第二十二話
1
00:02:04,800 --> 00:02:06,320
(姑娘 この花傘見てかない?)
2
00:02:07,720 --> 00:02:09,160
主人 ここで食べよう
3
00:02:09,280 --> 00:02:10,030
このお店美味しいよ
4
00:02:11,480 --> 00:02:14,360
親切な旦那さま 綺麗な若奥さま
5
00:02:15,080 --> 00:02:16,280
食べ物を恵んでください
6
00:02:16,480 --> 00:02:17,360
哀れみを哀れみを
7
00:02:17,520 --> 00:02:19,000
感謝します旦那さま ありがとう
8
00:02:19,120 --> 00:02:19,720
老いぼれは
9
00:02:19,880 --> 00:02:23,480
お二人が末永く結ばれ
早くお子に恵まれることお祈りしますよ
10
00:02:23,680 --> 00:02:24,600
でたらめを言うな
11
00:02:26,880 --> 00:02:27,720
やるよ
12
00:02:27,880 --> 00:02:30,040
まさに"一家の人にあらずば一家の門に入らず"だな
(*考え方が似ていると集まることができる、もとは女性が嫁ぎ先のことを指して言う)
13
00:02:30,280 --> 00:02:31,120
阿湘
14
00:02:31,280 --> 00:02:32,320
言ってなかったか?
15
00:02:32,440 --> 00:02:34,200
善行で徳を積むなんてのは大バカだと
16
00:02:35,000 --> 00:02:38,160
誰に感化されたのかな?
17
00:02:40,160 --> 00:02:41,480
あんたは悪い奴だ
18
00:02:41,720 --> 00:02:42,520
主人 行くよ
19
00:02:44,080 --> 00:02:45,520
周兄 悪気はないんです
20
00:02:45,680 --> 00:02:46,320
阿湘は
21
00:02:46,440 --> 00:02:47,880
彼女は口は刀で心は豆腐なだけです
22
00:02:48,400 --> 00:02:50,480
周先生 彼女をからかわないでください
23
00:02:50,760 --> 00:02:52,400
曹大哥 あなたは
24
00:02:52,560 --> 00:02:53,720
あなたと顧湘姐さんは
25
00:02:55,920 --> 00:02:57,000
喜ぶのは早いぞ
26
00:02:58,040 --> 00:02:58,960
温叔を見てみろ
27
00:02:59,640 --> 00:03:01,840
あの顔はロバよりまだ長い
(*驴脸=怒りや不満の表情の暗喩)
28
00:03:02,880 --> 00:03:03,760
曹公子
29
00:03:04,080 --> 00:03:08,000
ここは厳しい戦いが君を待ってるぞ
30
00:03:23,120 --> 00:03:25,320
どうしてまだこのバカとつるんでるんだ?
31
00:03:27,520 --> 00:03:31,160
あなたもまだあの二人のバカとつるんでませんか?
32
00:03:36,520 --> 00:03:39,240
曹公子 顔色を見るに
33
00:03:39,640 --> 00:03:41,360
癒えてない傷があるようだ
34
00:03:41,600 --> 00:03:43,720
やめてください 蔚寧と呼んでください
35
00:03:43,880 --> 00:03:46,880
前に桃紅緑柳の暗器で負傷して
36
00:03:47,040 --> 00:03:48,480
余毒がまだ完全に抜けてません
37
00:03:50,800 --> 00:03:52,840
幸い阿湘が手厚くお世話してくれたので
38
00:03:53,160 --> 00:03:54,320
今はもう大した害はありません
39
00:03:55,080 --> 00:03:56,600
あとは清風山に帰ってゆっくり
40
00:03:56,760 --> 00:03:58,200
余毒を抜くだけです
41
00:03:58,400 --> 00:03:59,160
顧湘
42
00:03:59,640 --> 00:04:00,800
こんなに長く私についていたのに
43
00:04:01,000 --> 00:04:02,400
私はどうして知らなかったのか
44
00:04:03,280 --> 00:04:06,560
お前が"手厚いお世話"の技能を持ってると
45
00:04:10,440 --> 00:04:11,280
老温
46
00:04:14,560 --> 00:04:16,480
まあいい 手を出して
47
00:04:18,760 --> 00:04:19,480
早く
48
00:04:20,760 --> 00:04:22,120
温公子は医術に精通している
49
00:04:22,600 --> 00:04:24,120
微力を尽くすに丁度いい
(*略尽绵薄=最善を尽くすことをへりくだった言い方)
50
00:04:24,720 --> 00:04:27,400
桃紅緑柳は正邪併せ持っている
(*亦正亦邪=善と悪の両方)
51
00:04:28,040 --> 00:04:29,120
蔚寧君は
52
00:04:29,320 --> 00:04:30,800
なぜ彼らと衝突したんだ?
53
00:04:30,920 --> 00:04:32,760
あの二人の老妖怪が岳陽派に侵入して
54
00:04:32,840 --> 00:04:34,080
高小怜を連れ去ったんだ
55
00:04:34,280 --> 00:04:36,040
英雄大会のあの日は
56
00:04:37,000 --> 00:04:38,360
裏であなたたちが知らない
57
00:04:38,480 --> 00:04:39,440
いろんな事があったよ
58
00:04:39,680 --> 00:04:41,960
小怜姐が今どうなってるのかも分からない
59
00:04:42,320 --> 00:04:43,960
行方不明だって聞いたよ
60
00:04:44,680 --> 00:04:45,800
趙おじ上と沈おじ上は
61
00:04:45,960 --> 00:04:47,240
捜しに行かなかったんですか?
62
00:04:49,360 --> 00:04:50,160
安心しろ
63
00:04:51,560 --> 00:04:53,200
彼らが一日で琉璃甲を得ることはない
64
00:04:54,440 --> 00:04:56,120
高さんをどうもできないだろう
65
00:04:58,040 --> 00:04:58,800
成嶺
66
00:04:58,960 --> 00:05:01,400
高小怜はもうちょっとで
お前の嫁になるところだったから
67
00:05:01,560 --> 00:05:02,600
放っておけないよな
68
00:05:03,000 --> 00:05:03,760
湘姐さん
69
00:05:03,880 --> 00:05:05,280
何を赤面してんだ
70
00:05:05,600 --> 00:05:06,880
あの鄧寛はもういないんだから
71
00:05:07,000 --> 00:05:07,800
誰も奪ったことにならない
72
00:05:07,960 --> 00:05:08,800
鄧寛?
73
00:05:09,800 --> 00:05:11,360
高崇の弟子だろ?
74
00:05:11,480 --> 00:05:13,800
そうだよ 言わなかったっけ?
75
00:05:13,960 --> 00:05:14,880
あの鄧寛は
76
00:05:15,000 --> 00:05:16,720
もともと小怜姐の婚約者だった
77
00:05:16,880 --> 00:05:18,480
その後 金豆侠が現れて
78
00:05:18,880 --> 00:05:20,000
彼女は掠め取られたんだ
79
00:05:20,240 --> 00:05:21,000
湘姐さん
80
00:05:22,680 --> 00:05:23,880
彼がいないと言ったか?
81
00:05:24,920 --> 00:05:27,040
英雄大会の後に失踪したんだ
82
00:05:27,280 --> 00:05:28,320
たぶん死んでる
83
00:05:31,760 --> 00:05:34,080
君の余毒を抜くのには手間がかかる
84
00:05:34,360 --> 00:05:37,160
阿絮 私と薬店に行こう
85
00:05:37,840 --> 00:05:39,320
公子のご足労には及びません 座れ
86
00:05:39,440 --> 00:05:40,120
処方箋をいただければいいです
87
00:05:42,320 --> 00:05:43,120
阿湘
88
00:05:44,200 --> 00:05:45,120
平気平気
89
00:05:45,360 --> 00:05:46,560
彼らとどう付き合えばいいか
90
00:05:46,720 --> 00:05:47,960
そのうちあなたも分かります
91
00:05:54,560 --> 00:05:55,320
阿絮
92
00:05:55,960 --> 00:05:58,560
私たちが考えていることは同じです
93
00:05:59,400 --> 00:06:02,160
あの鄧寛は武林大会で
94
00:06:02,320 --> 00:06:05,360
高崇が鬼谷と結託していると示した
95
00:06:06,000 --> 00:06:06,720
最初は
96
00:06:06,880 --> 00:06:08,960
彼は普通の弟子なだけだと思っていたが
97
00:06:09,840 --> 00:06:10,960
まさか
98
00:06:11,880 --> 00:06:14,680
高崇の一人娘と婚約していたとは
99
00:06:15,440 --> 00:06:18,360
後々高崇の衣鉢と武林盟主の座を
100
00:06:18,520 --> 00:06:19,640
継承するはずだった
101
00:06:19,960 --> 00:06:20,960
俺には背後の人物が
102
00:06:21,480 --> 00:06:22,640
彼に寝返らせるために
103
00:06:23,320 --> 00:06:25,080
一体どんな手段を持ち出したのか
104
00:06:25,400 --> 00:06:26,480
まったく分からない
(*策反=敵に潜伏し蜂起と帰順を扇動する、寝返り工作すること)
105
00:06:27,800 --> 00:06:29,840
私たちの考えが
全然間違ってる可能性もありますよ
106
00:06:30,040 --> 00:06:31,920
あの鄧寛の話は本当で
107
00:06:32,320 --> 00:06:34,120
彼は本当に大義滅親だった
108
00:06:34,840 --> 00:06:35,720
あり得ない
109
00:06:37,040 --> 00:06:39,560
成嶺が既に琉璃甲を引き渡した以上
110
00:06:39,720 --> 00:06:41,880
高崇にとっては何の役にも立たない
111
00:06:42,280 --> 00:06:45,640
一人娘という大きな手駒を使ってまで
112
00:06:45,960 --> 00:06:47,440
孤児を籠絡する必要があるか?
113
00:06:47,800 --> 00:06:50,600
武林大会でこれを宣告してしまった以上は
114
00:06:50,840 --> 00:06:52,680
反故にする術はまずない
115
00:06:54,080 --> 00:06:55,640
反故にするのは容易じゃない?
116
00:06:56,000 --> 00:06:57,480
人心を買収した後
117
00:06:57,680 --> 00:06:58,960
成嶺がもし死んだら
118
00:06:59,280 --> 00:07:02,320
高小怜はまさか位牌には嫁がないのでは?
119
00:07:04,640 --> 00:07:06,760
旦那様方 あなた方は立派な身なりに見えます
120
00:07:06,880 --> 00:07:07,880
お金持ちに違いない
121
00:07:08,040 --> 00:07:09,840
乞食に飯をお恵みください
122
00:07:09,960 --> 00:07:11,080
私はまもなく餓死します
123
00:07:18,880 --> 00:07:20,000
この乞食は
124
00:07:20,320 --> 00:07:21,720
見る目がないな
(*擦亮眼睛=目を光らす、物事を見極める)
125
00:07:21,880 --> 00:07:23,400
俺にたかりに来るとは
126
00:07:23,600 --> 00:07:25,720
こちらの旦那さまが半分あなたの同業だと
127
00:07:25,840 --> 00:07:27,480
知らなかったんですよね?
128
00:07:40,200 --> 00:07:41,520
沈大侠
129
00:07:44,000 --> 00:07:45,880
敵(かたき)の道は狭いな
(*冤家路窄=敵同士ほどよく出会うもの、会いたくない人ほど出くわす《初刻拍案驚奇》)
130
00:07:56,120 --> 00:07:56,880
危ない
131
00:08:06,440 --> 00:08:07,880
阿湘 もう一つ食べて
132
00:08:09,920 --> 00:08:10,680
湘姐さん
133
00:08:11,280 --> 00:08:13,080
では以後は清風剣派に住むのですね?
134
00:08:15,840 --> 00:08:17,760
私は師父と温叔と四季山荘に帰ります
135
00:08:18,400 --> 00:08:19,640
あなたのご実家はどこですか?
136
00:08:22,560 --> 00:08:23,840
クソ金豆侠
137
00:08:24,040 --> 00:08:25,320
ここにお前が話をする権利があると思うか?
138
00:08:25,880 --> 00:08:28,240
あたしが話せば お前は答えればいい
139
00:08:28,440 --> 00:08:29,200
それで
140
00:08:29,320 --> 00:08:30,440
あたしがいない間
141
00:08:30,560 --> 00:08:32,160
あんたたちはどこで 何をしてたんだ?
142
00:08:32,240 --> 00:08:32,880
言ってみろ
143
00:08:33,360 --> 00:08:34,360
それなら話せますよ
144
00:08:35,000 --> 00:08:35,790
なんだ?
145
00:08:35,960 --> 00:08:37,790
張小公子は重大事件にでもあったのか?
146
00:08:38,120 --> 00:08:38,880
阿湘
147
00:08:39,200 --> 00:08:40,080
主人が戻ってこないうちは
148
00:08:40,240 --> 00:08:41,800
あたしらは顔を見合わせてるしかないんだから
(*大眼瞪小眼=大眼望小眼 あっけにとられて顔を見合わせる、行動するのをお互いためらって顔を見合わせる《儒林外史》)
149
00:08:41,920 --> 00:08:44,070
さあ言え 姑娘が聞いてやる
150
00:08:46,000 --> 00:08:47,440
私は英雄大会に参加 できましたできました
151
00:08:48,600 --> 00:08:49,440
ちょっと待て
152
00:08:49,560 --> 00:08:50,600
あたしたちまだ注文してない
153
00:08:50,720 --> 00:08:51,680
これは何だ?
154
00:08:51,840 --> 00:08:53,880
店からの心づけの小菜です
155
00:08:54,280 --> 00:08:56,040
そんな良い事あるもんか
156
00:08:56,280 --> 00:08:57,200
信用なさいませんか?
157
00:08:57,320 --> 00:08:59,280
では開けてお見せしましょう
158
00:09:30,200 --> 00:09:31,040
彼らは誰ですか?
159
00:09:31,160 --> 00:09:31,960
さっさとガキを連れてけ
160
00:09:32,080 --> 00:09:33,280
どうして君を置き去りにできるんだ
161
00:09:33,400 --> 00:09:35,200
彼が死んだら 主人はあたしの生皮を剥ぐよ
162
00:09:35,320 --> 00:09:36,880
一人も逃がすな かかれ
163
00:09:39,640 --> 00:09:40,800
阿湘 気をつけて
164
00:10:23,760 --> 00:10:24,600
左に四 右に七
165
00:10:26,160 --> 00:10:27,120
二四を肩に
166
00:10:29,480 --> 00:10:30,440
六八は足に
167
00:10:54,720 --> 00:10:55,400
おバカ
168
00:10:55,520 --> 00:10:56,520
士別れて三日 刮目して相待(そうたい)だな
(*いつまでも昔のままじゃないの意《呉書・呂蒙伝》)
169
00:10:56,680 --> 00:10:57,720
お前の流雲九宮歩を続けろ
170
00:10:57,840 --> 00:10:58,680
奴らに捕まるんじゃないぞ
171
00:11:00,920 --> 00:11:02,000
気をつけろ 気をつけて
172
00:11:06,240 --> 00:11:07,680
バカか 中に入ってどうするんだ
173
00:11:07,960 --> 00:11:08,800
私も入りたくないです
174
00:11:09,120 --> 00:11:10,480
でも師父がこう教えたんです
175
00:11:21,320 --> 00:11:22,400
誰が助太刀を頼みましたか
176
00:11:23,240 --> 00:11:25,600
腕が悪くて 足手まといです
(*帮倒忙=手伝いがかえって邪魔になる、ありがた迷惑)
177
00:11:31,200 --> 00:11:32,000
沈掌門
178
00:11:32,680 --> 00:11:35,200
それは蝎尾刺です 切先に毒がある
179
00:11:38,000 --> 00:11:39,520
もし沈掌門が私を信じるなら
180
00:11:40,320 --> 00:11:42,280
この薬を内服外用してください
181
00:11:42,480 --> 00:11:44,520
もし信じぬならそれで結構
182
00:11:56,320 --> 00:11:57,040
感謝する
183
00:11:57,600 --> 00:11:58,560
お二方は英雄大会で
184
00:11:58,640 --> 00:12:00,200
大哥のために一肌脱いでくださった
185
00:12:00,400 --> 00:12:01,680
また甥を救い出してくださった
186
00:12:02,000 --> 00:12:03,240
沈某 腹の底より感銘を受けた
(*五内=五臓、心の内)
187
00:12:03,480 --> 00:12:04,840
そして今また薬を賜った
188
00:12:05,040 --> 00:12:07,800
沈慎 日を改め必ずこの恩に報いよう
189
00:12:07,960 --> 00:12:08,680
奇妙な
190
00:12:09,760 --> 00:12:12,160
あなたは高崇という大哥を覚えているのですか
191
00:12:13,240 --> 00:12:14,120
老温
192
00:12:15,760 --> 00:12:17,120
彼が一日私の大哥なら
193
00:12:17,360 --> 00:12:18,440
永遠に私の大哥です
194
00:12:19,800 --> 00:12:20,680
温公子
195
00:12:21,080 --> 00:12:23,840
周先生 我が甥 成嶺はどこです?
196
00:12:24,040 --> 00:12:25,520
成嶺は近くにいます
197
00:12:26,480 --> 00:12:28,680
この毒蝎の刺客は残忍で悪質
198
00:12:28,880 --> 00:12:30,920
彼らも恐らく危険でしょう
199
00:12:31,440 --> 00:12:33,440
話は後にして 行きましょう
200
00:12:47,640 --> 00:12:48,400
人殺しだ
201
00:12:48,520 --> 00:12:49,480
ご老人 早く逃げて
202
00:12:49,880 --> 00:12:51,440
殺さないで 殺さないで
203
00:12:53,440 --> 00:12:55,120
殺さないで 殺さないで
204
00:12:56,280 --> 00:12:57,840
お若いの 助けてくれ
205
00:12:59,040 --> 00:12:59,840
阿湘
206
00:13:08,280 --> 00:13:09,640
彼はただの年老いた乞食だ
207
00:13:10,080 --> 00:13:11,000
殺してどうするんだ
208
00:13:11,160 --> 00:13:11,920
殺したらどうなんだ?
209
00:13:12,880 --> 00:13:13,800
あそこだ
210
00:13:16,080 --> 00:13:16,720
行くぞ
211
00:13:18,120 --> 00:13:18,840
行け
212
00:13:26,880 --> 00:13:27,720
師父 主人
213
00:13:32,360 --> 00:13:33,160
返すよ
214
00:13:33,560 --> 00:13:34,320
主人
215
00:13:38,760 --> 00:13:40,400
老温 証人を残せ
216
00:13:44,880 --> 00:13:45,760
言うのが遅い
217
00:13:46,480 --> 00:13:47,200
成嶺
218
00:13:49,400 --> 00:13:51,320
おバカさん 私が殺して
219
00:13:51,720 --> 00:13:53,320
どうしてお前が全身血塗れなんだ
220
00:13:55,680 --> 00:13:56,720
他人のだよ
221
00:13:59,560 --> 00:14:00,400
成嶺
222
00:14:01,040 --> 00:14:03,880
沈おじ上 どうしてここに?
223
00:14:04,760 --> 00:14:06,000
一言では言い尽くせない
224
00:14:07,240 --> 00:14:08,600
蔚寧 君たち
225
00:14:09,200 --> 00:14:10,200
君たちはどうして一緒に?
226
00:14:12,040 --> 00:14:13,120
沈師叔
227
00:14:13,400 --> 00:14:15,640
私の方も一言では言い尽くせません
228
00:14:32,200 --> 00:14:32,880
ほら
229
00:14:40,600 --> 00:14:41,800
お前のぐずぐずしたのはいらない
(*婆婆妈妈=くどくどしい、感情的に脆い《紅楼夢》)
230
00:14:42,600 --> 00:14:44,760
阿湘 どうしてそんなに怒ってるの?
231
00:14:45,000 --> 00:14:46,400
あっちへ行け 行けよ
232
00:14:46,520 --> 00:14:48,040
お前は行け 行け
233
00:14:54,800 --> 00:14:55,480
聞くけど
234
00:14:56,200 --> 00:14:57,720
あたしがあの乞食を殺したのは間違いなのか?
235
00:14:58,320 --> 00:14:59,120
あたしは殺さずに
236
00:14:59,280 --> 00:15:00,800
あいつが殺しに来るのを待ってろって?
237
00:15:01,000 --> 00:15:02,720
でも彼がそうとは限らないよ
238
00:15:03,680 --> 00:15:05,040
彼が君を殺すとは限らない
239
00:15:05,440 --> 00:15:07,560
もしもは? 万が一は?
240
00:15:09,520 --> 00:15:13,040
曹大侠 あたしはあんたとは違う
241
00:15:13,240 --> 00:15:16,480
一日中 師父だの 師叔だの
242
00:15:16,640 --> 00:15:17,440
師兄師弟だの
243
00:15:17,560 --> 00:15:18,920
大勢がお前のまわりを回ってる
244
00:15:19,160 --> 00:15:20,360
あたしが育ったとこでは
245
00:15:20,560 --> 00:15:22,560
あたしが殺さなかったら 人があたしを殺すんだ
246
00:15:23,080 --> 00:15:24,960
百分の一の確率だとしても
247
00:15:25,120 --> 00:15:27,400
間違って殺した方がましだ 絶対見逃さない
248
00:15:28,600 --> 00:15:29,840
そうじゃなかったら
249
00:15:30,000 --> 00:15:31,520
あたしは今日まで生きてない
250
00:15:31,640 --> 00:15:34,760
阿湘 君を責める気はないし
251
00:15:34,920 --> 00:15:36,920
君が間違ってるとも思わない
252
00:15:37,080 --> 00:15:38,520
僕はあの年老いた乞食がもし
253
00:15:38,640 --> 00:15:39,960
普通の乞食だったら
254
00:15:40,200 --> 00:15:42,240
誤って殺したことで 悲しくなるはずだ
255
00:15:43,120 --> 00:15:43,960
くだらない
256
00:15:44,080 --> 00:15:45,680
あたしはお前らみたいに白々しいことはしない
257
00:15:45,840 --> 00:15:46,920
何が悲しいことがあるか
258
00:15:47,040 --> 00:15:48,280
誤って殺すなら誤って殺せばいい
259
00:15:48,440 --> 00:15:50,880
阿湘 君はきっと悲しいはず
260
00:15:51,040 --> 00:15:52,160
絶対悲しいはずだよ
261
00:15:52,400 --> 00:15:53,760
君の心根はこんなに優しい
262
00:15:54,000 --> 00:15:56,240
悲しくないわけがないよ でしょ?
263
00:15:57,640 --> 00:15:59,320
どうしてあたしの心根が良いって分かるんだ?
264
00:16:01,760 --> 00:16:05,280
阿湘 僕が分からないなら誰が君を分かるの?
265
00:16:06,280 --> 00:16:09,080
阿湘 これまで話したことなかったよね
266
00:16:09,280 --> 00:16:10,320
小さい頃のこと
267
00:16:12,200 --> 00:16:15,280
さっき君が育った場所と言ったよね
268
00:16:16,560 --> 00:16:18,960
阿湘 どうして君の育った場所は
269
00:16:19,040 --> 00:16:19,920
そんなに辛いの?
270
00:16:21,720 --> 00:16:22,760
お前に何が分かるんだ
271
00:16:24,840 --> 00:16:25,840
阿湘
272
00:16:30,320 --> 00:16:33,840
成嶺 君が五湖盟に来てから
273
00:16:34,120 --> 00:16:36,240
沈おじさんは君としっかり向き合ってなかった
274
00:16:36,680 --> 00:16:37,640
恨んでいるか?
275
00:16:40,000 --> 00:16:40,760
ないですよ
276
00:16:40,960 --> 00:16:44,160
君が私をなじるとしても
私は君を責めることはできない
277
00:16:44,440 --> 00:16:46,480
今はどれだけ説明したところで役に立たない
278
00:16:46,720 --> 00:16:48,480
だがそれでも君に知ってほしい
279
00:16:49,120 --> 00:16:51,840
沈おじさんは決して君を憎んでるわけじゃない
280
00:16:52,200 --> 00:16:54,200
君のお兄さん二人が子供の頃は
281
00:16:54,360 --> 00:16:56,160
我ら五兄弟は情宜が本当に深かった
282
00:16:57,080 --> 00:16:59,360
彼らは私が抱っこして遊んだ子供たちだ
283
00:16:59,880 --> 00:17:01,160
君に会うたびに
284
00:17:01,400 --> 00:17:02,680
彼らのことを思い出す
285
00:17:03,680 --> 00:17:04,920
心の中でもし彼らが生きていれば
286
00:17:05,080 --> 00:17:07,200
どんなに良かったかと願ってしまう
287
00:17:08,320 --> 00:17:09,520
何も間違ってません
288
00:17:09,960 --> 00:17:11,480
もし天が私を
289
00:17:11,600 --> 00:17:12,800
哥哥たちの代わりに死なせたのなら
290
00:17:13,400 --> 00:17:15,160
私はどれだけ感謝したか分かりません
291
00:17:16,320 --> 00:17:18,760
なぜか一番役立たずだった私が生き延びました
292
00:17:19,600 --> 00:17:21,920
成嶺 座れ
293
00:17:26,960 --> 00:17:28,200
実際 君は知っているか?
294
00:17:28,560 --> 00:17:30,680
君の父さんに一番似ているのは はやり君だ
295
00:17:31,360 --> 00:17:33,280
姿も 気性も似ている
296
00:17:33,840 --> 00:17:36,280
君の父さんはこのように純粋で親孝行な性格だった
297
00:17:37,080 --> 00:17:38,360
我ら兄弟の中で
298
00:17:38,480 --> 00:17:40,880
君の父さんが一番優しく 一番正直だった
299
00:17:41,160 --> 00:17:42,080
本当ですか?
300
00:17:43,920 --> 00:17:45,800
父は私ほどバカじゃないですよ
301
00:17:46,600 --> 00:17:48,040
彼は一代の大侠でしたよね
302
00:17:48,680 --> 00:17:51,440
人は私の性格は軟弱だと言います
303
00:17:51,560 --> 00:17:52,960
将来は大したものにはならないと
304
00:17:55,560 --> 00:17:58,320
虎に犬の子です
(*虎父犬子=虎父无犬子 虎に犬の子はいない、優れた人の子孫もまた優れている《三国演義》)
305
00:18:02,360 --> 00:18:03,080
師父
306
00:18:09,680 --> 00:18:12,400
成嶺 君はいつ周先生に師事したんだ?
307
00:18:14,720 --> 00:18:15,480
周先生
308
00:18:17,240 --> 00:18:19,200
あなたは何度も甥を助けてくださった
309
00:18:19,480 --> 00:18:21,400
我が五湖盟に対する恩は海のように深い
(*恩深似海=恩徳の情が極めて深いこと《警世通言》馮夢龍)
310
00:18:21,600 --> 00:18:23,200
私は本当にどう感謝すべきか分からない
311
00:18:23,360 --> 00:18:24,120
感謝の必要はありません
312
00:18:25,360 --> 00:18:28,280
沈掌門はいくつか質問に
正直に答えてくださるだけでいい
313
00:18:28,400 --> 00:18:29,800
周先生 何を言い出すやら
314
00:18:30,040 --> 00:18:30,960
質問があるなら
315
00:18:31,160 --> 00:18:33,160
沈某は当然 知るを言わぬことなし
言うを尽くさぬことなし
(*《衡論》蘇洵)
316
00:18:34,720 --> 00:18:37,080
成嶺 先に聞け
317
00:18:38,840 --> 00:18:39,600
はい
318
00:18:40,000 --> 00:18:42,600
沈おじ上 でも先に約束です
319
00:18:42,760 --> 00:18:44,560
答えたいことに答え 嫌なら答えなくて大丈夫です
320
00:18:44,760 --> 00:18:46,040
でも嘘はつかないでください
321
00:18:47,240 --> 00:18:49,040
私の父上はあなた方との間に
322
00:18:49,200 --> 00:18:50,200
何か誤解がありましたか?
323
00:18:50,800 --> 00:18:53,480
鄧寛師兄は高おじ上が
鬼谷と結託して父上を殺したと
324
00:18:53,600 --> 00:18:54,520
言っていました
325
00:18:54,840 --> 00:18:56,480
これは一体どういう事なんですか?
326
00:18:56,600 --> 00:18:58,760
子供よ 私は天に誓う
327
00:18:59,000 --> 00:19:00,520
お前の高おじさんは自ら死すとも
328
00:19:00,640 --> 00:19:02,120
君の父君を傷つけることはない
329
00:19:02,840 --> 00:19:04,920
我ら兄弟五人は無論 誤解はあるだろうが
330
00:19:05,120 --> 00:19:07,520
君の父さんを最も可愛がっていた
331
00:19:08,280 --> 00:19:09,320
君は知ってるか?
332
00:19:09,960 --> 00:19:12,240
彼は君に賢妻として小怜を娶らせるつもりだった
333
00:19:12,360 --> 00:19:14,400
将来は両家の武功を兼ね備え
334
00:19:14,520 --> 00:19:15,640
来る日に鏡湖剣派を立て直し
335
00:19:15,760 --> 00:19:16,920
一代の大侠となる
336
00:19:17,360 --> 00:19:18,560
その時になれば自然と
(*顺理成章=物事が状況に沿ってうまく運ぶこと《朱子全書》)
337
00:19:18,840 --> 00:19:21,200
五湖盟主の座も君のものだ
338
00:19:21,360 --> 00:19:23,400
でも私はそれを望んだことはありません
339
00:19:23,520 --> 00:19:24,360
沈掌門
340
00:19:25,480 --> 00:19:27,400
あなたは鄧寛という人のことを知ってますね?
341
00:19:27,840 --> 00:19:29,800
彼は私が頭をなでて育った
342
00:19:30,600 --> 00:19:31,640
あの英雄大会で
343
00:19:32,000 --> 00:19:33,720
鄧寛が彼の師父にした告発は
344
00:19:33,920 --> 00:19:34,840
どれが真実だったのですか?
345
00:19:34,960 --> 00:19:35,800
一つも真実はなかった
346
00:19:36,000 --> 00:19:37,080
人の心は腹の皮で隔てられている
(*人心隔肚皮=他人の考えは理解し難いの意)
347
00:19:37,320 --> 00:19:38,440
どうして分かるんです?
348
00:19:38,600 --> 00:19:39,640
二十年前
349
00:19:39,840 --> 00:19:43,080
大哥は琉璃甲を破壊するか 或いは
350
00:19:43,200 --> 00:19:44,760
一切を公にし武林の制裁を受けるかを
351
00:19:44,960 --> 00:19:46,360
主張していた
352
00:19:46,560 --> 00:19:48,280
我ら残りの者は大いに反対した
353
00:19:48,520 --> 00:19:49,440
更に言うと
354
00:19:50,040 --> 00:19:52,240
大哥が三哥陸太冲 四哥張玉森の
355
00:19:52,360 --> 00:19:54,280
手中の琉璃甲を奪い取るとしたら
356
00:19:54,440 --> 00:19:55,800
何年も耐え忍ぶ必要があるか?
357
00:19:56,000 --> 00:19:58,000
そして私は 彼が口を開くだけで
358
00:19:58,160 --> 00:19:59,440
手中の琉璃甲を
359
00:19:59,600 --> 00:20:00,760
両手で奉上する
360
00:20:00,880 --> 00:20:03,480
二哥に至っては もともと軟弱だ
361
00:20:06,360 --> 00:20:07,200
沈掌門
362
00:20:08,040 --> 00:20:09,720
もう一つ質問があります
363
00:20:10,280 --> 00:20:12,640
江湖に流れ伝わっている一節
364
00:20:13,000 --> 00:20:15,120
五湖の水 天下に集まる
365
00:20:15,480 --> 00:20:17,720
武林至尊は誰がなる
366
00:20:19,040 --> 00:20:21,640
誰もがこれは高盟主が
367
00:20:21,880 --> 00:20:23,720
武林盟主の座を奪うために作って
368
00:20:23,720 --> 00:20:24,760
そして広めたと思っていた
369
00:20:26,960 --> 00:20:28,560
それも大哥が作ったのではない
370
00:20:29,640 --> 00:20:31,720
大哥という人は表向きは沈黙寡言だが
371
00:20:31,880 --> 00:20:33,320
内心は情義の二文字を
372
00:20:33,440 --> 00:20:34,920
何よりも大切にしているのが分かる
373
00:20:35,720 --> 00:20:37,520
情義の二文字を唯一越えられるのは
374
00:20:38,160 --> 00:20:40,040
五湖盟の威名だけだ
375
00:20:41,400 --> 00:20:42,720
では分かりませんか
376
00:20:43,520 --> 00:20:45,240
鄧寛が一体どんな理由で
377
00:20:45,400 --> 00:20:46,520
彼の師父を陥れたのか
378
00:20:47,840 --> 00:20:48,880
あの日以来
379
00:20:49,720 --> 00:20:51,280
私も困惑している
(*百思不得其解=いくら考えても理解できない《閲微草堂筆記》)
380
00:20:51,960 --> 00:20:53,280
寛儿の性格なら
381
00:20:53,640 --> 00:20:56,000
何千回 自ら死すとも
382
00:20:56,160 --> 00:20:57,120
大哥にとって少しでも
383
00:20:57,240 --> 00:20:58,920
不利になる事をするはずがない
384
00:20:59,880 --> 00:21:02,120
本当に彼が何に惑わされたのか分からぬ
385
00:21:02,680 --> 00:21:05,440
よりによって自分の恩師に致命の一撃を下すとは
386
00:21:08,920 --> 00:21:12,080
成嶺 沈掌門の相手を頼む
387
00:21:12,360 --> 00:21:13,680
私はお前の温叔を見に行ってくる
388
00:21:14,240 --> 00:21:16,560
周先生 お答えいただけるか分からぬが
389
00:21:16,960 --> 00:21:18,320
私にも質問がある
390
00:21:19,600 --> 00:21:21,840
温公子が我々の旧知の一人に
391
00:21:22,000 --> 00:21:23,640
似ていることに気付いたのだが
392
00:21:24,720 --> 00:21:25,600
温公子は
393
00:21:27,520 --> 00:21:29,080
甄という姓では?
394
00:21:35,320 --> 00:21:36,200
沈掌門
395
00:21:36,800 --> 00:21:38,880
私がこの質問に答える必要はないと思います
396
00:21:39,240 --> 00:21:40,200
そうでしょう
397
00:21:40,480 --> 00:21:40,960
だが私の方は
398
00:21:41,080 --> 00:21:42,160
沈掌門の身にはまだ傷がある
399
00:21:42,360 --> 00:21:43,520
まずはしっかり休息を
400
00:22:18,360 --> 00:22:20,200
俺を脅かすとは
401
00:22:22,200 --> 00:22:23,040
何を考えてるの?
402
00:22:25,280 --> 00:22:26,200
分かったんだ
403
00:22:29,040 --> 00:22:30,240
何が分かったの?
404
00:22:32,040 --> 00:22:33,160
鄧寛の行為には
405
00:22:34,400 --> 00:22:36,120
別の可能性があるかもしれない
406
00:22:36,720 --> 00:22:37,800
覚えてるか?
407
00:22:37,960 --> 00:22:39,000
あの気色悪い薬人を
408
00:22:39,120 --> 00:22:41,080
子供として飼っていた怪人龍孝
409
00:22:42,200 --> 00:22:43,880
この薬人を制御する手法は
410
00:22:45,400 --> 00:22:49,920
あの伝説の摂魂蠱と関係があるのかもしれない
411
00:22:54,000 --> 00:22:56,840
そうだ 我らは義荘に続き
412
00:22:57,200 --> 00:22:58,720
毒蝎の分舵 龍淵谷と
413
00:22:58,840 --> 00:23:00,000
この薬人を見てきた
414
00:23:00,440 --> 00:23:03,640
義荘の薬人はまだ長舌鬼に使役されていたが
415
00:23:04,280 --> 00:23:07,400
これらの怪事件には全て
少なからず毒蝎の影がある
416
00:23:08,040 --> 00:23:10,840
阿絮 あなたが天窗にいた間に
417
00:23:11,080 --> 00:23:12,840
毒蝎の大将を見たことは?
418
00:23:14,880 --> 00:23:16,560
毒蝎の大将は異常なほど謎に包まれていて
419
00:23:16,840 --> 00:23:17,960
未だ姿を見せない
420
00:23:18,120 --> 00:23:19,960
沈慎は偽っていないようですし
421
00:23:20,320 --> 00:23:23,360
ならばこの"豚に扮して虎を食う"趙玄徳こそ
(*扮猪吃老虎=愚かなふりをして相手に油断させ最終的な勝利を得る《三十六計》)
422
00:23:24,120 --> 00:23:26,560
本当の毒蝎の大将でしょう
423
00:23:27,200 --> 00:23:28,840
その可能性がないわけではないが
424
00:23:30,000 --> 00:23:32,240
ただ その中にある幾つかの要点は
(*关窍=コツ、ヒント、トリック、人体の関節のツボ)
425
00:23:32,400 --> 00:23:33,600
まだ腑に落ちない
426
00:23:34,440 --> 00:23:35,680
更に別の一件もある
427
00:23:37,920 --> 00:23:38,840
何の事?
428
00:23:40,640 --> 00:23:42,200
今は一つじゃなく
429
00:23:42,920 --> 00:23:44,280
二つだ
430
00:23:44,840 --> 00:23:46,040
その一つ目は
431
00:23:46,640 --> 00:23:50,080
仮に毒蝎の大将が趙敬だとすると
432
00:23:50,560 --> 00:23:53,680
あの当時 高崇の剣に三屍毒を仕込み
433
00:23:53,920 --> 00:23:55,840
間接的に容炫夫婦を殺害したのは
434
00:23:56,400 --> 00:23:57,600
これも趙敬なのか
435
00:24:02,440 --> 00:24:03,520
それで二つ目は?
436
00:24:09,080 --> 00:24:10,600
長舌鬼とは誰か
437
00:24:17,760 --> 00:24:19,000
あの義荘にいたのは
438
00:24:19,520 --> 00:24:23,000
纏魂絲匣を使って薬人を使役する男だったよな
439
00:24:24,080 --> 00:24:25,080
長舌鬼か
440
00:24:25,800 --> 00:24:27,960
俺は奴が十大悪鬼の一人だと知ってるだけだ
441
00:24:29,320 --> 00:24:32,360
そうそう 彼は吊死鬼の手下でした
442
00:24:32,720 --> 00:24:34,720
吊死鬼は後に武功が向上し
443
00:24:34,880 --> 00:24:37,000
纏魂絲匣を彼に与えた
444
00:24:37,280 --> 00:24:39,040
鏡湖派壊滅の一件は
445
00:24:39,200 --> 00:24:40,480
ゆえに彼が主導したのです
446
00:24:42,400 --> 00:24:43,480
そうだったのか
447
00:24:45,120 --> 00:24:48,000
やはりうちの老温は見識が広い
(*见多识广=深い知識と豊かな経験、物知り《古今小説》馮夢龍)
448
00:25:05,960 --> 00:25:07,920
温兄 湯が足りなかったらまた呼んでください
449
00:25:09,440 --> 00:25:11,160
あたしの主人はあたしが面倒みればいいんだ
450
00:25:11,320 --> 00:25:12,080
お前に何か関係あるか?
451
00:25:12,240 --> 00:25:12,600
私はただ
452
00:25:12,720 --> 00:25:13,520
主人の機嫌を取るな
453
00:25:13,680 --> 00:25:14,760
行け行け行け
454
00:25:14,880 --> 00:25:15,200
阿湘
455
00:25:15,320 --> 00:25:16,000
行け 早く行け
456
00:25:16,120 --> 00:25:16,800
阿湘
457
00:25:17,160 --> 00:25:18,360
主人 お湯が沸いたよ
458
00:25:18,480 --> 00:25:19,440
何かあったら呼んでよ
459
00:25:39,360 --> 00:25:40,840
さっきはちょっと口を滑らせて
460
00:25:41,680 --> 00:25:44,240
前から長舌鬼を知っていたという秘密を
言ってしまったが
461
00:25:45,080 --> 00:25:47,000
幸い阿絮は気に留めなかったようだ
462
00:25:47,240 --> 00:25:48,920
もし彼が私の正体を知れば
463
00:25:49,440 --> 00:25:52,320
人と鬼の道はいずれは殊なる
464
00:25:55,240 --> 00:25:58,000
蝎儿には良い報せと 悪い報せがある
465
00:25:58,800 --> 00:26:00,080
もったいぶるな
466
00:26:00,960 --> 00:26:02,120
良い報せは
467
00:26:02,680 --> 00:26:04,240
龍淵閣に行かせた密偵が
468
00:26:04,360 --> 00:26:06,080
思いがけず張成嶺を見つけた
469
00:26:06,280 --> 00:26:08,000
彼はやはり天窗の主と
470
00:26:08,120 --> 00:26:09,840
それから鬼谷の魔頭と一緒にいた
471
00:26:10,120 --> 00:26:11,560
でも奇妙なことに
472
00:26:12,440 --> 00:26:15,440
剣仙の伝承者も彼らと一緒だった
473
00:26:15,720 --> 00:26:16,960
ならば悪い報せは?
474
00:26:17,280 --> 00:26:19,200
龍雀と龍孝が死んだ
475
00:26:21,560 --> 00:26:23,240
どんな些事かと思えば
476
00:26:23,840 --> 00:26:25,480
以前は龍雀の命を残したかった
477
00:26:25,680 --> 00:26:27,280
備えあれば憂いなしだからな
(*有备无患《書経》)
478
00:26:27,560 --> 00:26:29,480
今は死ぬべき者はみんな死んだので
479
00:26:29,640 --> 00:26:31,560
この後ろ盾はあってもなくてもいい
480
00:26:32,080 --> 00:26:33,760
ただ龍孝が死んだのは
481
00:26:33,920 --> 00:26:35,440
本当にめでたいことだ
482
00:26:36,120 --> 00:26:37,680
私が手を動かす必要がなくなった
483
00:26:37,960 --> 00:26:40,400
だけど彼が死ぬと 武庫の鍵は
484
00:26:41,840 --> 00:26:44,400
私が龍孝を騙した話をお前も信じるのか?
485
00:26:45,560 --> 00:26:46,880
実はこの二十年
486
00:26:47,520 --> 00:26:48,740
武器庫の鍵はずっと
487
00:26:49,760 --> 00:26:51,560
最も危険であり
488
00:26:52,320 --> 00:26:54,200
最も安全な場所にありました
489
00:26:56,000 --> 00:26:58,120
鬼谷に?
490
00:26:59,600 --> 00:27:00,920
これも義父さんが
491
00:27:01,320 --> 00:27:03,840
ずっと鬼谷を唆していた理由です
492
00:27:11,960 --> 00:27:15,080
蝎儿や 連環計が何か知ってますか?
493
00:27:16,400 --> 00:27:20,400
鏡湖剣派の壊滅 三白山荘での盗難
494
00:27:20,760 --> 00:27:22,320
傲崃子の横死
495
00:27:23,080 --> 00:27:24,720
私はこの一切を手配しました
496
00:27:24,960 --> 00:27:27,080
鬼谷が琉璃甲を奪ったと
497
00:27:27,280 --> 00:27:29,760
江湖の人々に知ってもらうためです
498
00:27:30,160 --> 00:27:33,200
だけど計画は変化に追いつかない
(*计划赶不上变化=一度決めたことは途中で変更するのは難しい)
499
00:27:34,000 --> 00:27:35,720
偽の琉璃甲を作った人が
500
00:27:35,960 --> 00:27:37,760
あなたが整えた全ての段取りを乱した
501
00:27:38,480 --> 00:27:39,400
でも幸い
502
00:27:40,120 --> 00:27:43,200
事を成した後に
高崇に罪をなすりつける必要はなくなった
503
00:27:43,920 --> 00:27:45,360
彼は何一つ成さず
504
00:27:45,520 --> 00:27:47,240
地位も名誉も失って死んだ
505
00:27:49,960 --> 00:27:50,680
義父さん
506
00:27:52,040 --> 00:27:54,000
どうしてそんなに高崇を恨んでいるの?
507
00:27:59,800 --> 00:28:02,800
蝎儿よ 何ゆえそれを問うのです
508
00:28:04,480 --> 00:28:05,520
ただの好奇心だよ
509
00:28:11,520 --> 00:28:13,320
本当に好奇心だけですか?
510
00:28:18,840 --> 00:28:19,960
好奇心
511
00:28:22,240 --> 00:28:23,760
ならばなぜ無関心でおれるのだ?
512
00:28:24,480 --> 00:28:25,960
同じ義兄弟であるのに
513
00:28:26,680 --> 00:28:28,320
ある者は高みに登り
514
00:28:28,440 --> 00:28:29,240
威張り散らし
(*作威作福=権威を独占し独自に賞罰を与える、権力の乱用《書経・洪範》)
515
00:28:29,560 --> 00:28:31,160
ある者は人に足蹴にされ
516
00:28:31,320 --> 00:28:32,560
豚や犬にも及ばぬ
(*猪狗不如=性格が非常に悪いこと、ここでは文字通り待遇のこと《四世同堂》老舎)
517
00:28:33,120 --> 00:28:34,480
なぜ無関心なのだ
518
00:28:34,640 --> 00:28:36,480
ある者は大哥として先頭に立ち
519
00:28:36,600 --> 00:28:37,480
人をこき使い
(*呼来唤去=好きなようにこき使うこと《西遊記》)
520
00:28:37,640 --> 00:28:39,840
またある者は小弟として
521
00:28:39,960 --> 00:28:41,560
妥協し丸く収める
(*委曲求全=不満を我慢したまま事をまるく収める《漢書・厳彭祖伝》)
522
00:28:43,120 --> 00:28:44,440
私がそんな利己的な
523
00:28:44,600 --> 00:28:46,200
小輩だと思うのか?
524
00:28:46,400 --> 00:28:49,200
私が高崇を排除したのは我欲のためか?
(*一己之私=個人の私欲、自己の利益《書洛陽名園記後》李格非)
525
00:28:50,720 --> 00:28:52,000
教えてやろう
526
00:28:54,120 --> 00:28:57,600
この五湖盟はこの趙敬の手中にあってこそ
527
00:28:58,120 --> 00:29:00,160
一層の光彩を放ち
(*发扬光大=優れた伝統や様式をより一層発展させること《周易・坤》)
528
00:29:00,960 --> 00:29:03,000
武林に輝けるのだ
529
00:29:16,160 --> 00:29:18,440
義父さん ごめんなさい
530
00:29:19,160 --> 00:29:20,320
息子は間違ったことを言った
531
00:29:21,760 --> 00:29:22,920
怒らないで
532
00:29:23,360 --> 00:29:24,480
怒ってると分かったか
533
00:29:28,680 --> 00:29:29,560
ところで
534
00:29:30,600 --> 00:29:32,360
張成嶺の行方を聞いたが
535
00:29:33,080 --> 00:29:33,880
その後は?
536
00:29:34,480 --> 00:29:35,840
あの者たちは武功が優れていて
537
00:29:36,320 --> 00:29:37,280
足取りが定かじゃない
538
00:29:37,880 --> 00:29:39,600
密偵はなかなか近寄ることができず
539
00:29:40,080 --> 00:29:42,000
でも彼は僕に伝書鳩を飛ばす傍ら
540
00:29:42,120 --> 00:29:43,480
付近の暗杭を総動員して
541
00:29:43,600 --> 00:29:44,480
遠くから張り付いて
542
00:29:44,640 --> 00:29:45,480
行動の機会を伺ってる
543
00:29:46,000 --> 00:29:48,440
あの三人の武功は並外れて高い
544
00:29:48,600 --> 00:29:50,440
普通の蝎を派遣しても
545
00:29:50,600 --> 00:29:52,400
無駄に死に送るだけだ
546
00:29:53,080 --> 00:29:54,440
義父さんが許可してくれれば
547
00:29:54,560 --> 00:29:56,960
僕がすぐに 出発するよ
548
00:29:57,280 --> 00:29:58,160
忘れるな
549
00:29:58,400 --> 00:29:59,160
あの周温の二人は
550
00:29:59,320 --> 00:30:00,960
お前の手の上から無傷で逃げ仰せた
551
00:30:01,080 --> 00:30:02,360
それは"鼠に投ずるに器を忌む"だよ
(*投鼠忌器=まわりへの影響を恐れ行動することをためらう《漢書》)
552
00:30:03,960 --> 00:30:06,880
もうよい 私が策を講じる
553
00:30:22,360 --> 00:30:23,720
蝎儿や蝎儿
554
00:30:24,960 --> 00:30:27,040
いつになったら野蛮な衝動を引っ込められるのです
555
00:30:28,560 --> 00:30:30,160
早く大人になりなさい
556
00:30:53,960 --> 00:30:55,800
周 周 周絮あんた
557
00:30:56,760 --> 00:30:57,200
夜遅くに
558
00:30:57,360 --> 00:30:58,640
一人でここに立って何をしてるんだ
559
00:30:59,080 --> 00:31:00,240
脅かすなよ
560
00:31:00,400 --> 00:31:01,400
やましいことでもあるのか
561
00:31:01,720 --> 00:31:02,520
何が怖いんだ
562
00:31:04,080 --> 00:31:04,920
こんな夜遅くに
563
00:31:05,760 --> 00:31:06,960
なんでまた寝てないんだ
564
00:31:13,560 --> 00:31:15,480
此くの如き星辰の此くの如き夜は
(*如此星辰如此夜=似此星辰非昨夜 今夜の星は昨夜の星ではない、孤独に夜空を見る《綺杯》黄景仁 引用の今夜の星の美しさの表現《大旗英雄伝》古龍 )
565
00:31:16,280 --> 00:31:18,640
誰がために風露の中宵に立つのか
(*為誰風露立中宵=感傷に浸り孤独をうたう《綺懐》黄景仁 *中宵=真夜中、夜半)
566
00:31:19,000 --> 00:31:20,120
あたしに文才をひけらかさないで
567
00:31:21,840 --> 00:31:22,720
全く理解できない
568
00:31:22,840 --> 00:31:24,120
お酒の何が美味しいんだ?
569
00:31:24,240 --> 00:31:25,560
苦いし渋い
570
00:31:27,360 --> 00:31:30,080
飲まないなら良い酒を無駄にするなよ
571
00:31:36,520 --> 00:31:38,560
主人は機嫌が悪い時にお酒を飲むんだ
572
00:31:38,760 --> 00:31:40,680
このお酒でどうなるかと思ってたけど
573
00:31:41,280 --> 00:31:44,040
結局飲み終わっても不機嫌なままだ
574
00:31:44,920 --> 00:31:46,320
これは知らないだろうが
575
00:31:46,720 --> 00:31:49,360
酒というのは またの名を忘憂散と言う
576
00:31:49,720 --> 00:31:51,720
一壺の酒では憂いを解消できないが
577
00:31:51,920 --> 00:31:54,160
二壺の酒なら解消できる
578
00:31:54,320 --> 00:31:56,200
それでダメなら三壺四壺だ
579
00:31:58,200 --> 00:31:59,520
惜しいかなこの郊外では
580
00:32:00,360 --> 00:32:01,760
これが残りの一壺だ
581
00:32:02,600 --> 00:32:05,120
どうした 君もまた不機嫌か?
582
00:32:05,800 --> 00:32:08,600
あの曹少侠がまた君を怒らせたのか
583
00:32:08,760 --> 00:32:10,160
それなら あいつを去勢してる
584
00:32:11,320 --> 00:32:13,680
君は女の子だろう
585
00:32:13,880 --> 00:32:15,640
目があって鼻があって口がある
586
00:32:15,880 --> 00:32:18,040
どうして一日中 人語を話さないんだ
587
00:32:20,440 --> 00:32:22,920
老温が君は彼に育てられたと言っていたが
588
00:32:24,560 --> 00:32:25,440
疑うべくもない
589
00:32:26,640 --> 00:32:28,840
肺病鬼 夜中に寝ないで
590
00:32:29,000 --> 00:32:30,800
どうした また肺病がぶり返したのか?
591
00:32:31,040 --> 00:32:31,880
そうだ
592
00:32:37,800 --> 00:32:39,360
主人から聞いたよ
593
00:32:39,800 --> 00:32:41,440
あんたが長く生きられないのは
594
00:32:42,120 --> 00:32:43,800
自分でやったんだって
595
00:32:45,560 --> 00:32:46,360
本当か?
596
00:32:48,240 --> 00:32:49,200
死に損ないめ
597
00:32:50,200 --> 00:32:51,840
あんたがちゃんと生きないでどうすんだよ
598
00:32:54,320 --> 00:32:55,400
あんたが死んだら
599
00:32:56,200 --> 00:32:57,800
主人がとても悲しむ
600
00:33:01,520 --> 00:33:04,000
あたしは こんなに大きくなるまで
601
00:33:04,520 --> 00:33:07,960
主人があの日みたいに
悲しんでるのを見たことがなかったよ
602
00:33:11,200 --> 00:33:12,640
やっと友達ができたんだ
603
00:33:12,840 --> 00:33:13,840
死ぬなよ
604
00:33:15,160 --> 00:33:17,760
あんたがサクッと死んで
605
00:33:17,920 --> 00:33:19,720
主人を一人にして悲しませるなら
606
00:33:19,880 --> 00:33:22,360
あたしは黄泉路からあんたを引き上げて
607
00:33:22,480 --> 00:33:23,360
また絞め殺すよ
608
00:33:24,440 --> 00:33:25,600
姑娘じゃなかったら
609
00:33:25,720 --> 00:33:26,840
一日に八回は殴ってる
610
00:33:28,120 --> 00:33:30,160
この人語を全然話さないところは
611
00:33:30,400 --> 00:33:31,480
実に似ている
612
00:33:31,640 --> 00:33:32,320
誰に?
613
00:33:33,560 --> 00:33:36,280
人の話を盗み聞くのが好きな奴だ
(*唇語=像某个傻子 どっかのバカだ)
614
00:33:38,840 --> 00:33:39,680
小娘
615
00:33:42,080 --> 00:33:43,640
お前はまた何のでたらめだ
616
00:33:45,080 --> 00:33:46,400
主人 お酒
617
00:33:48,200 --> 00:33:49,080
何するんだ
618
00:33:49,240 --> 00:33:51,240
こんな大人になっても耳を引っ張るなんて やめて
619
00:33:51,360 --> 00:33:53,120
大人? お前がいくつになっても
620
00:33:53,520 --> 00:33:54,920
お前が嫁に行って 嫁ぎ先で
621
00:33:55,080 --> 00:33:56,000
子を産んで母親になっても
622
00:33:56,160 --> 00:33:57,640
私が引っ張りたい時は自由に引っ張るよ
623
00:33:59,240 --> 00:34:00,080
お酒
624
00:34:06,240 --> 00:34:08,230
お前は酒が入ってないのに飲ませるのか
625
00:34:10,000 --> 00:34:11,880
ここは以前 酒蔵だったようです
626
00:34:12,200 --> 00:34:13,440
早くお酒を探しに行ってきなさい
627
00:34:16,000 --> 00:34:16,960
早く行け
628
00:34:17,310 --> 00:34:18,270
さっさと行け
629
00:34:23,840 --> 00:34:24,750
温公子
630
00:34:41,880 --> 00:34:44,880
小僧 お前が言ったのか?
631
00:34:46,680 --> 00:34:48,200
いいえ 言ってません
632
00:34:48,560 --> 00:34:50,080
彼は姓が甄じゃないかと聞きました
633
00:34:50,270 --> 00:34:51,600
私はただ言わないと言っただけです
634
00:34:52,400 --> 00:34:53,790
沈おじ上が気付いたんです
635
00:34:54,080 --> 00:34:54,960
バカ野郎
636
00:34:55,750 --> 00:34:57,680
老温 落ち着け
637
00:35:10,720 --> 00:35:14,840
温公子 君は衍儿か?
638
00:35:18,200 --> 00:35:20,920
衍儿 ご両親は息災か?
639
00:35:34,840 --> 00:35:36,880
手脚の筋を断ち切られ
640
00:35:37,280 --> 00:35:39,320
師門の庇護を失った人は
641
00:35:40,440 --> 00:35:42,720
武林正道の迫害を受けねばならず
642
00:35:42,840 --> 00:35:45,160
また邪門歪道の殺意から身を隠さねばならず
643
00:35:45,640 --> 00:35:47,880
正邪両道の挟撃のもとで
644
00:35:48,040 --> 00:35:50,280
義の一文字を噛み殺して最後まで耐えた
645
00:35:50,800 --> 00:35:53,240
彼が兄弟だと思っていた人のために真実を隠し
646
00:35:53,680 --> 00:35:55,800
彼がどれぐらい無事に過ごせると思う?
647
00:36:08,040 --> 00:36:09,080
すまなかった
648
00:36:09,640 --> 00:36:10,720
遅すぎる
649
00:36:12,600 --> 00:36:15,080
彼らはもうお前たちの謝罪を聞くことはない
650
00:36:19,680 --> 00:36:20,440
老温
651
00:36:20,960 --> 00:36:21,720
どうした
652
00:36:25,440 --> 00:36:26,320
衍儿
653
00:36:28,840 --> 00:36:30,600
私を呼ぶな お前に資格はない
654
00:36:31,160 --> 00:36:32,080
温客行
655
00:36:32,200 --> 00:36:33,320
どうして彼を庇うんだ
656
00:36:33,520 --> 00:36:34,720
お前を庇ってるんだ
657
00:36:35,280 --> 00:36:36,280
遅すぎるよ
658
00:36:37,800 --> 00:36:39,600
彼らはもう死んだ
659
00:36:40,440 --> 00:36:42,840
甄衍も彼らと一緒に死んだ
660
00:36:43,880 --> 00:36:44,920
阿絮
661
00:36:45,480 --> 00:36:49,680
衍儿 君の両親はどうやって死んだんだ
662
00:36:50,600 --> 00:36:51,640
遅すぎる
663
00:36:53,040 --> 00:36:54,640
遅すぎる
664
00:37:11,360 --> 00:37:12,080
老温
665
00:37:15,960 --> 00:37:16,640
ほら
666
00:37:18,000 --> 00:37:18,760
老温
667
00:37:36,240 --> 00:37:37,360
すまない
668
00:37:56,400 --> 00:37:58,160
師父 師叔はどうなったんですか?
669
00:37:59,120 --> 00:38:01,920
案ずるな 脈像に異常はない
670
00:38:02,760 --> 00:38:05,000
ただずっと意識が昏迷して目覚めない
671
00:38:05,280 --> 00:38:06,080
周先生
672
00:38:07,360 --> 00:38:09,640
衍儿はなにか怪我か病があるのか?
673
00:38:10,880 --> 00:38:14,360
沈掌門 私の師弟の名は温客行です
674
00:38:14,800 --> 00:38:16,120
彼がこれで示すことを選んだ
675
00:38:16,760 --> 00:38:18,360
どうか彼の選択を尊重して
676
00:38:18,800 --> 00:38:20,200
この名で呼んでください
677
00:38:20,840 --> 00:38:22,640
彼はいつあなたの師弟になったのだ?
678
00:38:22,800 --> 00:38:23,640
尊師はまた…
679
00:38:24,880 --> 00:38:27,240
うちの師は四季山荘の荘主
680
00:38:28,040 --> 00:38:30,840
諱(いみな)は 姓を秦 名を懐章と尊称された
681
00:38:32,680 --> 00:38:34,160
秦大哥が助けたのか衍…
682
00:38:35,480 --> 00:38:36,240
客行を
683
00:38:37,360 --> 00:38:39,560
よかった よかった
684
00:38:40,320 --> 00:38:41,280
老天はご覧だ
685
00:38:41,800 --> 00:38:43,280
客行がこの幾年を
686
00:38:43,400 --> 00:38:45,120
秦大哥のお膝元で育ったと大哥が知れば
687
00:38:45,440 --> 00:38:46,920
とても喜ぶだろう
688
00:38:47,200 --> 00:38:48,160
おっしゃる通りです
689
00:38:49,320 --> 00:38:51,080
先師は皆さんと旧交でした
690
00:38:52,080 --> 00:38:55,280
ですがなぜ先師から聞いたことがなかったのか
691
00:38:57,280 --> 00:38:58,200
それもそのはず
692
00:38:59,120 --> 00:39:00,400
青崖山の役の後
693
00:39:01,600 --> 00:39:04,480
秦大哥は我々と袂を分かち義を断った
(*割袍断义=袍を割き義を断つ、管宁割席、管寧が席を切って断交したことから意見の相違から友人との交友を断つこと《世説新語・徳行》)
694
00:39:04,600 --> 00:39:05,520
それから往来はない
695
00:39:05,920 --> 00:39:06,960
だから何年も
696
00:39:07,480 --> 00:39:09,120
我らも知らなかったのだ
697
00:39:09,480 --> 00:39:10,840
如玉の子が四季山荘にいたとは
698
00:39:12,960 --> 00:39:14,040
それは奇妙ですね
699
00:39:15,560 --> 00:39:17,840
先師は平素 友人を大切にしていました
700
00:39:18,520 --> 00:39:21,320
なぜ理由もなく全員と断交するんです
701
00:39:21,920 --> 00:39:24,040
そこには何か誤解があるのでは?
702
00:39:28,480 --> 00:39:29,920
誤解とも言えないが
703
00:39:31,400 --> 00:39:32,920
あなたの師父には我らを責める
704
00:39:33,360 --> 00:39:34,480
理由がある
705
00:39:35,160 --> 00:39:38,240
だたそこの因果は話せば長い
706
00:39:39,280 --> 00:39:40,200
もしそうなら
707
00:39:41,160 --> 00:39:43,120
後輩は先師の非を聞く気はありません
708
00:39:43,560 --> 00:39:46,480
沈掌門もこれ以上言う必要はありません
709
00:39:47,200 --> 00:39:48,720
彼は我らが重大な是非を前にして
710
00:39:48,840 --> 00:39:49,960
最後の一線を守らず
711
00:39:50,120 --> 00:39:51,640
不忠不義の行いをしたと責めていたのだ
712
00:39:53,280 --> 00:39:54,440
彼は悪くない
713
00:39:55,480 --> 00:39:56,600
悪くない
714
00:39:57,520 --> 00:39:59,000
私は頭を縮めた亀になった
715
00:39:59,480 --> 00:40:00,880
兄弟に申し訳が立たない
716
00:40:01,480 --> 00:40:03,560
私にどんな抗弁の余地があるというのか
717
00:40:04,680 --> 00:40:05,600
沈慎は
718
00:40:06,280 --> 00:40:08,200
不忠不義で 無能
719
00:40:09,080 --> 00:40:10,760
軟弱な小輩だ
720
00:40:11,760 --> 00:40:13,080
あなたが
721
00:40:14,120 --> 00:40:15,680
容おじ上を毒殺したのですね
722
00:40:15,840 --> 00:40:16,640
なんと言った?
723
00:40:17,600 --> 00:40:18,720
私の弟子は
724
00:40:18,960 --> 00:40:21,600
沈掌門が高崇の剣に毒を塗って
725
00:40:21,760 --> 00:40:22,760
容炫前輩を殺害したのかと聞きました
726
00:40:25,760 --> 00:40:28,160
沈某は容大哥の死や 如玉の災難を座視した
727
00:40:28,280 --> 00:40:30,720
口を閉ざし二十年 私は卑劣で恥知らずだった
728
00:40:30,920 --> 00:40:31,840
それは認める
729
00:40:32,040 --> 00:40:34,360
だがもし私が兄弟を殺害したと言うなら
730
00:40:34,520 --> 00:40:35,840
それより無駄死にを選ぶ
731
00:40:37,000 --> 00:40:38,480
ましてこの無実の罪は尚更
732
00:40:38,680 --> 00:40:40,440
我が大哥は終生悔やんでいた
733
00:40:41,320 --> 00:40:43,840
誰の仕業か分かるなら
734
00:40:44,080 --> 00:40:46,480
私は命を投げ捨ててでも殺してやる
735
00:40:46,800 --> 00:40:47,760
分からないですか
736
00:40:49,800 --> 00:40:52,160
失礼だが今の五湖盟盟主は誰ですか?
737
00:40:53,280 --> 00:40:54,320
あなたたちが言っているのは
738
00:40:54,600 --> 00:40:55,920
あなたたちが言ってるのは趙大侠のことですか
739
00:40:59,200 --> 00:41:00,720
はっきり言ってくれ
740
00:41:02,400 --> 00:41:04,520
毒を塗ったのは二哥だと言うのか
741
00:41:07,440 --> 00:41:08,520
誰が言った?
742
00:41:10,120 --> 00:41:11,320
衍儿だな?
743
00:41:11,960 --> 00:41:13,040
彼に証拠はあるのか?
744
00:41:14,000 --> 00:41:15,760
彼を起こしてはっきり言わせてくれ
745
00:41:17,880 --> 00:41:18,880
あり得ない
746
00:41:19,080 --> 00:41:20,280
もし私の師弟が目覚めて
747
00:41:21,040 --> 00:41:22,640
閣下と話をしたいと言うなら
748
00:41:23,040 --> 00:41:24,400
私は止めるつもりはありません
749
00:41:24,560 --> 00:41:26,880
ダメだ 彼にはっきり言わせる
750
00:41:28,520 --> 00:41:30,680
沈掌門 率直に申し上げるが
751
00:41:31,720 --> 00:41:33,960
昔日 あなたたちは容炫前輩が
死に赴くのを座視していた
752
00:41:34,120 --> 00:41:36,240
人の本質は悪であり 敢えて強要はできない
753
00:41:36,400 --> 00:41:38,280
だがあなたたち五兄弟に
少しの心肝がありさえすれば
754
00:41:38,440 --> 00:41:40,440
私の師弟は孤独で苦しい半生に至らなかった
755
00:41:40,600 --> 00:41:42,600
我らは青崖山で重傷を負ったんだ
756
00:41:42,800 --> 00:41:44,280
彼を顧みる余裕はなかった
757
00:41:44,440 --> 00:41:45,560
私に釈明は不要だ
758
00:41:47,520 --> 00:41:48,720
半夜に夢から醒めようと
(*午夜梦回=真夜中に夢から醒め過去の記憶に胸を痛める《龍城録》柳宗元)
759
00:41:49,240 --> 00:41:51,480
自身の良心を説き伏せることができるなら
760
00:41:53,040 --> 00:41:55,520
因果応報 悉く試すも爽(たが)わず
(*屡试不爽=何度試しても一緒)
761
00:41:56,880 --> 00:41:59,640
あなたたち兄弟の最後も結局は…
762
00:42:05,280 --> 00:42:06,440
すでに過去の事
763
00:42:07,000 --> 00:42:08,000
逝者已んぬるかな
(*逝者已矣=逝者已矣 生者如斯、人が死んでも残された者は生きていくしかない、逝者如斯夫《論語・子罕》)
764
00:42:09,480 --> 00:42:10,680
私は師弟が過去の恨みで
765
00:42:11,040 --> 00:42:12,960
心魔の苦しみを再び受けることを望まない
(*心魔=仏教において心の障害となる欲望、内障)
766
00:42:13,640 --> 00:42:15,520
沈掌門はご自分で立ち去ってください
767
00:42:16,360 --> 00:42:19,720
今後あなたが目を閉じ耳を塞ぐのもいい
768
00:42:20,040 --> 00:42:21,400
悪事に加担するのも結構
(*助纣为虐=暴君の紂と桀のような悪人を助け悪事を働くこと《史記・留侯世家》)
769
00:42:22,240 --> 00:42:24,360
私の師弟があなたを煩わせる気がない限りは
770
00:42:25,080 --> 00:42:28,920
江湖で永遠に相見える日がないことを願う
771
00:42:29,520 --> 00:42:30,440
成嶺
772
00:42:31,560 --> 00:42:33,040
師の代わりに客人を送れ
773
00:42:33,720 --> 00:42:34,520
はい