立ち食い蕎麦
大学を出るまで、あるいは実家を出るまで駅構内にある立ち食い蕎麦屋の存在意義が分からなかった。
厳密には「出勤時間帯の需要」が分からなかった。普通妻帯者なら家で朝食べてくるし、異常独身男性でも朝飯くらい食べてくるだろうと。
そんな駅ナカ蕎麦屋を始めて利用したのは友人と秋葉原で飲んだ帰り、〆にラーメンってほどイケイケじゃない、なら蕎麦にせんかと。確か頼んだのは山菜そばだったと思う。具材はまぁ豪華でもなくしょっぱくもない塩梅、汁はチェーン店よりしょっぱめで〆に最適な味だった。
それから暫くして二日酔いの朝、朝食の用意ができるはずもなく出勤。電車を降りて視界に飛び込んで来たのは立ち食い蕎麦屋、あぁ…そういうことか。
かけ(そば)を頼み10秒足らずで着丼(?)、適当に空いている席を陣取り実食。しょっぱ目の味の意味をこの瞬間理解した。といっても二日酔いオンリーではなく、朝一番寝ぼけた体に程よく効く塩梅で朝ラーよりは優し目である。
ほっこりして周りを見渡せば年齢問わず背広着たサラリーマン、それに紛れて何やってるか分からん兄貴やジジババ。何故こんな時間にこの店で飯食ってるのか今なら理解できる。二日酔いの者、朝飯が無かった者、何となく家に居たくない者、夜勤を終えた者…きっと事情は異なるがそれなりの理由があって此処にいるのだろう。
自分の思慮の無さを少し恥じた。誰だって朝飯を家で食えないこともあればそいう事情だってあるだろう。理由は大概だろうがこうした形式の店が昔からあるということは居酒屋とは別種の、それでいて社会に必須の場所なのだ。
何度か足を運べば阿吽の呼吸でオーダーを済ませ、たまには別のメニューを頼もうかとついつい次を楽しみにしている自分がいる。
この記事を書いている明日はお世話になりたくないなぁ…