして強く響いた。答えを “今すぐ” 求めることで、人間関係がぎすぎすしている時代。
未来(子どもたち)に委ねることも大切。ただ委ねるのではなく、未来を創るためには、今私たちは誠実に一生懸命生きること。そんな風に聞こえてきた。
【 栞が家に帰り、報告を伝えるシーン 】
家族5人が食卓で楽しむ中、何も言わずに立っている栞。そんな栞に対する紗千の優しさが言葉に込められていた。
「今日だけはゆっくり寝なさい」、「ご飯は食べている?」
また、姉・小春が妹・栞に言った言葉も深かった。
「許せるかどうかはわからない」
望海ちゃんと陸くんが事実を知った時、栞を憎んでほしくないという想い。自分中心ではなく子ども中心に考える、強さと優しさを兼ね備えた小春。そんな小春の栞への感謝の気持ち。
「“私の妹” に伝えてください。
あなたのおかげで生きられる。
あなたも生きてください。」
栞にとって、そして紗千にとっても、これ以上の許しの言葉はない。栞の走る後ろ姿に、これから前を進む強さを感じた。
【 紗千と小春の、未来への祝杯 】
望海ちゃんや陸くんの母親の小春が、“娘として” 母親の紗千に甘えられたシーン。このシーンで感じたのは、「手を握りしめ合う」「対話し合う」。それ以外のシーンでは、「手を取り合う」「抱き合う」。人と人との関係性を、ギューっと伝えてくれた。
先日とあるダイアログで、人と人間の違いは何かという話があった。人間や仲間の文字には “間” があり、これは人と人の関係性が人と人間の違いだと登壇者は話されていた。親子も夫婦も、そしてすべてに当てはまる気がする、特に今の時代に。
紗千が小春に「何もしてあげてない」と詫びた時の小春の言葉。
「守られている、大事にされている」
想い出を通して話すことで、昔も、今もそうだよと紗千に伝えているように思えた。小春の言葉。
「ずっと見せたかった、大きくなった姿を」
「想い出があったから大きくなれた」
「子どもは想い出で大きくなれる」
「私たちはずっーと結ばれていなかった。離れ離れだった。
“私会う” みたいに続いていた、あやとりみたいに」
紗千が絞り出すように言った。
「また会えてよかった、よかった…。いい一日だった」
その後の言葉のやり取りがいい。
「ただいま」「おかえり」
二人が長い間待ち望んでいた糸が結ばれて本当によかった。
このシーンをみて思ったことがある。
もし信の事故がなければ紗千と小春は通じ合えたのか。
あのまま普通に母と娘が会っても、会話はあったのか。
お互い心から笑い、手を握り合うことはあったのか。
栞が望んだ夢は叶わなかったけれど、紗千と小春が願い続けていたことは最後に叶った。信もきっとそれを天国からみていて、「よかったね」と言っている気がしてならない。
人の死に対してこう思うのは不謹慎なのはわかっている。でも、そう思いたい自分がいる。
【 望海ちゃんの絵日記の続き 】
絵を書くことを止めたといった栞が、小春に書いた絵が気になる。明るいタッチの、信もいる家族の絵だと思えた。
【 ラストシーン 】
望海ちゃんは陸くんがかぶっていた兜をみて、気づいた。小春が帰ってきたことを。親子3人が抱き合うシーン。
きっと「ただいま」「おかえり」という言葉交わされたんだろう。そう想像するだけで、笑みが自然とこぼれていく。このラストシーンが本当によかった。
『Mother』の最終シーンは、十数年後に二人の母と娘が再会するシーン。その間何があったのか誰もが知りたかったので、続編などが望まれた記憶がある。私もその一人。
『Woman』では、このシーンで十分。人によっては、姉妹の関係についての続きがみたいと思う。望海ちゃんの夏休み日記「まどいせんの絵」には、栞もしっかり描かれていた。
小春と紗千が元通りの母娘のなるのに、多くの年月が流れた。小春と栞が仲良くなるのには、もう少し時間がかかるとは思うが必ずつながる。今までかなり重たいストーリーが続いたが、ラストシーンは誰もが幸せを感じたはず。
【 最後のエンドロール 】
紗千が、望海ちゃんが、栞が走るシーンに、ぐっとくるものが。その走る先にいるのは、小春。脚本家や監督を始め製作の方々がすごく丁寧に作られたドラマだった。
人と人とのつなげ方、シーンとシーンのつなげ方、言葉の紡ぎ方。最終回も、「最初の雷雨のシーン - 途中の雨を楽しむ4人 - 最後の台風9号の話」。すべてがつながっていて、シーン、言葉ひとつひとつの意味を考えながら観ていくドラマ。今求められるいろいろな要素が織り込まれた素敵なドラマだった。
過去の投稿を読み返して、このドラマをもう一度観ようと。録画しておいてよかった。
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