
24/11/15 手紙
これから寒くなったときにくるまるようの毛布を洗濯する。今はいい天気だけど、午後から曇るらしい。薄い毛布だし、午前中に干せば乾くだろう。そう思っていたのに、思ったより早く曇った。今日は日がでていないせいか、少し寒い気がする。畳の上で横になっているときに、そう思った。
お昼に小鳥書房に行く。着いたときにはインターンの方が2人と、お客さんが一人いた。お客さんはすごく昔に谷保に住んでいたとのことで、貴重な話を聞いた。1970年代の谷保。レコード屋があったことや、駄菓子屋の前ではすごい人だかりができていたこと。ダイエーができるときに色々とあったこと。僕もインターンの方に今やっていることついてで聞かれたり、店主の落合さんからも聞かれた。色々と考えた。
帰り道。ケヤキの葉を見る。随分と赤くなったなと思う。その紅葉した葉の隣の木は、暗い色をしている。少し紅葉しかけているのだが、紅葉の前には緑が暗くなり、赤もまだ控えめな色をするのだろう。
家に戻って昨日のとん汁を温めて食べる。大根おろしの残りを納豆ご飯にかける。
昨日、哲学者の千葉雅也さんがTwitterでリンクだけをつぶやていた、Marcin Wasilewski Trioを聴く。千葉さんがつぶやいていた『January』というアルバムがとても良かったので、別のアルバムも聴くことにした。鳥の群れが、曇り空のなか形をなして飛んでいるジャケットに惹かれる。ECMっぽいジャケットだと思ったら、やはりECMだった。『Spark Of Life』というアルバムだ。
曇り空の中、冷たい空気に包まれる。なんとも言い難い、冷たい恍惚とした気持ち。心地よいのに、どこか冷たく落ち着いている。なにかよくわかないが、貫かれるものがある。
15時ごろ、落合さんから連絡が入る。今小鳥書房にイラストレーターの方が来ていて、僕に手渡したいものがあるそうだ。仕事も忙しくなかったので、少し席を外して再び小鳥書房にいく。
小鳥書房に入ると、またひと盛り上がりしていた。インターンの方とイラストレーターの方だけかと思っていたら、他にお客さんが2人いた。
イラストレーターの方は、第2回小鳥書房文学賞をきっかけに僕の文章を読んでくださったらしく、なにか僕の文に気になるものがあるらしかった。文学賞に応募した日記も読んで下さったみたいで、よかったとの言葉を頂いた。とてもうれしかった。その方から個展の案内のポストカードを頂いた。ポストカードの裏面には手紙も書いてあった。家に帰ってゆっくりと読むことにした。そのイラストレーターの方の個展は、SNSでフォローした頂いたことをきっかけに、丁度行こうと思っていたところだったので、こうしてお会いできてうれしかった。
このときもまた他のお客さんからお話を聞いた。偏見的星座診断の話が面白かった。離人症を経験した話も聞いた。感覚がほとんどなくなるらしい。歩いていても、地面を踏んでる感じがほぼしなかったり、なにかさわっても、なにかにさわっている感じはあるが、なににさわっているかはわからなかったらしい。たとえばこれは木製のものだ、これは布だということが感触ではわからないとのことだ。また、感覚だけでなく、感情もほぼなくなったらしい。だからなにを言われても大丈夫な無敵状態になったとのことだ。自分がゼロの状態、無機質な状態になるらしい。しかし、その方の話を聞いて僕が気になったのが、そのような状態でも欲望は抱くということだった。同じ離人症の人と話したいや、離人症の世界がどんなものか知ってほしく作品を作ったなど。僕は感覚や感情があってこその欲望だと思い込んでいたので、そのようなゼロに限りなく近い状態でも欲望を抱くというのが、言い方は悪いかもしれないが、興味深かった。
家に帰って頂いた手紙を読む。手紙を読んで、とてもうれしい気持ちになった。夕方にSNSのDMで手紙のお礼を送り、またうれしい言葉をいただいて、本当にうれしかった。これからの文章を書く励みになる。
少し前に、小鳥書房文学賞の講評を読み考えたことの記事で、「たった一人でも読んでくれる人がいるならその人のために」ということを書いたが、もっと言えば、たった一人が一瞬でもなにか思ってくれるなら、その一瞬のためでもいいだろうと思った。
しかし、こうして手紙で直接言葉を届けて頂けるのは本当にうれしい。ありがたい。その手紙も気持ちも、ずっと大切にしたいと思う。
今週土曜日の小鳥書房でのイベントのための買い物をしに、国立駅へ向けて歩く。今日は大学通りが少し長く感じる。たまにそういうときがある。
22時ぐらいに、本を読みながら再びMarcin Wasilewski Trioの『Spark Of Life』を聴く。23時過ぎぐらいに、布団に潜って、うつらうつらしてきたので、ベッドランプの灯りを消して寝た。