【竹とんぼ理論】と【ミスコミュニケーション】の笑い(ネタの作り方)
前回の記事で竹とんぼ理論をご紹介致しましたが、
メソッドとしては粒度が小さいので、活用しようと理論からネタを構築しようとすると難しいかもしれませんね
テンプレート的なものに落とし込めると使いやすいですね
【竹とんぼ理論】を提唱してから私が意識を強くしたネタの型として、【ミスコミュニケーション】があります
【ミスコミュニケーション】とは正しく伝わらないということです
つまり、会話が噛み合わない、価値観が合わない、という状況が笑いを生み出しやすい設定であると考えました
話がうまく通じない。当たり前の価値観を理解してもらえない。そんな状況は、ツッコミ側の感情が非常に揺さぶられます。
ボケの方も、素で話が通じていない。価値観がズレた中での間違っていると思っていない発言がボケになるので、自然にボケる事が出来ます
自然な発言が、相手の感情を大きく揺さ振るので、竹とんぼ理論が当てはまります
それだけでなく、ツッコミが、次の笑いの導入になりやすい点が非常に漫才やコントを作る上で強力な要素になると考えています
普通、人は相手に意図が正しく伝わっていなかったりすると、もっと説明して伝えようとしますよね。
それが、ネタの中で会話を続ける流れを生み出しますし、熱量もどんどん上がっていきます。
そしてミスコミュニケーションを土台としているので、ツッコミの発言がズレて解釈されたり、違う価値観で反論されたりするので、ツッコミの台詞が次の笑いのフリになっていく仕組みが生まれていきます
私のコントの一部を抜粋
(もっといい例はありますが、現在公開中のものから)
テク山:まあ、30分くらいの遅刻で済んでよかったよ
ジル谷:そこじゃない!命に別状がなかったことを喜べよ!
テク山:うちの優秀な医療用アンドロイドのおかげだな
ジル谷:ルンバじゃなくて、そっちを移植出来なかったのかよ!!
テク山:するわけねーだろ
そんな判断したら遅刻30分じゃ済んでねーぜ??
ジル谷:ルンバを移植したのって、所要時間の問題だったの!?
テク山:そうだよ!医療用アンドロイドが、
『我々の、人間と同等な運動機能の命令系統を脳に移植します』
なんていうから、慌てて拒否したよ!
とにかく一番早いので頼むって!
ジル谷:まさかの強い意志の元での判断!!
テク山:頭打って動けなかったけど、頭だけは冴えてたからな
ジル谷:意識朦朧とした中で、判断委ねとけよ!
テク山:意識朦朧としてたら、助け呼べてねーよ!死んでたよ!
ジル谷:そうなるのかよ!!
テク山:あはは、こいつ脳みそルンバ野郎に論破されてるー
(くるくるくるくる)
ジル谷:回るな!煽るな!笑えない自虐をするな!
テク山:ま、これが事の顛末だよ。
ジル谷:俺はこっちだよ(くいっ)
テク山:あ、人間とのふれあい……
お分かりいただけますでしょうか?
二人の掛け合いが途切れることなく続いていますね
(面白いかどうかはさておき)
特に抜粋の序盤が分かりやすいですが、ツッコミのジル谷のセリフが、次のボケのフリ、話題提供のような形になっていますね
ジル谷:そこじゃない!命に別状がなかったことを喜べよ!
テク山:うちの優秀な医療用アンドロイドのおかげだな
ジル谷:ルンバじゃなくて、そっちを移植出来なかったのかよ!!
テク山:するわけねーだろ
そんな判断したら遅刻30分じゃ済んでねーぜ??
命に別状がなかったことを喜べよ!というツッコミをフリにして、医療用アンドロイドというルンバなんかよりよっぽど優秀そうなテクノロジーが存在していたという事実が発覚します。そこから、価値観の違いがさらに顕著になっていく様が描かれています
根っ子にある価値観の違いからくるミスコミュニケーションな状態が、話を掘り下げれば掘り下げるほど顕著になり、感情の揺さぶりがエスカレートしていきます
つまり自然とネタのテンポが上がり、熱量も高い状態でネタを進行することが出来ます
実際には、出オチやワンパターンで尻すぼみになることも多いですが、
賞レース向きの勝負ネタに求められがちな要素を満たすネタに仕上げやすい仕組みになるのではないでしょうか?
(勝負ネタに求められがちな要素)
・高い熱量
・序盤から勢いに乗る
・勢いが落ちずに、展開が進む
・最後にもうひと展開来てさらに爆発
最後のもうひと展開さえ作れれば、かなりいい線行くネタに仕上がりそうな感じがします
そんなミスコミュニケーションの笑いですが
実際の芸人の例でいうと
漫才ならM-1のネタでいうと
ブラックマヨネーズ(極度の心配性とのミスコミュニケーション)
チュートリアル (妄想男とのミスコミュニケーション)
かまいたち (屁理屈男とのミスコミュニケーション)
さや香 (価値観の違う男とのミスコミュニケーション)
コント漫才ではなく、しゃべくり漫才が目立つのは、コント漫才におけるメタ視点の要素がミスコミュニケーションにおける熱量上昇を阻害するからかもしれませんね
コント漫才で話がかみ合わなさすぎると、一旦コントの外に出てツッコミを入れないと成立しなくなるみたいなところがあるからかもしれません
一方コントでいうと、例が私が所持しているDVDからになりますが
ラーメンズの『インタビュー』『バニーボーイ』
バナナマンの『Secretive Person』
ジャルジャルの『理解不能者』
それもそのはず、私が研究材料としてヘビロテで観まくったコントですからね
(単純に大好きなネタってだけですけど)
ラーメンズとバナナマンのDVDを観まくって、もやもやと理論が出来そうだったときにジャルジャルの『理解不能者』のコントを観て、「あ、伝わらないのって面白いんだ」と思ったのがきっかけでカチッとハマったような気がします
という訳で、数々の腹がちぎれるくらいに笑ったネタ達を構成していたミスコミュニケーションという設定
ネタ作りの参考にしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに私は10年近く、心の中で【ディスコミュニケーション】と呼んでいましたが、この記事を書くにあたって改めて調べたら、ディスコミュニケーションはそもそもコミュニケーションが取れない状態であり、ミスコミュニケーションは、正しくコミュニケーションが取れない状態であると発覚し、にわかにミスコミュニケーションという言葉を使い始めました。
お恥ずかしい限りです