第一話
1
00:01:54,160 --> 00:01:55,200
二十年前
2
00:01:55,480 --> 00:01:58,440
五湖同盟をはじめとする天下の英雄たちによって
3
00:01:58,640 --> 00:02:00,480
大魔王 容炫(ロン・シュエン)は青崖山で処刑された
4
00:02:00,640 --> 00:02:01,800
後に残ったのは
5
00:02:02,160 --> 00:02:04,680
一晩で人を天下無敵にするという武器庫
6
00:02:06,320 --> 00:02:07,640
その武器庫を開くには
7
00:02:07,800 --> 00:02:10,400
琉璃甲を見つけなければならない
8
00:02:11,000 --> 00:02:13,680
その後 童謡が広まっていく中で
9
00:02:14,160 --> 00:02:15,680
あらゆる勢力が続々と
10
00:02:15,680 --> 00:02:17,240
武器庫の宝を狙い
11
00:02:17,400 --> 00:02:19,440
密かに琉璃甲を探し始めた
12
00:02:20,040 --> 00:02:21,480
北方の晋王(ジンワン)もまた
13
00:02:22,000 --> 00:02:25,000
動き出そうとしていた
(*蠢蠢欲动=悪人が機会を狙っている様子《異苑・句容水脉》)
14
00:02:46,080 --> 00:02:46,640
何が起きたんだ?
15
00:02:46,640 --> 00:02:47,280
見ろ
16
00:02:51,960 --> 00:02:52,680
そっちにも
17
00:03:15,080 --> 00:03:16,040
射手準備!
18
00:03:17,760 --> 00:03:18,520
放て!
19
00:03:28,280 --> 00:03:30,840
晋王は密かに天窗(ティエンチュエン)で
暗殺者を養成し
(*天窗=天窓のこと)
20
00:03:31,120 --> 00:03:32,960
朝廷の重臣を誅殺している
21
00:03:33,240 --> 00:03:35,120
明確な謀反の意
22
00:03:43,960 --> 00:03:45,440
大人(ダーレン) 天窗の刺客です
(*大人=官職の人への敬称)
23
00:03:45,600 --> 00:03:46,440
早く来てください
24
00:04:21,760 --> 00:04:22,680
何者だ
25
00:04:24,160 --> 00:04:25,360
密書を渡してください
26
00:04:26,440 --> 00:04:27,240
させるか
27
00:05:25,760 --> 00:05:26,640
周大人
28
00:05:27,880 --> 00:05:30,560
あなたは天窗の人でしたか
29
00:05:31,040 --> 00:05:34,840
周子舒(ジョウ・ズシュー)
李大人をお送りするため参上しました
30
00:06:16,960 --> 00:06:20,920
周子舒 善悪の果てには報いがある
31
00:06:21,320 --> 00:06:22,600
あなたは悪事に荷担している
(*助纣为虐=悪人に手を貸し悪事を働くこと《史記・留候世家》司馬遷)
32
00:06:22,920 --> 00:06:24,960
来る日の災難は人々に塗炭の苦しみを与える
(*生灵涂炭=人民が非常に苦しむこと《書経・仲虺之誥)
33
00:06:25,680 --> 00:06:27,360
全て今日から始まる
34
00:06:31,040 --> 00:06:32,920
李某 死を惜しむに足りぬ
(*名前+某=へりくだった呼称)
35
00:06:35,360 --> 00:06:37,760
李大人 すみません
36
00:07:05,960 --> 00:07:06,720
周師兄
37
00:07:08,800 --> 00:07:09,640
静安(ジンアン)郡主
(*郡主=王族の娘)
38
00:07:11,160 --> 00:07:11,920
これは…
39
00:07:13,000 --> 00:07:15,920
振武節度使は逆臣と結託し
(*振武节度使=内モンゴル方面の軍職)
40
00:07:16,080 --> 00:07:18,840
密かに造反を謀ったため すでに処刑されました
41
00:07:20,200 --> 00:07:23,160
無理です あり得ません
42
00:07:24,120 --> 00:07:25,360
父はひたすら国のため民のために尽くした
43
00:07:25,520 --> 00:07:26,320
その情憐れむべくも
44
00:07:26,840 --> 00:07:28,320
その行い誅に当たる
(*其情可悯 其行当诛=可能性があるかぎり疑いがある《石田雑記》沈周)
45
00:07:32,520 --> 00:07:34,200
今日 周某が参りましたのは
46
00:07:34,680 --> 00:07:36,920
郡主に選択肢を差し上げるためです
47
00:07:37,160 --> 00:07:39,680
郡主は戦局の混乱の中から
48
00:07:39,960 --> 00:07:42,120
我が師弟 秦九霄(チン・ジウシャオ)の遺体を
49
00:07:42,280 --> 00:07:44,040
私の手元まで付き添い護送くださった
50
00:07:45,240 --> 00:07:46,560
周某は心に銘記しました
51
00:07:49,760 --> 00:07:51,840
郡主は金玉の御身
52
00:07:52,000 --> 00:07:54,880
ご自分で命を断てば屈辱は免れましょう
53
00:07:55,040 --> 00:07:57,160
ならば周大人に感謝すべきなのかしら
54
00:07:58,680 --> 00:07:59,920
あなたは我が家族を皆殺しにしたのに
55
00:08:01,280 --> 00:08:03,600
まだ私に尊厳死の選択を与えてくださる
56
00:08:32,240 --> 00:08:33,560
あなたは九霄を
57
00:08:37,640 --> 00:08:38,680
どこに葬ったのです?
58
00:08:39,280 --> 00:08:40,830
四季山荘
59
00:08:43,000 --> 00:08:44,480
師匠の側で眠っている
60
00:08:49,560 --> 00:08:52,080
四季 花は断えず
(*四时花不断《斎居雑興》王義山)
61
00:08:55,040 --> 00:08:57,120
九州の事 尽く知る
(*九州=中国全域の古称)
62
00:09:16,960 --> 00:09:17,880
酷いな
63
00:09:18,960 --> 00:09:19,800
渡して
64
00:09:20,600 --> 00:09:21,520
渡して
65
00:09:23,880 --> 00:09:24,760
煩いよ
66
00:09:24,920 --> 00:09:25,640
師弟よ
67
00:09:26,480 --> 00:09:28,000
お前に意中の姑娘がいるのなら
68
00:09:28,280 --> 00:09:29,520
師兄はとても嬉しい
69
00:09:33,320 --> 00:09:35,680
以前 彼は私に言いました
70
00:09:37,680 --> 00:09:39,200
引退した後
71
00:09:40,640 --> 00:09:42,440
私と一緒になって
72
00:09:42,880 --> 00:09:45,160
田畑を耕して暮らそうと
73
00:10:13,720 --> 00:10:14,720
跡形なく処理しましたが
74
00:10:15,240 --> 00:10:17,080
時勢を弁えぬ将領が数名おり
(*不识时务=時流に鈍感であること《後漢書・張覇伝》)
75
00:10:17,200 --> 00:10:18,360
頑迷に投降を拒否しましたので
(*负隅顽抗=特定条件を利用し降伏を頑なに拒否すること《孟子・尽心下》)
76
00:10:19,080 --> 00:10:20,920
部下が切り捨てました
77
00:10:26,000 --> 00:10:28,840
首領 畢長風(ビ・チャンフォン)が
節度使を討つことは
78
00:10:29,000 --> 00:10:29,760
大きな過ちを犯すことだと
79
00:10:30,080 --> 00:10:31,560
天窗からの離反の意を譲りません
80
00:10:31,720 --> 00:10:35,000
晋王はお怒りで あなたにご自分で対処するようにと
81
00:11:20,920 --> 00:11:21,720
畢叔
(*叔=自分の親より年下の親世代の男性への呼称)
82
00:11:24,920 --> 00:11:27,000
荘主 来られたか
83
00:11:29,120 --> 00:11:29,920
畢叔
84
00:11:31,520 --> 00:11:35,320
四季山荘にはあなたと私だけが残った
85
00:11:38,880 --> 00:11:41,560
八十一人の兄弟はあなたに従い晋州に来た
86
00:11:42,480 --> 00:11:44,480
今やあなたと私だけ
87
00:11:45,720 --> 00:11:47,440
九霄さえも死んだ
88
00:11:47,760 --> 00:11:49,840
四季山荘にまだ何がある?
89
00:11:56,000 --> 00:11:57,560
あなたの怪我はなぜ治らぬのか
90
00:11:58,840 --> 00:12:02,720
影有れど跡無く 進めど出ること無し
91
00:12:04,440 --> 00:12:08,880
知らぬ所無く なき所無し
92
00:12:12,040 --> 00:12:12,880
この四無しは
93
00:12:14,080 --> 00:12:17,840
天窗創立時の 晋王の要求です
94
00:12:18,960 --> 00:12:19,880
天窗は
95
00:12:20,920 --> 00:12:24,120
入れば 出ることはできない
96
00:12:26,040 --> 00:12:27,360
知っての通りです
97
00:12:31,320 --> 00:12:34,680
分かっておる 立って出られずとも
98
00:12:34,800 --> 00:12:36,600
横たわっては出られるのでは?
99
00:12:37,760 --> 00:12:40,200
たとえたった一日の痛快な生だとしても
100
00:12:40,960 --> 00:12:44,120
晋王の走狗に成り下がっているよりはましだ
101
00:12:45,840 --> 00:12:47,280
私の下で働き続けるよりも
102
00:12:49,160 --> 00:12:50,840
廃人に成り下がりたいと
103
00:12:53,000 --> 00:12:56,480
幾年も荘主に従い死線を彷徨ってきた
(*出生入死=生死の境を出入りする、生死を顧みない《老子》)
104
00:12:56,640 --> 00:12:58,720
やれと言われたことは全てやった
105
00:12:59,480 --> 00:13:02,640
だが四季山荘の兄弟親族 皆迫害された
106
00:13:02,960 --> 00:13:05,080
晋王の意図を疑わざるを得ない
107
00:13:06,640 --> 00:13:07,960
今となっては
108
00:13:08,800 --> 00:13:10,720
私は実際に手を下せない
109
00:13:11,800 --> 00:13:13,400
七本の釘を打つと言わず
110
00:13:14,200 --> 00:13:18,040
八つ裂きにされようとも辞めさせてもらう
111
00:13:19,680 --> 00:13:21,320
あなたも仕方がないとは分かっている
112
00:13:21,600 --> 00:13:23,120
私は咎めぬ
113
00:13:26,120 --> 00:13:27,440
もしまだ気遣いくださるならば
114
00:13:28,000 --> 00:13:30,680
老畢とあなたの長い付き合いに免じて
(*老+名前=親しみを込めたさん付け)
115
00:13:32,600 --> 00:13:34,480
釘を賜りたい
116
00:13:57,360 --> 00:14:02,120
そうですね
子舒はこの手で畢叔を送り出すことしかできない
117
00:14:03,760 --> 00:14:07,760
安心を 子舒がご家族の面倒をみます
118
00:14:09,760 --> 00:14:12,440
安心 心配
119
00:14:13,600 --> 00:14:15,240
もう知ることはない
120
00:14:16,440 --> 00:14:19,120
荘主 頼みます
121
00:15:23,600 --> 00:15:24,640
この老畢は
122
00:15:25,360 --> 00:15:27,240
実に気骨のある男だ
123
00:15:27,680 --> 00:15:29,160
七竅三秋釘
124
00:15:29,440 --> 00:15:31,520
普通の者が耐えられるものではない
125
00:15:31,840 --> 00:15:32,600
張哥
(*名前+哥=親しみを込めた同年代や年上への敬称)
126
00:15:33,000 --> 00:15:35,960
一体 七竅三秋釘って何ですか?
127
00:15:38,680 --> 00:15:44,320
七竅三秋釘 三年で冥界に赴く
128
00:15:45,440 --> 00:15:46,760
一旦この釘刑を受ければ
129
00:15:47,800 --> 00:15:49,600
武功が失われるだけでなく
130
00:15:49,600 --> 00:15:52,640
五感が徐々に衰えてゆく
131
00:15:52,960 --> 00:15:54,920
まず最初は口がきけなくなり
132
00:15:55,040 --> 00:15:57,880
聞くことも 嗅ぐことも 見ることもできなくなる
133
00:15:58,320 --> 00:16:00,560
一つの生きた死人に成り変わるのだ
134
00:16:01,000 --> 00:16:01,880
これでしか
135
00:16:02,240 --> 00:16:05,400
天窗の秘密を世間に漏らさぬようにはできん
136
00:16:08,040 --> 00:16:09,160
廃人になろうと
137
00:16:09,600 --> 00:16:12,080
心はまだはっきりしている
138
00:16:12,520 --> 00:16:15,360
そして三年憂き目を見てやっと
139
00:16:15,360 --> 00:16:18,000
蝋燭の火が吹き消されるのだ
(*吹灯拔蜡=命がなくなる《春子姑娘》)
140
00:16:18,800 --> 00:16:21,320
そんな なぜこんな酷い目に遭うのです?
141
00:16:21,480 --> 00:16:23,080
直接死んだ方がましじゃないですか
142
00:16:24,000 --> 00:16:24,880
おぬしの言う通り
143
00:16:25,000 --> 00:16:26,400
だがそんな簡単には死ねんぞ
144
00:16:26,680 --> 00:16:28,920
これは天窗の掟だ
145
00:16:29,280 --> 00:16:31,760
内心をひどく恐れさせるからこそ
146
00:16:31,880 --> 00:16:33,320
敢えて逃走を考えず
147
00:16:33,440 --> 00:16:33,960
離脱は叶わぬのだ
148
00:17:01,440 --> 00:17:02,360
万一ある日
149
00:17:02,480 --> 00:17:04,800
血迷って天窗をやる気がなくなったら
(*猪油蒙了心=心を豚脂が覆う、前後不覚)
150
00:17:05,080 --> 00:17:06,520
任務中に刀を抜き出し
151
00:17:06,680 --> 00:17:08,920
不注意を装って突き刺せば
152
00:17:09,118 --> 00:17:10,958
苦しまずにあっさり死ねる
153
00:17:11,080 --> 00:17:12,800
そうやって殉職した後は
154
00:17:13,280 --> 00:17:17,480
我らの荘主が
おぬしの家族の面倒を見てくれるぞ
155
00:17:17,920 --> 00:17:20,480
いやいやいや そんなことはできない
156
00:17:20,840 --> 00:17:22,430
私の一生は天窗だけに忠実です
157
00:17:22,600 --> 00:17:23,520
荘主だけに忠実です
158
00:17:27,080 --> 00:17:28,120
なんと呼んだ
159
00:17:29,720 --> 00:17:30,400
荘主
160
00:17:30,560 --> 00:17:32,440
いえ 首領
161
00:17:33,200 --> 00:17:34,600
間違えました
162
00:17:35,280 --> 00:17:38,000
ご老人方はこうお呼びしておられたようなので
163
00:17:38,480 --> 00:17:40,840
四季山荘最後の一人もいなくなった
164
00:17:41,520 --> 00:17:45,080
"荘主"の二文字を 二度と持ち出さぬよう
165
00:18:10,200 --> 00:18:11,160
十年だ
166
00:18:12,440 --> 00:18:14,160
十年帰っていない
167
00:18:15,320 --> 00:18:17,800
私の目の前で死んでいった
四季山荘の者の顔は全て覚えている
168
00:18:18,680 --> 00:18:19,640
皆死んだ
169
00:18:20,440 --> 00:18:21,640
ただ一人私だけが生きている
170
00:18:22,680 --> 00:18:23,600
なぜだ
171
00:18:24,840 --> 00:18:26,760
当然私に死ぬ資格などなく
172
00:18:26,880 --> 00:18:27,920
生きているべきだからだ
173
00:18:28,960 --> 00:18:30,240
天窗首領
174
00:18:31,040 --> 00:18:33,400
一人の下にいて 万人の上にいる
175
00:18:34,320 --> 00:18:36,600
こんなに力を誇示して生きてきた
(*耀武扬威=居丈高な様子《両世姻縁》)
176
00:18:37,360 --> 00:18:39,960
守ってやりたい一人すら守りきれずに
177
00:19:06,080 --> 00:19:08,440
子舒はなぜ孤王に会いに来ないのだ?
178
00:19:09,040 --> 00:19:10,720
彼の傷はまだ癒えておらんのか?
179
00:19:11,560 --> 00:19:12,480
王爺お答えします
(*爷=主人のこと *王爷=親王のこと)
180
00:19:13,600 --> 00:19:16,920
逆臣は江湖の手練を沢山集めており
181
00:19:17,200 --> 00:19:18,600
それぞれ武功が高く
182
00:19:18,760 --> 00:19:20,800
首領はいまだ手を出せずにいます
183
00:19:20,960 --> 00:19:23,880
今回はただ内傷の影響かと思われますが
184
00:19:24,160 --> 00:19:26,560
ここ数日閉関して療養しております
185
00:19:27,120 --> 00:19:29,760
秦九霄の死のために
186
00:19:29,960 --> 00:19:31,560
吐血し昏倒した後よりの
187
00:19:31,760 --> 00:19:35,040
彼のこの内傷はどれほどだ?
188
00:19:35,680 --> 00:19:36,760
一年以上だぞ?
189
00:19:37,160 --> 00:19:37,880
申し上げた通りです
190
00:19:38,320 --> 00:19:39,040
そうだ
191
00:19:39,800 --> 00:19:41,520
秦九霄一人のためにこんな様ならば
192
00:19:42,200 --> 00:19:43,600
まこと大した役には立つまい
193
00:19:44,320 --> 00:19:46,040
できるだけ早く孤王に会いに来させよ
194
00:19:47,120 --> 00:19:48,080
仰せのままに
195
00:19:57,680 --> 00:20:00,760
四季 花は常に在り
196
00:20:01,400 --> 00:20:04,360
九州の事 尽く知る
197
00:20:10,960 --> 00:20:13,680
八十一人の兄弟があなたに従い晋州に来た
198
00:20:14,600 --> 00:20:16,720
今はあなたと私だけ
199
00:20:17,880 --> 00:20:19,880
九霄さえも死んだ
200
00:20:20,080 --> 00:20:22,040
四季山荘にまだ何がある?
201
00:20:38,640 --> 00:20:39,840
天窗から離れるために
202
00:20:41,160 --> 00:20:42,840
一年半の時間を要して
203
00:20:43,960 --> 00:20:47,080
自ら七竅三秋釘を打ち込んだ
204
00:20:47,880 --> 00:20:51,160
七竅三秋釘には実は二通りの打ち方がある
205
00:20:53,160 --> 00:20:55,320
もし一度に七本の釘を打ち込めば
206
00:20:56,240 --> 00:20:58,720
受刑者はやがて五感を失い
207
00:20:59,160 --> 00:21:02,760
ただ廃人の身で三年を過ごすことになる
208
00:21:04,040 --> 00:21:07,000
しかし三ヶ月ごとに一つ入れると
209
00:21:07,800 --> 00:21:10,320
その釘は少しずつ肉の内に馴染み
210
00:21:10,720 --> 00:21:12,520
自身の体と一体化する
211
00:21:13,400 --> 00:21:15,560
ただ三年の命ではあるが
212
00:21:16,160 --> 00:21:18,120
五割の功夫なら残せる
(*功夫=中国武術のこと、またその訓練や鍛煉の蓄積や力量、またその掛けた時間や労力のこと)
213
00:21:19,160 --> 00:21:21,640
次第に消えゆく五感を繋ぎとめることができ
214
00:21:22,040 --> 00:21:23,480
最終的には
215
00:21:25,080 --> 00:21:28,160
三年と十八ヶ月の心を穿ち骨を蝕む痛みに
216
00:21:28,560 --> 00:21:30,680
堪える必要があるだけだ
217
00:21:34,480 --> 00:21:35,560
師兄
218
00:21:36,360 --> 00:21:37,720
やめて
219
00:21:39,080 --> 00:21:40,240
九霄
220
00:21:44,280 --> 00:21:45,640
なぜ泣く?
221
00:21:46,160 --> 00:21:47,680
泣くことがあるか?
222
00:21:48,680 --> 00:21:50,200
当然の報いだ
223
00:21:51,800 --> 00:21:55,680
四季山荘の八十一人
224
00:21:56,080 --> 00:21:57,640
結局のところ
(*九九归一=九は最大値で次はまた一に戻ることから結局、とどのつまり)
225
00:21:58,400 --> 00:22:01,240
全員 私の手によって葬られた
226
00:22:01,600 --> 00:22:03,320
伝承は途絶える
227
00:22:04,480 --> 00:22:06,040
私は誰一人守れない
228
00:22:08,160 --> 00:22:12,760
お前の想い人までこの手で送ったのに
229
00:22:15,400 --> 00:22:16,520
私が死んだ後
230
00:22:17,840 --> 00:22:20,480
お前に会わせる顔などあるのか?
231
00:22:39,480 --> 00:22:40,800
今ごろ
232
00:22:43,640 --> 00:22:47,400
静安郡主と顔を合わせているかも知れない
233
00:22:49,760 --> 00:22:51,720
彼女はお前に報告しているだろうな
234
00:23:06,920 --> 00:23:09,600
どうして私はこんな凶悪な師兄なのか
235
00:23:11,640 --> 00:23:13,480
弟妹への挨拶の品が
236
00:23:15,520 --> 00:23:17,360
一瓶の毒薬だとは
237
00:24:25,760 --> 00:24:28,200
侍衛周子舒参上しました
238
00:24:28,320 --> 00:24:29,000
入れ
239
00:24:44,400 --> 00:24:47,280
周子舒 王爺に拝謁します
240
00:24:48,160 --> 00:24:48,840
立ちなさい
241
00:24:54,960 --> 00:24:55,840
その顔色
242
00:24:57,440 --> 00:24:59,400
実によくない まずは休みなさい
243
00:25:00,400 --> 00:25:01,800
お前は国の柱石だ
244
00:25:02,360 --> 00:25:05,680
孤王が大業をなすにはまだお前の協力が必要だ
245
00:25:06,120 --> 00:25:08,120
周子舒はもともと江湖の民草でした
246
00:25:09,000 --> 00:25:10,880
王爺の刀でしかない
247
00:25:11,560 --> 00:25:12,960
そして今 江東は平穏です
(*江东=長江下流域)
248
00:25:13,480 --> 00:25:16,360
王爺が頼らなければならないのは治国の才です
249
00:25:16,560 --> 00:25:18,120
子舒はただの一介の武人
250
00:25:20,200 --> 00:25:22,320
王爺の重責を担うことは難しい
251
00:25:28,000 --> 00:25:32,800
子舒 この話はどういう意味だ
252
00:26:16,000 --> 00:26:16,840
子舒
253
00:26:17,880 --> 00:26:19,480
子舒の心はもう折れました
254
00:26:20,120 --> 00:26:22,600
内傷は癒えず お役に立てません
255
00:26:23,600 --> 00:26:25,120
ですが骸(むくろ)は故郷にお還しいただきたい
(*乞骸骨=骸骨を乞う、官職から退く)
256
00:26:26,360 --> 00:26:28,000
子舒は天窗を退任すべく
257
00:26:30,240 --> 00:26:34,320
自らに七竅三秋釘の刑を要請し
258
00:26:35,080 --> 00:26:36,760
自らに許可し
259
00:26:38,040 --> 00:26:39,040
この釘を
260
00:26:41,080 --> 00:26:42,840
すでに六本打ち入れました
261
00:26:44,360 --> 00:26:45,680
残りの一本を打てば
262
00:26:46,920 --> 00:26:49,240
恐らく私は王爺にお別れを告げられません
263
00:26:50,760 --> 00:26:51,360
王爺には
264
00:26:51,400 --> 00:26:53,440
功績はなくとも苦労はございますこの身に
ご配慮いただき
265
00:26:54,520 --> 00:26:56,240
手をお貸しください
266
00:26:57,080 --> 00:26:57,920
よろしい
267
00:27:01,520 --> 00:27:02,840
実によい
268
00:27:04,400 --> 00:27:05,480
周子舒よ
269
00:27:06,080 --> 00:27:08,160
天窗の首領として恥じぬ
270
00:27:08,520 --> 00:27:09,760
残酷な決断だ
271
00:27:09,880 --> 00:27:12,040
このように己を傷つけることも厭わぬとは
272
00:27:17,600 --> 00:27:18,520
王爺 お静まりを
273
00:27:19,240 --> 00:27:20,640
お前が生きようと思わぬなら
274
00:27:20,800 --> 00:27:22,120
本王が手を貸してやろう
275
00:27:22,240 --> 00:27:24,040
何ゆえこんな大手間をかける?
276
00:27:27,360 --> 00:27:30,880
子舒のこの命は王爺がくださった
277
00:27:32,600 --> 00:27:33,640
王爺がお許しくだされば
278
00:27:34,680 --> 00:27:38,200
子舒はこの体をあと二年は引きずって生きます
279
00:27:39,840 --> 00:27:40,800
そうでなければ
280
00:27:42,520 --> 00:27:44,240
この命を奪ってくださればいい
281
00:28:04,920 --> 00:28:05,840
全てが私を欺く
282
00:28:07,880 --> 00:28:09,120
允行(ユンシン)は去った
283
00:28:15,920 --> 00:28:16,840
北淵(ベイユエン)
284
00:28:18,440 --> 00:28:19,600
北淵はもういない
285
00:28:22,440 --> 00:28:24,560
孤王は真の孤立無援ではないか
(*孤家寡人=孤立して浮き立っている人、孤立無援の人)
286
00:28:27,000 --> 00:28:30,600
子舒 嘘をついてるのであろう?
287
00:28:31,800 --> 00:28:34,240
もし孤王がお前の命を残せば
288
00:28:34,400 --> 00:28:35,760
また我が大業の成就を補佐する
289
00:28:37,680 --> 00:28:38,840
そうであろう?
290
00:28:42,320 --> 00:28:46,360
王爺に最後の釘を与えていただきたく存じます
291
00:28:48,000 --> 00:28:49,640
孤王の股肱(ここう)の臣になりたくもないなら
292
00:28:51,240 --> 00:28:54,240
お前はむしろ廃人になる方がよい
293
00:28:56,600 --> 00:28:57,480
よかろう
294
00:28:59,240 --> 00:29:00,800
お前の願いは分かった
295
00:29:03,240 --> 00:29:07,520
七竅三秋釘 三年で冥界に赴く
296
00:29:09,000 --> 00:29:12,720
周子舒 しっかり生きよ
297
00:29:13,840 --> 00:29:14,840
三年
298
00:29:15,480 --> 00:29:16,520
三年の内に
299
00:29:16,680 --> 00:29:20,040
本王は必ず中原に入り 玉座に登る
(*中原=中国文化の中心)
300
00:29:20,560 --> 00:29:21,880
お前に見せてやろう
301
00:29:22,680 --> 00:29:26,200
我こそが誰も成し得ていない
302
00:29:26,920 --> 00:29:30,000
その天命の子であることを
303
00:29:33,520 --> 00:29:36,760
そのために尽力致します
304
00:29:41,160 --> 00:29:45,440
鵬挙(ポンジュ) 彼が望むようにしてやれ
305
00:29:46,640 --> 00:29:50,280
今日より お前が天窗の首領だ
306
00:30:06,400 --> 00:30:09,800
首领 王爺がおっしゃるのは
307
00:30:19,120 --> 00:30:20,320
おめでとう
308
00:30:20,960 --> 00:30:22,840
今日 二人の望みがかなった
309
00:30:40,680 --> 00:30:46,000
涓涓と江漢は流れ 天窗は冥室へと通ずる
310
00:30:47,080 --> 00:30:53,560
讒邪(ざんじゃ)は公正を害し 浮雲は白日を翳す
(*《臨終詩》孔融)
311
00:30:54,240 --> 00:30:56,360
待っておれ 周子舒
312
00:30:56,880 --> 00:30:58,960
ひとまずお前を放してやる
313
00:34:11,760 --> 00:34:13,280
あの憎き裏切り者の吊死鬼(ディアオスーグイ)は
314
00:34:13,760 --> 00:34:16,200
突然崖から飛び降りました
315
00:34:16,600 --> 00:34:17,920
部下は手が及ばず
316
00:34:18,400 --> 00:34:19,400
阻めませんでした
317
00:34:21,280 --> 00:34:22,010
能無しめ
318
00:34:24,570 --> 00:34:27,280
生きているなら人の姿を
死んでいるならその屍を見せなさい
319
00:34:27,410 --> 00:34:28,650
屍は?
320
00:34:30,760 --> 00:34:33,120
崖下 崖下に躯はございません
321
00:34:36,360 --> 00:34:38,840
よろしい 素晴らしい
322
00:34:41,760 --> 00:34:43,600
部下は 部下の罪は万死に値します
323
00:34:43,930 --> 00:34:46,170
どうかご寛恕いただき命をお助けください
324
00:34:46,280 --> 00:34:48,490
どうか命をお助けください お助けを
325
00:35:03,730 --> 00:35:05,810
谷主お許しを 跪け
326
00:35:06,450 --> 00:35:09,370
谷主お許しを お許しを
327
00:35:09,730 --> 00:35:12,770
吊死鬼が本座の琉璃甲を盗んだ
328
00:35:14,010 --> 00:35:16,890
琉 琉璃甲
329
00:35:17,050 --> 00:35:18,810
青崖山 三千の鬼衆に伝えよ
330
00:35:19,010 --> 00:35:19,970
今より
331
00:35:20,210 --> 00:35:22,290
お前たちは巣を傾け繰り出し
(*倾巢而出=敵が全兵力で出動すること《斉故安陸昭王碑文》)
332
00:35:22,450 --> 00:35:24,290
裏切り者を切り裂け
333
00:35:24,490 --> 00:35:26,170
どんな魑魅魍魎であろうと
334
00:35:26,330 --> 00:35:27,930
本座のために琉璃甲を取り戻した者は
335
00:35:29,050 --> 00:35:32,490
十大悪鬼の頭にしてやろう
336
00:35:34,050 --> 00:35:37,210
吊死鬼を殺し 琉璃甲を取り戻す
337
00:35:37,370 --> 00:35:40,570
吊死鬼を殺し 琉璃甲を取り戻す
338
00:36:30,010 --> 00:36:31,570
乞食を三年しようとも
339
00:36:33,370 --> 00:36:35,130
皇帝とは交代しないぞ
340
00:36:45,650 --> 00:36:46,810
主人主人 見てください
341
00:36:46,970 --> 00:36:48,530
あの乞食は諦めがいいね
342
00:36:55,130 --> 00:36:57,370
自分の前にお碗の一つすら置いてない
343
00:36:57,530 --> 00:36:59,650
一銭も恵んでもらわないのに嬉しそうだ
344
00:37:00,810 --> 00:37:02,290
もしかしてバカなのかな?
345
00:37:12,530 --> 00:37:15,690
彼は日向ぼっこをしている
346
00:37:16,490 --> 00:37:18,250
日向ぼっこ?
347
00:37:21,210 --> 00:37:22,770
太陽を浴びて何かいいことあるの?
348
00:37:25,250 --> 00:37:27,290
あんなにも痩せてるのに
349
00:37:27,650 --> 00:37:29,570
これ以上日焼けしたら干からびちゃうよ
350
00:37:33,490 --> 00:37:36,570
主人 あたしは世間知らずなんだから
からかわないでよ
351
00:37:37,410 --> 00:37:38,490
あいつは明らかに
352
00:37:38,610 --> 00:37:40,370
三年は満腹になったことがないみたいだ
353
00:37:40,570 --> 00:37:42,210
容易く倒れて息を引き取るよ
354
00:37:42,730 --> 00:37:43,650
違う?
355
00:37:46,130 --> 00:37:47,650
あたしはあいつが乞食だと賭ける
356
00:37:48,130 --> 00:37:49,010
何を賭ける?
357
00:37:51,730 --> 00:37:53,090
あたしと三日間牌を打つのを賭ける
358
00:37:53,970 --> 00:37:55,490
ならばもし負けたら?
359
00:37:58,730 --> 00:38:01,410
それならあなたと三日間牌を打ちます
360
00:38:03,650 --> 00:38:06,730
小娘 お前も私を謀るの?
361
00:38:16,210 --> 00:38:17,810
小五 彼に銭を
(*小+名前 目下の者を呼ぶ呼称、蔑称にも *数字で人を呼ぶのはだいたい生まれ順)
362
00:38:22,050 --> 00:38:22,970
主人主人 見て
363
00:38:23,050 --> 00:38:23,970
誰かが彼に銭をあげたよ
364
00:38:24,050 --> 00:38:24,730
あたしの勝ちだ
365
00:38:30,050 --> 00:38:32,530
なんであいつは銭が要らないの?
366
00:38:33,290 --> 00:38:35,410
少爺 この物乞いを見てください
(*少爷=坊ちゃん)
367
00:38:35,570 --> 00:38:36,970
銭を恵んでもらっても"謝"の字一つすらない
368
00:38:37,090 --> 00:38:37,970
乞食で当然ですよ
369
00:38:38,130 --> 00:38:39,330
誰が彼の身体の上に投げさせたのです
370
00:38:43,610 --> 00:38:44,770
なあ乞食
371
00:38:48,450 --> 00:38:50,170
あたしがご馳走してやろうか?
372
00:38:51,410 --> 00:38:52,690
そちらの小善人
373
00:38:54,090 --> 00:38:58,250
それなら 酒を奢ってくれる方がいい
374
00:38:58,970 --> 00:39:00,770
主人主人 彼は私を善人と言ってる
375
00:39:00,930 --> 00:39:01,970
小善人
376
00:39:02,930 --> 00:39:04,650
賭けだ賭けだ 賭け続行だよ
377
00:39:06,410 --> 00:39:10,410
いいよ この姑娘がお酒を奢ってやる
(*姑娘=若い娘)
378
00:39:21,690 --> 00:39:22,570
やる
379
00:39:24,690 --> 00:39:26,010
酒に毒が入ってるのを気にせず
380
00:39:26,170 --> 00:39:27,530
飲んだらお前の臓腑が腐ってしまうぞ
381
00:39:28,770 --> 00:39:29,650
良い酒だ
382
00:39:32,730 --> 00:39:34,130
毒で死んでも値打ちがある
383
00:39:35,250 --> 00:39:37,010
酒に凭りて紅顔を寄せる
(*凭酒借红颜=酒に頼って美人を借りる《句》李德裕)
384
00:39:37,210 --> 00:39:38,690
感謝する小善人
385
00:39:39,010 --> 00:39:39,970
小善人
386
00:39:45,450 --> 00:39:46,210
持っとけ
387
00:39:48,050 --> 00:39:49,610
お姐さんは素敵な功夫ですね
388
00:39:52,290 --> 00:39:53,050
教えろ
389
00:39:53,370 --> 00:39:55,130
あんたは誰かが銭をやっても要らない
390
00:39:55,290 --> 00:39:56,890
酒は要るけど銭は要らない
391
00:39:57,090 --> 00:39:58,690
乞食のくせに抜け目がないな
392
00:40:00,250 --> 00:40:02,050
誰が乞食だと言った?
393
00:40:02,650 --> 00:40:05,250
ちょっと日向ぼっこをしてただけだ
394
00:40:24,770 --> 00:40:25,730
姑娘を騙してお酒を飲んだの?
395
00:40:25,770 --> 00:40:26,410
返しなさい
396
00:40:42,530 --> 00:40:45,090
酒は返さぬが 命ならやる
397
00:40:45,330 --> 00:40:47,130
姑娘があんたの命を奪えないとでも思ってるの?
398
00:41:11,250 --> 00:41:13,130
お姐さん そんな良い功夫を持ってるのに
399
00:41:13,290 --> 00:41:14,650
どうして病人をいじめるのです
400
00:41:14,930 --> 00:41:15,730
武を習う者は
401
00:41:15,850 --> 00:41:17,690
義を持って侠を行うが当然
貧しい人や弱い人を助けるべきです
(*济弱扶危=弱者や困っている人を助ける《隋唐演義》)
402
00:41:17,810 --> 00:41:19,050
侠義道の三文字に背きません
403
00:41:19,170 --> 00:41:19,810
クソガキ
404
00:41:19,970 --> 00:41:21,610
あたしにくどくど説教するつもり?
405
00:41:21,770 --> 00:41:23,490
気をつけないとお前の舌を切り取るよ
406
00:41:51,490 --> 00:41:52,890
こちらの小善人は
407
00:41:53,130 --> 00:41:56,490
なかなか甘いを顔して 手はかなり辛辣だな
408
00:41:56,970 --> 00:41:57,850
信じられない