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中国物流DXツアー2025:深セン・広州・東莞で見た革新的技術と未来のビジネスチャンス
2025年、中国広東省で私が企画・運営した物流DXツアーは、昨年に続き第2回目の開催となりました。このツアーは、深セン・広州・東莞の3都市を巡り、自動運転やドローン配送、OMO型小売りといった中国が誇る最先端技術に直接触れ、具体的なビジネスマッチングを目的とした2泊3日のプログラムです。参加者は日本から19名、主に物流企業の経営者や小売業界のリーダーで構成され、私が事前に選定した訪問先や体験プログラムを通じて、日本と中国の新たなビジネスチャンスを模索する場として非常に実りのある内容となりました。
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以下に、訪問先企業と体験したサービスについて詳しくご紹介し、その後なぜ私が今回視察ツアーを企画したのかがわかるように解説をしていきます。
自動運転技術の未来を体感:Werideのロボバスとロボタクシー
ツアーのハイライトのひとつが、自動運転技術をリードする上場企業Werideの訪問でした。この企業は、深センを拠点に完全自動運転のソリューションを提供しており、都市交通の効率化や安全性向上に取り組んでいます。
先日紹介した中国の自動運転領域のWeRideを訪問し、ロボバス、ロボタクシー、ロボバン、ロボ清掃車の様子がわかる動画を作りました。
— 吉川真人🇯🇵深セン (@mako_63) January 15, 2025
既にシンガポール、アメリカ、フランス、ドイツ、スイス、中東に展開しています。日本でも今は実証実験中なのでこれから徐々に広がっていく可能性があります。 pic.twitter.com/Q7Ir92fgfb
ロボバス・ロボタクシーの乗車体験
参加者たちはWerideが開発したロボバスとロボタクシーに実際に乗車しました。深センの交通量が多い市内を走るロボバスは、事前にプログラムされたルートを正確に走行し、交差点や混雑エリアでもスムーズに動作。障害物や歩行者を的確に検知して停車・回避する動作には、多くの参加者が感嘆の声を上げました。
また、ロボタクシーでは、スマートフォンでアプリを使用して車両を呼び出し、無人で目的地まで移動する一連の流れを体験しました。このサービスは、特に都市部や地方都市における交通課題を解決する手段として、非常に高い可能性を秘めているといえます。
物流や工場向けの自動運転車両
Werideでは、物流センターや工場内で使用される小型の自動運転車両も開発されています。これらの車両は、荷物の自動搬送や短距離の配送業務に適しており、参加者の中には日本の物流施設での活用を検討する声もありました。特に人手不足が深刻化している日本の物流業界にとって、こうした技術は課題解決の大きな鍵となるでしょう。
日本でライドシェア論争している間に、中国のWerideが提供する無人自動運転のロボタクシーがUAEにてUberで利用できるまで先に進んでいます。しかも使われている車両は広州汽車の電気自動車AION。
— 吉川真人🇯🇵深セン (@mako_63) January 12, 2025
日本はタクシードライバーの雇用を守る発想が未来の我々日本人の首を絞めているのかもしれません。 pic.twitter.com/Ferv7lhW8g
訪問前に、自動運転技術をリードするWerideについて紹介した投稿が予想以上に注目を集め、多くの反響をいただきました。ただし、その多くが否定的な意見であったことは、非常に印象的でした。この経験を通じて感じたのは、日本が自動運転分野において他国よりも進展が遅れている理由は、技術力の問題ではなく、日本の政府の規制や、他国の成功を冷ややかな目で見てしまい、自国の成長に結びつけようとしない国民性にも要因があるのではないかということです。
この投稿で得たさまざまな意見を真摯に受け止めながら、今後も日本の課題や可能性を多角的に考えていきたいと思っています。他国の成功や技術から学び、それを自国の成長にどう活かすかという姿勢が、これからの日本にとってますます重要になっていくのではないでしょうか。
JD Logistics「アジア一号」で見た巨大物流施設の全貌
ツアー2日目に訪問したのは、東莞に位置するJD Logisticsの「アジア一号」。これは中国最大級の物流センターのひとつであり、その規模感と効率性において参加者たちに強い印象を与えました。
中国東莞にある京東物流(JD Logistics)アジア1号を訪問して参りました。記憶が新しい内に同社集団や自動化に関するメモをシェア📝
— 吉川真人🇯🇵深セン (@mako_63) January 13, 2025
・13箇所の大型倉庫が巨大な敷地に密集
・中国全土に43カ所のアジア1号を展開、規模不問なら1600カ所
・海外はドイツ、オランダ、ポーランド、韓国、日本に展開 pic.twitter.com/RMHx9ffq9h
完全自動化された物流センター
「アジア一号」は、最新のロボット技術を駆使した完全自動化された物流施設です。施設内では、無数のロボットが走り回り、荷物の仕分け、ピッキング、パッケージングを迅速かつ正確に行っていました。その作業スピードは驚異的で、膨大な数の荷物を短時間で処理する光景は圧巻でした。
日本との比較と学び
参加者たちは、物流の効率性やスピードにおいて日本との差を強く感じる場面もありました。「日本でもこうした施設を導入することで、EC市場の拡大に対応できる可能性が高い」との意見が多く寄せられ、特に物流業界のリーダーたちが刺激を受けた訪問となりました。
知育玩具大手V-Techの製造現場で学ぶ
東莞で訪問したもうひとつの注目企業が、知育玩具大手V-Techです。V-Techは、教育玩具を中心に世界中で事業を展開する企業であり、子どもの成長を支援する製品づくりで知られています。
製造プロセスの視察
工場内では、製品の設計から生産までのプロセスを詳細に視察。特に、スマートデバイスを組み込んだ知育玩具の製造ラインは高度に自動化されており、品質管理にも厳しい基準が設けられていました。このような効率的な製造プロセスや品質管理の徹底ぶりは、日本の製造業にとっても学ぶべき点が多いと感じられる内容でした。
自動駐車ロボットの未来:Shanyi Technology
ツアーの訪問先のひとつ、Shanyi Technologyは、中国でも注目されているスタートアップ企業であり、自動駐車ロボットの分野で大きな進化を遂げています。この企業が開発する自動駐車ロボットは、自動車メーカーの生産ラインに組み込まれるほか、開運の港で船に自動車を効率的に積み込む際にも活用されています。
深センの自動駐車ロボットの新オフィスに日本の物流やディベロッパーの方々を連れて訪問してきました📝
— 吉川真人🇯🇵深セン (@mako_63) January 14, 2025
機体が前後に分かれて前輪後輪を挟んで浮かして移動させる仕組みで最大3トンまで対応可能。
日本市場への導入に積極的なのでマッチングすることを願います。 pic.twitter.com/4EghYO04vm
自動駐車ロボットの用途とメリット
Shanyi Technologyのロボットは、センサーやAIを駆使し、自動車を正確かつ迅速に駐車させることができます。特に、工場や物流施設、港湾といった場所でその真価を発揮します。この技術により、駐車スペースの効率化が図られるだけでなく、人件費や作業時間の削減も可能です。
日本市場への可能性
参加者たちは、Shanyi Technologyの技術が日本の自動車業界や物流業界に与える可能性についても議論しました。特に、狭小スペースが課題となる日本の都市部や、効率化が求められる港湾作業などにおいて、同社の技術が適用できる余地は非常に大きいと感じられました。
美団のドローン配送体験:物流の新たな可能性
深センでは、美団(Meituan)が提供するドローン配送サービスも体験しました。このサービスは、近隣のショッピングモールから食事や飲料などをドローンで配送するもので、中国の都市部で急速に普及しています。
深セン南山区のショッピングモールの海岸城にてドローンデリバリーを飛ばす様子を間近で見てきたのでどうぞご覧ください✨ pic.twitter.com/uMB8kHZXek
— 吉川真人🇯🇵深セン (@mako_63) January 1, 2025
ドローン配送の仕組み
参加者たちは、ショッピングモールからミルクティーや軽食がドローンでわずか15分程度で届く仕組みを体験しました。特筆すべきは、ドローンが建物や人の頭上を飛び交う光景です。これは日本ではまだ考えられないものであり、多くの参加者が「まるで未来にいるような感覚だ」と語っていました。
日本への導入可能性
日本でのドローン配送導入には、規制や安全性の課題があるものの、過疎地や災害時の物資輸送などに応用できる可能性が期待されています。特に即時配送サービスが広がることで、消費者の利便性が大幅に向上する可能性があります。
アリババのOMOスーパー「フーマフレッシュ」
アリババが展開するOMO型スーパーであるフーマフレッシュも訪問しました。この店舗では、オンラインとオフラインをシームレスに統合した新しい小売業の形が体験できます。
アリババのOMOスーパーのフーマフレッシュは日本でも注目を浴びたコロナ前と比べて見た目は変わってないように見えるが、明らかにPB商品ばかりが良い棚の殆どを占めている。特にパン、ケーキ、お菓子、冷凍食品、飲料はほぼPB。彼らはPOSだけでなく、消費者のAlipayの決済データを持っているから何が求… pic.twitter.com/82K69GiHcu
— 吉川真人🇯🇵深セン (@mako_63) November 12, 2024
ユニークなサービス体験
店舗で商品を選ぶだけでなく、オンラインで注文すると30分以内に自宅まで配送されるサービスは、都市部の消費者にとって非常に便利です。また、商品選びの際にはスマートフォンを使ったQRコードスキャンで詳細情報を確認できる仕組みが採用されており、買い物の利便性が大幅に向上しています。
Luckin Coffee:急成長するカフェチェーンの秘密
中国の新興コーヒーチェーンLuckin Coffeeの店舗も視察しました。同社は、スマートフォンアプリを駆使した効率的な店舗運営で、短期間で中国国内で大きなシェアを獲得しています。
データドリブンの運営手法
Luckin Coffeeでは、すべての注文がアプリを通じて行われ、顧客データを徹底的に分析してマーケティングやサービス改善に活用しています。このようなデータ活用の手法は、日本の飲食業界でも今後参考になる要素が多いといえるでしょう。
私の視察ツアーに対する理念と意義:ビジネスマッチングを超えた信頼の構築
中国における視察ツアーについて、私は単なる表面的な訪問や観光的な内容ではなく、双方にメリットをもたらし、具体的な成果につながるビジネスマッチングを実現する場であるべきだと考えています。中国の大手テック企業を訪問し、「中国はすごい」と感想を述べるだけで終わる視察には、私は否定的です。例えば、テンセントやファーウェイのような有名企業を見学し、レポートをまとめて終わる視察は、何の実りもないどころか、むしろ時間の浪費である可能性が高いのです。
さらに、こうした浅薄な視察が続くと、中国企業から「日本企業は見学するだけで、自分たちに何のメリットももたらさない」と評価され、やがて視察そのものを拒否される事態を招きかねません。実際、コロナ以前からアメリカのシリコンバレーでは、日本企業の訪問を受け入れない企業が増えてきています。この流れはすでに中国でも始まりつつあり、私はこうした現状を非常に懸念しています。
視察以上の価値を提供するための私のアプローチ
私は視察ツアーを企画する際、訪問先企業にとっても具体的なメリットがあるように設計することを何よりも重視しています。中国企業とアポイントを取る際には、必ず以下のような点を伝え、双方にとって価値のある関係を築けるよう努めています。
1. 具体的なメリットを提示
例えば、「日本の物流業界の著名な経営者が来訪するため、彼らが執筆する書籍や所属するコミュニティで貴社を紹介できる可能性がある」「日本企業との共同購入によってMOQ(最小発注量)を満たし、大口の発注につなげられる」といった、具体的かつ実現可能なメリットを提案します。
2. 訪問者の背景を明確に提示
単に「訪問したい」と伝えるのではなく、「○○株式会社の△△部長が訪問を希望しており、貴社の技術を日本市場に導入したいと考えています」と、具体的な企業名や役職名を挙げて事前に訪問者の目的や背景を共有します。これにより、訪問先企業は「自分たちにとって意味のある訪問」であると納得したうえで快く受け入れてくれるのです。
3. 私自身の影響力を活用
時には私自身の発信力や影響力を活用し、訪問先企業に価値を提供することもあります。例えば、Shanyi Technologyについては、これまで複数の日本企業を紹介してきたほか、TBSの「THE TIME,」で私がレポーターとして同社を取材し、テレビで放送した実績があります。このように、訪問前に「先に恩を売っておく」ことが、中国ビジネスを進める上で重要なファクターであると考えています。
無意味な視察を拒否する姿勢
私にはこれまで、Huaweiやテンセントの訪問を希望する相談が何度も寄せられました。しかし、私はその際に必ず「御社が訪問することで相手にどのようなメリットがありますか?」と問いかけます。ただ行ってみたいだけ、見学して感想を持つだけの視察であれば、私は協力しません。これは、中国企業に対して礼節を欠く行為であり、双方の関係を損なう原因になるからです。
相手が中国企業であろうと、日本企業であろうと、グローバルにビジネスを行う上では礼節を忘れてはいけません。特に、視察という行為は一方的に利益を求めるものではなく、双方にとって価値ある結果を生み出すものであるべきです。この考え方が私の理念の中核を成しています。たとえどこかにお金を払っていても、です。
ビジネスマッチングと信頼構築の重要性
視察ツアーが成功するためには、相手企業が「訪問を歓迎したい」と思うような仕組みを作る必要があります。それは単なる訪問ではなく、訪問を通じて信頼関係を築き、将来的なビジネスパートナーとしての可能性を感じてもらうことにあります。
例えば、Shanyi Technologyではこれまでに複数の日本企業を紹介し、その企業が同社の技術を取り入れるための協議を進める手助けをしてきました。このような事前の信頼構築があるからこそ、今回の視察でも快く受け入れていただくことができたのです。
また、訪問先企業に対しては、「日本での事業展開をどのように支援できるか」を事前に考え、具体的な提案を行うようにしています。これは、相手企業に「私たちが日本市場で成功するための一助となる存在」と認識してもらうための重要なステップです。
礼節を重んじた持続可能な視察の意義
視察ツアーは単なるイベントではなく、長期的なビジネス関係を築くための重要なプロセスです。私は、日本企業と中国企業の間に双方向の価値を生む仕組みを作り、両者が協力して市場拡大や課題解決を目指すことに意義を感じています。
こうした姿勢は、相手企業にとってもメリットをもたらすだけでなく、日本企業自身が視察から得るものを最大化するための基本となります。このような視察を通じて、日中間のビジネスの新たな可能性を探ると同時に、相互に信頼と尊敬を築いていくことが、私の目指す視察ツアーのあり方です。
視察は訪問で終わるものではなく、そこから始まる長期的なビジネス関係の第一歩であるべきなのです。
今回のツアーで得た成果と新たな可能性
今回の深セン・広州・東莞を巡る2泊3日の物流DX視察ツアーは、単なる企業訪問にとどまらず、参加者それぞれが中国の最新技術や物流の未来を体感し、日本市場への応用可能性を考える非常に有意義な場となりました。
視察を通じて得た具体的な成果
参加者たちは、Werideのロボバスやロボタクシーに実際に乗車し、自動運転技術が日常生活にどのように溶け込んでいるのかを直に感じることができました。また、JD Logisticsの「アジア一号」やShanyi Technologyの自動駐車ロボットに触れ、物流施設の効率化や最先端技術がもたらす経済的なインパクトを理解しました。さらに、美団のドローン配送サービスでは、わずか15分で商品が届く驚異的なスピードと利便性を体験し、日本ではまだ見ぬ未来の物流の姿を目の当たりにしました。
こうした各企業との交流や現場体験は、参加者が自分たちのビジネスにどのように中国の技術やモデルを取り入れられるかを具体的に考えるきっかけとなりました。そして、中国企業側にとっても、日本市場進出の可能性を模索する良い機会となったことは間違いありません。
今後への展望
このツアーを通じて得られた知見や築かれた関係性は、単なる一過性のものではなく、日中間の長期的なビジネスパートナーシップの基盤となるものです。日本企業が中国の技術を取り入れることで競争力を高めるだけでなく、中国企業が日本市場に進出するためのサポートを提供することで、双方にとって新たな価値を生む可能性があります。
これからも、私は「相手企業にとってもメリットがあり、日本企業にも実益がある」視察ツアーを企画し、日中間のビジネス関係をさらに深化させるお手伝いをしていきたいと考えています。
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