ミント吉岡

ミント吉岡は中年の芸人である。

テレビにはあまり出ないが、地方営業や動画サイトでよく見る人も多い事だろう。

ミントブルーのスーツを着ており、得意のショートコント後の掛け声は「エクセレント爽やか！」、そして掛け声に負けない爽やかな笑顔。まさしくミントと呼ぶに相応しい。

スマホのカラーも、時計も、お気に入りのプラモデルもミントグリーンにしているそうだ。

お笑い劇場のスタッフを10年やっている私だが、芸風も身につけているものも、ここまで爽やかな統一感を出しているのは彼だけだろう。

今日も程よく笑いをかっさらった後、ステージ裏に帰ってきて椅子に座り、休んでる彼に私は水を手渡す。

「お疲れ様です！今日もネタ良かったですね！」

「ん、ああ。ありがとう。」

彼は静かに笑った後、水を一口飲む。

私はその最中つい質問してしまった。

「吉岡さんは、ミントブルーお好きなんですね。何か理由があるんですか？」

彼は息を軽く吐きまた少し笑った。

「彼女が、この色好きなんだ。そのせいで、芸風も格好もこんな感じになってね。」

「そうなんですね！彼女さんとは付き合い長いんですか？」

「ああ、とても長かったよ。笑顔が素敵な娘だった。俺のこと、見つけてくれたかな。」

彼は話が終わるまでにっこりしていたが、私は後悔を味わっていた。