ライトが“無”を煌々と照らしていた
仕事中、今日の夜は何を食べよう?や、ズボンまとめて洗濯しよう、あ、明日はゴミの日、絶対ゴミ捨てなきゃな……なんて事を考えながらスマホを見つめ、画面に浮かぶ、部屋に置いてあるロボット掃除機のスタートボタンをタップした。
「十分に発達した科学は魔術と見分けがつかない」
これは好きな言葉で、クラーク三原則の三原則目、最初の一原則とニ原則は覚えていないし覚える気もなかった。お粗末なものである。
ただ、最後を「ニュートンは3つの法則で満足したようなので、私もここで慎み深く止めておくことにする」と締めているのは「どえれぇ“COOL”じゃん」と思ったのは覚えている。
遠く離れた場所からスマホのボタン一つで部屋の掃除が始まり勝手に終わっている。家に帰ると勝手にキレイな部屋になっているこの状態、胸が踊らない訳がない。
仕事が終わり、買い物を済ませ足早に帰宅する。
脳内では部屋に入ってからの洗濯、洗い物、夕飯作りゴミ捨ての手順をいかに効率こなすか組み立てシュミレーションを行い、それに従って行動する、止まったら負け(やらなくなる)である。
玄関を開け、魔法の言葉を唱える
「OK google、電気つけ───────」
言葉が、詰まる
植物用ライトが“無”を煌々と照らし
床に横たわるデケェ木
ぶち撒けられた土はロボット掃除機のおかげかまるで枯山水の様に円を描き
ロボット掃除機は大量の土を吸い込んだせいかテーブルの下で窒息死していた
ある程度状況を理解した後、落ち着く為にソファに座り、煙草を吸った。
帰宅から3時間、ゴミはまだ捨てに行っていない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?