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『始まりの堕天使』桐生一のネーミングを語りたい








 俺だ。

 宮本です。
 去年の11月半ばのこと。突然日清(どん兵衛)のX公式アカウントがこのような投稿をしました。

 NMRの講義を受けた後シワッシワの顔面で昼飯のかぷめんを孤独ロンリーに啜っていたらこの投稿に気付いた。意味が分からなかった。

 この「異能バトルは日常系のなかで」という作品はもう原作が完結してから6年ほど経つわけだけども、なんだか久々に熱をぶち込まれてしまったンで桐生さんのネーミングについて語らせてください。
 語りスト宮本、イキます。


本題・桐生一

堕天使の鉄槌は愚者へと振り下ろされるルシファーズストライク

 彼自身が持つ重力冒涜の異能につけられた能力名。まさに彼の代名詞にして名刺代わりの逸品。作中でも桐生は長いネーミングが得意と言っていることもあって非常に完成度が高いんですね。

 一つ目の魅力は「本文とルビのバランス」。これは厨二ネーミングでも最もベーシックな「本文+特殊ルビ」ってタイプのネーミングなんだけど、本文のゴテゴテ装飾が効きまくっている印象に対してルビの方がかなりシンプルにまとまっている。この辺りは彼のバランス感覚のなせる業。下手な素人だとこの本文にドイツ語とかでルビ振っちゃって厨二度過剰になっちゃう。本文の方の話もすると、特に「鉄槌」の重厚感、「振り下ろす」のGがかかるイメージが重力操作能力に相応しいと思える。

 二つ目は「唱えやすさ」。「ルシファー」も「ストライク」も厨二病患者としては語彙の引き出しの最前列にあるようなワードではあるんですが、これは飽くまで「異能名」。実際能力名を叫ぶことを視野に入れるのなら、ルビを凝った造りにするよりも叫びやすさを重視したいわけです。
 全体としてかなり完成度が高いお陰で、ベタな横文字をルビに採用しているのにかっこよく見える。すごい。

※執筆中に色々調べ直していて気づいたんだけど、「Lucifer's Hammer」という慣用句があるらしい。多分これが元ネタ?
 もう一つ、これは本当に関係なさそうだけど、「特攻の拓」っていう不良漫画に「悪魔の鉄槌ルシファーズ・ハンマー」っていうSRの改造単車が登場するらしい。もしかしたら戸木くんが気付いてンじゃねェかなァ~。なんて。


罪罰ミツバチ

 上の異能の応用技。重力を「点」で使用して、相手の体に風穴を開けまくるっていうエグい一発。

 このネーミングは当て字読みが主体のネーミング。所謂ヤンキー文字みたいな感じ。「本文+特殊ルビ」のスタイルと比べるとより漢字の読み方に準拠させるネーミング手法なだけに、どうしても実際の読みに縛られてイメージの適合する漢字を引っ張ってくるのはかなり苦労したはず。

 このネーミング、実際は「罪」の字がくるっと180°回転してるんですよね。頭おかしいのか?桐生は厨二設定として堕天使を参照しているので、この上下反転させてンのが反転、叛旗、堕天、っていうイメージに合致するし、罪と罰のワードを変に弄らずそのままペアで使えてるのもみやもと的にかなりポイント高い!

 あと似た技に、重力を「線」で使う斬黒ザクロとかもある。こーれもかっちょいい。


太陽神を犯す月の女神セッ〇スエクリプス

 かつての仇敵、遊佐野ファンタジア、もとい遊佐野ジャンルの異能。『軋姫』もそうですけど、工口系の言葉をかっちょいい能力名に落とし込むのホンマすごすぎませんか。12巻によればセ〇クスピストルズに影響されて工口系ネーミングし出したっぽい。あとルビの読みもしっかり韻踏んでいてリズム感もバッチリ。俺としては『六氷女王フェイスレス』より好き。

 ネーミングの由来が日蝕だとパッと分かるし、その上能力のイメージにもピタリと合致している最適ワードチョイス。そもそもこの異能は遊佐野ジャンルがもつ無数の別人格を対象者に憑依させ、意のままに操る「人格破綻の異能」。他人の人格がジャンルちゃんの別人格に食われ、侵食されていく様子を日蝕に見立てている。さらにその日蝕に神格を与えて、アポロンとアルテミスの性〇為と考えてルビを振ると。でもルビとして神名は一切出てきていないので、ゴテゴテしすぎないというか、必要十分な情報が適切に詰められている感じがする。ルビ振りが非常にスマート。

 ここで安易に神の名前とか入れちゃうと初心者感(中二病に初心者も上級者もないが)というか素人感出ちゃいますよね。本文とルビの語句が持つイメージを一致させるのは重要だけど、意味が被りすぎても特殊ルビの意味がそもそも無くなってしまうんですよね。その辺り彼は間違えない、本当に引き算が上手い。


鍵のかかった魔眼エターナルウインク

 視界蹂躙の異能。異能の使用者である齋藤一十三自身が魔眼を扱えるわけではなく、彼女の開いた左目の視界にいる人物に魔眼のチカラ(幻惑とか記憶改竄とか催眠とかそういうやつ)を与える、という中々にピーキーな性能の異能。その使い勝手の悪さを「鍵のかかった」で表現している。単身では効果が無く、他者の介在によってようやく鍵が開くってこと。ルビの「エターナル」もすごく効いてる。

 また、一十三さんって片目隠れキャラなので、ルビのウインクでそこを拾ってるっぽい。常に片目しか見えてないから「ウインク」。彼女の片目と付与された者の片目で両目揃うっていうのも最高ポイントだと思う。


田中運命子

ホンマに最高なおなまえだねえ、運命子たむねえ。よかったねえ。
 叛逆の精霊ゼイオンによって創られた、精霊戦争を根幹から破壊するための人工的な異能者。元の名前は異能ともども『システム』と呼ばれていた。『一方通行』とかそういう感じ。

 これは田中摩美々とかと同じロジックなんですけど、苗字と名前の字面バランスがとにかく良すぎる。
 「運命」とかいうあまりに重苦しい言葉がゴスロリファッションの重厚感や妾口調の尊大さにしっかり結合してる。違和感がない。あと読みが「うめこ」な辺り可愛さを忘れてないみたいでよかった。ちょっと古風な気もするけど先述した通り妾っ娘だしグーです。

(とりあえず紹介しちゃったけどこの名前決めたのって桐生だったっけ……?たぶんそうだろ、)



番外編・浜井羽子

『ハーツ』

 アニメ未登場。9巻で登場した異能者組織の組織名。羽曳野のことだしかなり大規模な組織な気がするけど、本編中で判明しているメンバーは
・花村春人  ・羽曳野初彦
・浜井羽子  ・蜂須賀八葉
・灰村判治  ・長谷川葉月
 の6名だけ。というかここまでヒントが示されていたのにネーミングの由来に気が付いたのが読書n周目だった。だって一番読んでたのって小学生のときだったし~;o;
 『ハーツ』というネーミングはリーダーの名前から「初」をとってもじったもの。またメンバーの氏名が「は」から始まるのにもかかっていそう。
 でもまあ、メンバーの名前にかかってるってのは実際、羽曳野が大量の異能者からメンバー集めるときに自分に課したただの人数絞りの制約というかこだわりなだけのような気もするけど。まあ組織名がつけられたのが羽子ちゃん加入後なら成り立つかも。

 というか組織名考えたのも彼女なのかは知らんけど、少なくともハーツの能力命名担当って基本的には羽子ちゃんなんですよね。あのすごく抱きしめたくなるような感じの子。ハグです。

 ハーツメンバーの異能名を見る限り、多分この子は言葉遊びを入れたり語呂・語感を意識していたり、とにかく字面に凝ったネーミングのような気がする。もしかしたら遊佐野ディスティニアにもこのセンスが継承されているかもしれない。『六氷女王フェイスレス』が「無表情」の、『俯瞰全バードウォッチング』が「不完全」の言葉遊びになってる辺り継承されていると見てよさそうでしょ。
 安藤は短い本文に凝ったルビを振るタイプ、桐生は凝った本文にスマートなルビを振るタイプ、羽子たんは字面に遊びを入れるタイプ、って感じ?

俺が満足したのでここら辺で終わります


※追記
 本題からかなり外れるんだけど、羽子たんについてもう一つ。
 ここでは羽子たんのセンスを「言葉遊びを好むタイプ」としたけど、恐らく「実質的な特殊ルビを使わない」って要素もある気がしてきた。
・『two tool to too trueトゥトゥールトゥトゥトゥルー
・『百一匹狼ワンオーワンワンワン
・『BOMBボンボヤージュ』
 これらって本文の読みに対して”ほとんど”そのままの読みを振ってるだけだよね?

 もしこの推測が正しいのなら、ディスティニアがきっちり特殊ルビを使いこなしていたことから逆算して、
・ディスティニアという人格の発生過程で例外的に桐生一のエッセンスが入り込んでいる(このくらいの暴論の方が楽しいだろ)
・ディスティニアたんが精霊戦争の裏側で桐生のモノも含め厨二ネーミングを猛勉強していた(かわいい)
 辺りの可能性エピソードがいろいろ妄想できて結構楽しいかも。

本当の本当に終わり(くぅ疲)


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