
さめぼうず
いつもぼーっとしてんだ。
汚ねぇ海の砂浜で、朝から晩までぼーっとしてんだ。
なーんも変わらん景色をただじーっと見てる。
飯はたまに、その辺の海藻やフナムシをそのまま食ってらぁ。
時折海見るの飽きんのか、打ち上げられた枝や木材なんかで遊んでる。
んで遊ぶのに飽きたらまた海見てぼーっとすんのがさめぼうずの日常だ。
ちびがきのくせに大層な牙を持っててな、気持ち悪いというやつもいれば、海の神様の使いっちゅう考えを持ったやつもいる。
ある時酔っ払いがさめぼうずをからかったんだ。
「お前は鮫のばけもんだ。」
さめぼうずはそれ聞いてなーんも答えずにこにこしてたわ。
やっぱり変なやつなのは確かだ。
でもその後が大変よ。
その酔っぱらい、さめぼうずの口に手を近づけたんだ。
「噛んでみろ、噛んでみろ!」
さめぼうずはいつも通りにこにこしてな、酔っ払いの指を思い切り食いちぎったんだ。
酔っ払いは当然逃げてな、さめぼうずはまたニコニコしながら海見てんだ。
だけどよ、さめぼうずの野郎、最近人を見るようになったな。
ぼーっとな。
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