法意識考
日本人はムラ社会で生きている
今から30年前、とある民事訴訟の裁判がありました。隣人訴訟といい、同じ町内の家族が別な家族を訴えたという事件です。
子どもを預かってもらったが、その子が溜め池で溺死したことに端を発した訴訟です。地裁では一部請求は認容されたが、意外なことでその訴訟は幕を引くことになります。
新聞の投書で「近所付き合いに冷や水をさす」とか、「亡くなった子どもで金を稼いでいる」というものがあり、結局原告は訴えを取り下げたのです。
当時の法務省は「裁判を受ける権利が侵害された」として国民に異例の自粛を求めました。
この事件は、法律が認めた権利より世間体を重要視していることを示唆しています。これは現在でも意識は同じです。例えばサラリーマンの有給休暇を会社が認めていないため休暇がとれない、といった事態を招くことにも繋がります。