夜明け
今日、私は夜明けを迎えた。
ずっと明けない夜だと思っていた。
でも実は、明けないのではなく、自ら開けなかったのだ。
夜明けではなく世開けとでもいうべきだろう。
私はここ数か月、言い表せないほどの焦燥感や、暗闇に閉じ込められているような閉塞感に閉じ込められていた。
あの、「天岩戸」にでも入っているような感覚だ。
隙間から外部に聞こえるように、『どうやったら出られるんだろうなぁ』と大きな独り言を言って、こうしたらいいよ、ああしたらいいよと助言をもらって、やってみる!としつつも、岩戸を前にするとやれる気がしないで、試すこともしなかった。
この岩戸、固そうで重そうで、絶対に開けることなんかできないと思っていた。
でも、実はそれは、自分で作り上げた幻想で存在すらしていなかったのだ。
外からはバレバレで丸見えだった。
そんな場所において今日、私は世開けを迎えたのである。
師匠と信頼する友人たちによって、私の幻想はもともとなかったものだと解明されたのだ。
これまで、エゴの声とも分からず聞き入れていたことで、私の目前は幾重にも膜がかかり、光の方角さえぼやけて見えなくなってしまっていたのだった。
恐れ、不安、孤独感、人を羨んだり、自分を嫌ったり、不必要な自己犠牲を大切に大切に抱えてきていた。
私を置いていくな!早くここから出してくれ!私を一人にしないで!仲間に入れて!
そう大声で言ってみたら、
ずっとここにいたよ。いつでもそばにいるよ。もうずっと仲間だったよ。と声が聞こえた。
閉じ込められている、独りぼっちだ、助けてくれ!と、目を閉じたまま訴えていたのだ。
気が付いた時の爽快感ったらない。
え…?
は…?
まさか…?
である。
私は、元から天岩戸の中にいなかった。
自分さえ目をつぶればいいのだと、自己犠牲をして見るべきものを見てこなかったのだ。
もう、自己犠牲はやめる時が来た。
いつまでもエゴの声を聞き入れ、のらりくらりとかわしてきた真実の愛を受け入れる時が来たのだ。
長く時間がかかってしまったけれど、ようやくここから始められる。
ここから、今から、新しく始めていこうと、決めた。