見出し画像

#12 【婚活】 【アプリ】 婚活をしていたときの話 vol.1

私はまだ若かった頃、マッチングアプリを使って婚活をしていました。
最初はオンラインでの出会いに対して危険なイメージばかりが先行していたため、本気の婚活というよりは「いい人がいればいいな」くらいの気軽な気持ちで始めました。

その時に、これはMLM(マルチ)の勧誘が目的じゃないか!(#^ω^)ピキピキという出遭いがあったので、供養のため紹介させていただきます。

・・・

・・・

 ■ アメリカと日本の二拠点生活をする男

ある日、マッチングアプリをパトロールしていた時のことだ。
貰った「いいね」欄をチェックしていると、爽やかな好青年からリアクションが。

彼の名前はタクヤ(仮名・27歳)、早慶上のどこか卒。

職業欄は「総合商社 → 戦略コンサルティング(米国拠点)」 と書かれていた。
プロフィール写真からはいかにも商社マンオーラ溢れる出で立ち。
・・お主、絶対モテるだろ。
私は二つ返事でいいね返をした。

しかも 「アメリカと日本を二拠点として行き来するライフスタイル」 だと。


今じゃアメリカ生活にブーブー文句を垂れ流しながら生きてるけど、一応当時から海外思考はあって、「海外で暮らすとかカッコよくない!?」なんて憧れの眼差しを向けていた時期もあった。

しかも、筋トレが趣味で毎日ゴールドジムで鍛えているとのことだ。
ーー話が合いそうだ。
私も当時、ゴールドジムに通っていたからだ。

彼はアメリカからメッセージをくれていたので、時差を考慮しながら1日1往復程度でラリーを続け、3週間後に初回アポが決まった。
メッセージは当たり障りない感触で、実際に会う数日前にLINEを交換していたので、あまり違和感を感じることはなかった。


 ■ いざ、カマクラ(出陣)!!

初回アポ当日。
・・あれ、タクヤさんだよね?
確かに写真通りではあるが、ものすごく疲れた感じの青年がやってきた。
服もなんだかダボダボのヨレヨレ、ネズミ色で余計に顔色が暗く見える。

「ちょっと特別なカフェ、予約しておいたんだ」
待ち合わせは恵比寿駅であった。
きっとさぞかし大変な激務の中、合間をぬってお店選びをしてくれたのだと逆に申し訳ない気持ちになりながらカフェへ向かった。

まぁまぁ、ここまでは普通のマッチングアプリのデートあるあるだと思う。


着いたカフェは、夜はダイニングバーとしても営業しているおしゃれな空間。
ちょうど休日だったこともあり、結婚式の参列帰りらしきグループが先に入っていたようだ。

しかも、お酒が入ってテンションMAXの酔っ払いたちばかり。
タクヤさんはかなり声を張って話しかけてくれるが、それでも騒音が酷くかき消されてしまう。



 ■ L字着座の意味とは・・

私「ここ、結構にぎやかですね?」
タクヤ「うん、まぁ。でも、すごく特別な話をしたくてさ」

なんだその意味深な言い方は。

ひとまず対面で席に座ろうとすると、
「待って、こっちにしてくれる?」とタクヤが引き止める。
そして私たちは、45℃の着座ポジションで席についた。

https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1402/13/news012.html

薬剤師の国家試験問題にも出てくるのだが、L字に座ることはプレッシャーを与えずリラックスして会話をするためのワザだ。
この時はマニアックな座り方をするな〜としか思わなかった。

食事が始まった。
タクヤが会話を進めていく。

 「俺ね、本当に自由な生き方をしてるんだよね、アメリカだけにさ。」

 「アメリカと日本を行き来しながら、投資とかもやってて」

 「やっぱりさ、お金を稼ぐのに会社に縛られるのって、時代遅れじゃない・・?」

私は少しだけモヤった。
あれ、この人ってキャリアを大事にしてるかと思ったけど違う・・?

今でこそ、こんな話を聞くと
この人本当は企業勤めではなくノマドではないのか?

企業、しかも戦コンなんてレイオフの印象しかないけどこんな緩い感じで大丈夫なのか??

アメリカビザはどうなっているのか???

とツッコミどころ満載なのだが、ひとまず相手を疑うことはよくないので話を聞くことにした。


がしかし、この店、あまりにもうるさい。


 ■ Let's have a drink and party〜!! 状態の店内

酔っ払いA「おい!今日の俺、マジで天才的だったんだが!?」

酔っ払いB「お前は一生無能!乾杯!」

酔っ払いC「店員さぁぁぁん!テキールゥぁァ〜追加ァァ!!ブンブン!!」

・・滅茶苦茶だ。


タクヤの口がモゴモゴ動いているが、何を言っているのか全く聞こえない。

タクヤ「だからさ……限妻ちゃんも……人生の時間を切り売りするんじゃなく
て……」


「えっ?なんですか?」
野◯村氏バリのお耳ダンボジェスチャーをする。

タクヤ「だからさ!人生の時間を・・」

酔っ払いD「カラオケの時間だぁぁ!!!」

シラフ女子E「ちょっとぉぉぉォォ!!!周りに迷惑だから静かにしなさいよぉぉォ!!!(クソデカボイス)」

そして遂に・・


「テメェらいい加減にしろよぉぉぉぉォォォ!!!!」


ーー遂にタクヤがブチギレたのであった!


 ■ 大乱闘寸前!?

ヤバい!タクヤがキレてる!!
そのキレ具合が尋常ではなかったので、ひとまず私は他人のフリをしようとした。

タクヤは酔っ払いを追い回し、酔っ払いはトイレに逃げた。

バチコーーーーーン‼︎‼︎

え・・ま・・マジか!!!
タクヤ、トイレの扉を蹴りやがった!!!


シーーーン・・・

周囲はすっかり静まりかえってしまった。
だがしかし、それでもトイレの扉に向かって出てこいと叫ぶタクヤ。
トイレの人にだけ固執する意味がわからなかったが、どうせガン飛ばされたとかそういう理由であろう。

さすがにこれ以上他人のフリもできなく、私はお願いだからやめてくれとタクヤを止めた。

警察沙汰にでもなったら・・マズい。

その時、店員がやってきた。
退店してくれと言われるかと思ったのだが、なんとグループ客に注意が入っただけ。
いいのか悪いのかわからないが、ひとまず乱闘という事態は避けられた。

ーータクヤと店側はグルだったのだろうか・・。
これは後から思ったことだ。


 ■ 落ち着きを取り戻し本題へ

出会いからほんの15分のできごとだった。
正直もう帰りたかった。

険悪ムードの中、タクヤが太々しく話し始める。

「でさ、話したかったことなんだけどさ、コレ」

「ゴールドジムに通ってるって言ってたでしょ」

「俺、サプリメントとかこだわっててさ、海外の文献とかも見たりしてるの。成分とか特性とかをノートにつけてるのが趣味でね。」

タクヤはノートを取り出した。
・・・そこには、お経がびっしり書かれていた。(比喩)


いやいやいや!!!
今の時代に、手書きで記録をつけてるって何ごとwww
それも、几帳面にノートにびっしりと・・

これを書くのに何時間かかったのかと頭の中をぐるぐる思考を巡らせるのに精一杯で、会話が出てこない。
が、確かに専門的な内容が書かれていることは分かる。

私「あっと・・エト・・」
アセアセして、チー牛っぷりを発揮する私。

私「かなり専門的なことまで・・すごいですね・・」
タクヤ「うん。でね、こうやって記録をつけているうちに、いい商品ってものがわかってきてね。」

・・雲行きが怪しくなってきた。

「よかったらこのサプリメント、使ってみない?」

キ、キタ―――(゚∀゚)―――― !!


 ■ タクヤ、正体を現す

あぁ、そういうことか・・。
コレまでの違和感が全て繋がった。

私は落胆しながら「お金がないので・・」と断った。

タクヤは、「いいよいいよ!俺が貸すからさ!」と引く様子がない。

私「ごめんなさい。日々の奨学金返済でカツカツなので・・。」

タクヤ「それなら儲かるビジネスもあるんだけど、紹介しようか?」

「ブフォっっwww」

笑いをこらえきれずに、カフェのテーブルを軽く叩いてしまった。

いやいやいやいやいや、展開が雑すぎるだろ!!

まるで "選ばれし者だけに伝授する" みたいな雰囲気で言ってるけど、
こんなの完全にテンプレ勧誘コースじゃねぇか!!


タクヤは笑われたのが不快だったようで、ピキりながら続ける。

「ほらほら、"経済的自由" に興味ない?俺ら、話し合うじゃん。」
・・コイツ、仮にも元商社マンなんだよな?大丈夫か?

私「いや、話し合うもなにも。タクヤが話してばっかだよ(笑)」

タクヤ「じゃあなんか聞きたいこととかある?」
この言葉と同時に、タクヤのスマホからアラームが鳴った。

・・なんだ?

タクヤ「あ、時間なんでもう行くわ。次も予定あるんで。」
私「は?」


 ■ ーーそして結末は?

なんて失礼な奴なんだ!!タクヤは一方的に話を切り上げてしまった。
いやいやいやいや、なんだその "ノルマ未達成だから撤収" みたいな態度は!!
制限時間内に商談が成立しなかったので、アポを終わらせたのだ。

私「ねえ、次の予定ってもしかして……?」

タクヤ「あぁ、まぁ、色々ね。時間は大事だからさ。」

ここからは私の脳内。
私は 爽やかな笑顔 を作り、こう言い放った。

「あ!そうだ、タクヤにも紹介したいビジネスがあるんだけど、ちょっといい?」

タクヤ「えっ?」

タクヤの顔が一瞬 「想定外」 って感じに引きつる。
しかし、すぐに 「いやいや、まさか俺を勧誘し返すわけないよな?」 という表情に戻る。

タクヤ「なになに?」

私はスマホを取り出し、ドヤ顔で画面を見せる。

「このアプリ、知ってる?」

タクヤ「えっ、なにこれ?」

「マルチ商法の勧誘を通報できるアプリ。」

タクヤ「!?!?!?!?」

── タクヤ、撃沈。

という妄想をものの数秒のうちに巡らせた。
悔しいが、妄想だけだ。

お互いに「じゃあ。」とドライな挨拶を交わし、その場を後にした。

通報しようと、アプリを開くと既にブロックされていた。
血も涙もない奴だ。

だが、これで婚活は終わりではない。
私は深呼吸し、アプリの検索画面を開いた。

── よし、次だ次!!
しかしその先私を待ち受けているのは、底の見えない婚活沼であることはこの時はまだ知る由もなかった。


皆さんも、「手書きノート」男には気をつけましょう。
彼が行き来しているのは、日本とアメリカではなく、あなたの財布の中身かもしれません。



いいなと思ったら応援しよう!