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#77 「外の世界」にあるから憧れを持つ。それだけ
(986字・この記事を読む所要時間:約2分 ※1分あたり400字で計算)
仕事の都合上、私は今とある辺鄙な工業村でひっそりと暮らしている。
発展途上であるこの小さな村は交通の便がやや悪く、この村の範囲内で暮らす分には必要なものが全て揃っているが、所謂「外の世界」へのアクセスが少し不便である。
電車も通っていない。
隣町まで移動するだけでも一苦労だ。
住民の数も少ないせいか、夜にもなればあたりは真っ暗で静かになる。
騒音が無い分ぐっすり眠れるのはありがたいが、ちょっとした外出で遅く帰る日は夜道がひたすら怖い。
早朝も同様に人けが無いので、いつもびくびくしながら出かけているのである。
思えば日本で暮らしていた頃も、似たような雰囲気の地域の住まいだった。
久しぶりに東京に遊びにいった日の夜。夜道であるにも関わらず、道路が看板のライトによって明るく照らされていることにびっくりし、思わず「大都会じゃん…」と唸ったのは今でも良い思い出だ。
そのせいか、時折大都会に遊びに行きたくなる。
大都会とまでいかなくても、大きめの街。
アフターファイブにトボトボと帰って寝るのだけではなく、ぐるっと外で遊んで程よい具合に疲れてから宿に帰ってぐっすり休める。そんな夜になっても賑やかな所。
だからここのところ休みに出かけたい場所、旅に向かいたい場所で候補に上がるのは都会ばかり。
都心に近いおしゃれなホテルに2泊ぐらいして、昼間はひたすら人気カフェ巡り、といった休暇の過ごし方をしたいのだ。
そして夜はライトアップされた街中を散策し、適当に夕食を食べて部屋に戻り、そこでまたチビチビと夜食を口に入れる。
都会でしか出会えないシックなデザインの内装、その雰囲気を楽しめるのも醍醐味なのだ。
思えば大学時代までは私も都会に住んでいた者。
その頃は夜になれば辺りがしっかりと暗く、静かで休みやすい環境に憧れていた。
お出かけ時は出来るならもちろん郊外か田舎。
「何もない」自然豊かな所をゆっくり散策し、日が暮れる迄には宿に帰りさっさと寝る。
そして次の日は朝早く起きて、日の出を眺めながら一日を始める。
……あれ?
まさに私、今、かつての私が憧れていた生活を毎日しているのだが?
田舎に住めば都会を、都会に住めば田舎を夢見る。
人が持つ憧れというのは、結局のところ「外の世界」に向かれているのだろう。
「外の世界」にあるものだからこそ輝きを感じるもので、それを手に入れればたちまち色褪せてしまう。
悲しき人間の性よ。
📚昔の「憧れ」を手に入れた途端生まれる、新しい「憧れ」
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