見出し画像

統合報告の実態|統合報告

採用会社の実態(2017年当時)

統合報告を初めて市場に公表したのは、2002年にデンマークの会社であったと言われ、アメリカでは2008年。日本は2004年に初めて採用され、2011年を境にその年以降は年々右肩上がりに増加している。
その背景には、2008年の金融危機などから会社に対して透明性・持続可能性などが強く求められるようになったことが考えられる。また日経225構成銘柄の半数以上が採用している。今後上場企業だけでなく、多くの会社でも増加することが予想される。


採用される理由

会社は、多くのレポート(決算関連資料、決算報告書、アニュアルレポート、CSRレポート、環境レポート、サスティナビリティレポートなど)を発行している。
多くのレポートを発行する理由は、読み手(投資家、ステークホルダー)毎に、伝えたいメッセージ(経済性、社会性、環境性、持続可能性など)が異なるから。
読み手からすれば、膨大なレポート(量)を読むのは大変。俯瞰的に会社を読み解く(質)ための、分析・検証・評価にかなりの時間を費やすことになり、更に大変に。

私は企業分析をする際、複数のレポートの読み比べに大変苦労した。情報の魅せ方も違い、読み解くのに悩んだ。
読み手を意識すれば一つのレポートにまとめる方が、会社の活動を漏れなく重複なくわかりやすく伝えることができる。

採用理由は他にも。

投資家が企業レポートに求める内容が変わったことが挙げられる。短期間の売買目的から長期間の保有目的の投資家が増え、財務情報(経済性)よりも非財務情報(社会性、環境性、持続可能性)を強く求めように。投資のカタチも、インパクト投資/社会的責任投資/ESG投資など幅広く増えている。

また投資家以外のステークホルダーも会社の活動により注視するようになった。読み手別や伝えたいメッセージ別にレポートを作成・発信していたが、一つに統合したレポートで十分になった。
これは読み手だけでなく、発信する会社側にとってもメリット(労力、コスト)は大きい。

それ以上に、点でなく線(過去~現在~将来)、そして面(経済性-社会性-環境性-持続可能性)の全体性(ホールネス)の視点からの、「統合思考」によるレポートづくり(レポーティング)が経営を見つめ直すことになる。これも採用理由の一つ。

お薦めのポイント

私が企業レポートで顕したい概念(経営のカタチ)とレポートのカタチが、統合報告の価値創造プロセスに近い。

< 共鳴したポイント >
弊社が考える新しい経営のカタチと統合報告の価値創造プロセス図が、同じ循環の考え方を顕している
循環する経営要素を、広義の資本で捉えている


< 統合報告の狙い >

より効率的で生産的な資本の配分を可能とするために、財務資本の提供者が利用可能な情報の質を改善する
複数の異なる報告を基礎に、組織の長期にわたる価値創造能力 に強く影響するあらゆる要因を伝達する企業報告に関して、よりまとまりのある効率的なアプローチを促す
広範な資本(財務、製造、知的、人的、社会・関係および自然資本)に関する説明責任及びスチュワードシップを向上させるとともに、 資本間の相互関係について理解を深める
短、中、長期の価値創造に焦点を当てた統合思考、意思決定及び行動に資する
(「国際統合報告フレームワーク」より)

一般的には“事業価値や事業が創りだす価値”に焦点をあてて経営をみるけれど、統合報告では、“資本”からみた経営の見える化が大きな特徴であり目的。


< 統合報告の目的 >

統合報告書は、組織が利用し、影響を与える資源及び関係(フレームワークでは「資本」と総称される)についての洞察を提供すること を目的としている。
また、組織が短、中、長期的に価値を創造するために外部関係及び資本と、どのように相互作用するかについての説明を目指すものでもある。
(「国際統合報告フレームワーク」より)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?