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24/7/4 旅人気分

勢いよく通り雨が通過している。通り雨はやがて天気雨になった。吉祥寺に映画を観に行く。

赤い夕焼け。通り雨の跡。大学通りでは日暮らしが鳴いていた。ご飯を何にするか迷った。国立で食べることも選択肢に入れていたけど、せっかくならと吉祥寺で食べることにした。タコライスのお店も考えたけど、反対側の公園口にでる。今度はタレカツのお店にしようかと思った。だけどお昼も揚げ物を食べたから控えたいという気持ちが勝った。
そういえば高架下のうどん屋には一度も行ったことがなかったに気付き、どこで食べるかが決まった。冷たいえび天うどんを食べれて満足した。そのあとはふらふらした。路上に出されたステンレスの棚には、ピザを切るカッターやら専用性が強い道具が出されている。今日はなんだか旅人気分。いつもは入りにくく感じてしまうハモニカ横丁の立ち飲み居酒屋も入りたいと思えた。ほんとうに一杯いきたいけど、これから映画。途中トイレに行きたくない。しかしそんなこと気にしないで飲めるようになりたいとも思う。パルコの入口に入ってしまうのが寂しく感じた。
映画の時間まで30分は余っている。ソファーに座って少し本を読んだり、チラシを見たり、物販を見たり、チケットを発券してコーヒーを頼んだりして過ごす。コーヒーができるのを座って待っているとき、ふとカウンターに奥にある電子レンジを見ながら、今日は色んなものが目に入るなと思った。この30分は確かに退屈な時間であるが、楽しくもあった。退屈だからこそだろう。スマホから退屈を取り戻し、退屈を割り当て直す。

ヴィム・ヴェンダース監督の『アンゼルム』を観た。メインビジュアルに圧倒的没入感と書いてあって、その謳い文句は、ただ映像美を謳っているように思えたのだけど、なるほど、始まってみて没入感が分かった。
この映画は純粋なドキュメンタリー映画ではなく、アート映画でもなく、リアルかつファンタジーであった(それもファンタジーという言葉を使うのが躊躇われるほど)。
『PERFECT DAYS』では観察的であり、追いかけるといったようであったが、アンゼルムは視線の先を捉えようとしたり、この映画がアンゼルムと共に辿るように思えた(後にHPを見たら、「共に辿る」とイントロダクションの見出しで書いてあった)。没入感を感じるシーンはこれとは別パートのようだった。それは歴史と神話を感じさせるためにあったのだと思えた。
アンゼルムが作品を制作しているシーンも強く印象に残った。その制作行為は、燃やしたり、叩くようだったりと傷を付ける行為であり、それは傷をもう一度蘇らせるようだと思った。
そしてアート映画ではなく、アートを撮ること、アートの映画だった。この映画でしか成しえないことが、ヴィム・ヴェンダースとアンゼルムによって成されていると思った。

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