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『なぜアーティストは生きづらいのか』読書レビュー


年が明け、仕事が始まるまで時間があったので、ずっと読みたかったけど読めていなかった本を読みました。 


この本でいう“アーティスト”とは、主に音楽業界で生きるアーティストのことを指しているようです。
でも、その他の業界で生きるアーティストさんにも十分当てはまるんじゃないかな、と思いました。

題名だけを見ると、アーティストさん側から、「アーティストだけど、別に生きづらさを感じてない」
という声がありそうです。

『生きづらさ』という言葉は、“社会との関係の中での生きづらさ”のことを指していると思います。
そう考えると、どの世界にも一定数生きづらさを抱えている人はいますし、人よりも尖った個性や才能を持つアーティスト達は、社会の中で生きづらさを感じやすい人が多いように思います。


この本は『生きづらさ』、つまり、自分が生きる業界のあり方や人間関係でうまくいかないと感じているアーティストや、
そんなアーティストを見て困惑している周囲の方のために書かれた本でした。

またその原因ついて、多くのページを『発達障害』という切り口でひも解いています。
『発達障害』という言葉で興味を惹かれる方や、心がざわつく方は、ぜひ読んでみて下さい。


発達障害とは


『発達障害』という言葉は一般にも浸透してきましたが、『発達障害』は正しく理解するのが非常に難しく、お医者さんでも診断が難しい障害です。

私自身も一般の方よりは理解があるつもりですが、「正しく理解しているか?」と問われると、「正しく理解するように日々努力しています。」と答えるのが限界です。

この本は、『発達障害』について全く知らない方が読むと説明が十分じゃない所もあるかもしれませんが、音楽関係者の方と発達を専門にする精神科医の先生との“対談”の形で進んでゆくので、たくさんの例や体験談が出てきて、特性を持った方のイメージが湧きやすいです。

また『発達障害』は、
“障害というほど本人を苦しめるものか、それとも個性の範囲か?”の線引きが難しく、障害と個性の間がグラデーションのように曖昧である(スペクトラムという考え方)と言われています。この本は、そのことを丁寧に書いていて、

“障害だとは思わないけど発達(得意・不得意)の凸凹があって、そのおかげで素晴らしい作品も生み出すし、苦しみもする”

というタイプのアーティストさんが、自分のことを深く知れたり救われたりするんじゃないかなと感じました。


私の勝手な印象では、クリエイティブな作業も求められるタイプ(作曲もするシンガー、振付けも自分でやるダンサーなど)の方は、ADHDっぽさがある方が比較的多くて、
高いテクニックを中心に求められるタイプの方は、自閉っぽさがある方が多いような気がしています。
(※ADHDも自閉も、発達障害の種類です)

 

まとめ


パフォーミングアートの世界は、才能があり良い作品を作れる人が生き残る、という意味では全く“平等”ではない世界ですが、
でも個性(特性)を持った人が自分に合った配慮を“公正”に受けられる世界であれば、もっとたくさんの素晴らしい作品が世の中に出るかもしれないな、と思いました。


この本はそのことを切に願っていて、こういうことを考える人がもっと増えたらいいのにと思います。私も考え続けようと思います。

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